以前とは違う二人
日向と別れて初めての週末を迎えた。日向とは最近は会えていなかったとはいえ
彼女がいなくなったという日常は思ったよりも精神的にキツかった
〈会えていない〉と〈いない〉ではこうも開きがあるのかと改めて実感させられたのである。
俺は思わずスマホを手に取りじっと眺めた、唯に連絡を取るかどうかを考えていたのである
しかしここで唯にすがってしまったらまた日向の時の様に
精神的に依存してしまうのではないか?という不安が頭をよぎる
日向に指摘された通り俺は知らない内に唯に惹かれ始めているのだと思う。
その思い当たる理由としてひなたが復縁を口にしかけた時、俺は拒絶した
あれほど好きだった彼女を……これは以前の俺では考えられないことだ
唯と知り合っていなければおそらく日向が復縁を口にした時点で一も二もなく飛びついただろう
このことからもどうやら間違いなさそうだ、だが自分の中で一つ疑問があった。
〈好きだ〉と〈愛している〉では大きく違う。
それに日向を想っていたほど俺は唯が好きなのか?と問われると
そこまでではないような気がするのだ。
ならばなぜ日向が復縁を匂わせた時、それに乗らなかったのか……
男としてのプライドか?それとも唯に悪いとおもったからか?正直よくわからない
〈わからない事をアレコレ考えても仕方がない、前向きに進めば何とかなるさ〉
というのが以前の俺の考えだったが今ではそんな恐ろしい事はもうできない
今思えばつくづく〈若かったのだな〉と思う。
〈そんな中途半端な気持ちで唯と向き合っていいのだろうか?〉という気持ちと
〈今どうしようもなく寂しい〉という気持ちが心の中で葛藤となって駆け巡る、
せっかくの休みだというのに最悪の気分、考えた末に結局俺のとった選択は
〈唯に連絡を取る〉というものだった、つくづく自分の弱さを実感し自己嫌悪に陥るが
それすらも自己陶酔ではないのだろうか?と自問自答してしまう、何だ?この嫌な無限ループは……
唯に送ったメールは簡潔な文章で〈いつでもいいので連絡ください〉
というものだった、すると五分もしないうちにスマホの着信音がなる
相変わらず早い反応だ、ちょっと嬉しさを感じながらも冷静を装い電話に出た。
「もしもし、唯、今大丈夫だったか?」
〈うん、特に何もしていなかったから。どうしたの、駿介?〉
「いや、今回唯には色々お世話になったじゃないか、だからお礼をしたいなと思ってさ」
〈本当?何かご馳走してくれるの?〉
「ああ、もちろん、何でもおごるよ。ただ……」
〈予算は十万円以内でしょ?わかっているわよ、そんな高い所はねだらないわ〉
「いや、それもあるが、前みたいにラーメン屋とかはやめよう」
〈どうして?安いし美味しいし、駿介もラーメン好きでしょ?〉
「確かにラーメンは好きだけれど、俺は営業回りで一人でラーメン食べることも多いから
今回はほら、ちゃんとしたお礼だからもっとそれっぽい所に行きたいのだよ」
〈ふ〜ん、わかったわ、でもどういう心境の変化かしら?〉
「どういうことだよ?」
〈だって、私が最初に駿介にお礼をしたいって言った時は【スタボ】だったじゃない〉
「あれは、その、何だ……あの時と今では違うだろ、その、色々と……」
〈そうね、違うね……じゃあ駿介が決めてよ〉
「俺が?俺が選んでいいのか?」
〈もちろんよ、駿介の〈男らし〜い〉エスコートを期待しているわ〉
この言い回し……おそらくこの前、俺が唯の前でボロボロ泣いて
〈男としてカッコ悪い〉と言ったことに対しての皮肉で言っているのだろう
あれからそんなに時間が経っていないというのに、そこをネタにイジってくるとか、コイツは本当に……
「お前、わざと言っているだろう?」
〈はてさて、当方にはお客様が何をおっしゃっているのか、皆目見当がつきませぬが?〉
このあからさまにふざけた感じ、くそっ、完全に面白がってやがる。
「やっぱり止めた、唯にお礼とか、俺が間違っていた‼︎」
〈あっ、ごめん、ごめん、謝るから許してよ、じゃあどこでもいいから連れて行って‼︎〉
最初からそういえば可愛いのに、コイツだけは本当に……
「ああ、任せておけ、痴漢変態男のエスコート、とくとご覧あれ」
〈何か、急に行きたくなくなってきた……もう少しマシな言い方はなかったの?〉
「いいじゃないか、元々これは唯に付けられた称号だぞ
大体唯をデートに誘うのにカッコつけてもしょうがないだろう?」
〈デート?デートなんだ、ヘヘっ……〉
「何だよ、薄気味悪い笑いだな」
〈何よ、うら若き乙女に向かって〈薄気味悪い〉とか、せめて〈可憐な微笑〉と言って欲しいわ
そもそも気持ち悪さと、男らしさでは駿介には負けるわよ〉
「切るぞ」
〈あっ、ごめん、ごめん、じゃあいつ連れていってくれるの?〉
「別にいつでもいいぞ、できれば週末がいいが」
〈じゃあ明日はどう?〉
「いきなり明日か⁉︎」
〈ダメ?〉
「いや、ダメじゃないけれど……」
〈じゃあ決まりね。明日、いつもの駅で〉
「ああ、待ち合わせの時間は【十 一 時 な‼︎】く・れ・ぐ・れ・も、遅れるなよ」
〈それは(遅れて来いよ)という〈フリ〉ととっていいのかしら?〉
「フリとかじゃないわ‼あまり遅くなるようなら帰るからな」
〈わかった、わかった、肝に銘じておきます
じゃあ明日、楽しみにしているわ、ありがとう、駿介〉
「何で、唯がお礼を言うのだよ」
〈何となく……ね、じゃあ、明日……〉
「ああ」
こうして俺は電話を切った、唯との会話はなぜか心地いい
日向とは全く違うが、このくだらない会話のキャッチボールが何か楽しい
これも癒しの一種なのだろうか?
癒しとか、俺はまた……いや、そんなことを考えるのはよそう
嫌な不安を頭の中から振り払い、パソコンを開いて明日唯と行く店を探す俺であった。
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