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王の一声

佐山グループ総帥の突然の来訪により周りは一気に緊張感が高まり、先ほどとは雰囲気が一変した


佐山会長は先ほどまでの温和な表情が消え去り、猪端常務をジロリと睨みつける。


「君が猪端くんかね、噂は聞いておるよ」


「はい、光栄であります」


「本当に色々聞いておるよ、いい噂も、悪い噂も……」


「きょ、恐縮です……」


汗をダラダラと流しながら会長の顔をまともに顔も見られない猪端常務


佐山商事の常務取締役ですら佐山会長とは直接面識が無いとは、どれだけ偉い人なのだ?


普段あれほど尊大で自信家の猪端常務が小さくなっていて完全に小物扱いである。


「だがワシは、仕事ができる奴は性格だとか人格だとかは


どうでもいいと思っておる、会社に利益をもたらす人間がいい人間じゃ


そう言う意味ではお主は中々のやり手のようだしな?」


「恐縮です」


「だから、ワシは自分のことを裏で悪く言っている奴ですら徴用してきた


もちろん仕事ができる奴なら、という条件はつくけれどな」


淡々と話す佐山会長はまるで謎解きをしている探偵のようだった


しかし急に口調と雰囲気が変わり、再びジロリと猪端常務を睨みつけたのである。


「じゃが唯のことだけは話が別じゃ、もしわしの孫に不快な気分を合わせた奴がいるのであれば


其奴は容赦なく処分する、例え大人気ないと言われようが公私混同と言われようが関係ない


必ずやると言ったらやる、ワシにはそれだけの力はあると思っておるからの、どうじゃ猪端くん?」


「おっしゃる通りにございます」


その流れで佐山会長は日向に視線を移したのである。


「さて、何があったのか、〈部外者〉のワシに話してくれるよな、お嬢さん」


口調は柔らかいものの、その目には完全に敵意がこもっていた


日向は知らずとはいえ【佐山グループ】の会長とその孫娘に喧嘩を売っていたのである


蛇ににらまれたカエルの如くガタガタと震え、今にもへたり込みそうな日向


しかし佐山会長の視線は鋭いまま〈逃さないぞ〉と


いわんばかりに日向をロックオンしていたのだ、だがその瞬間。


「いい加減にしてよ‼︎」


重たい空気を切り裂くように叫んだのはまたもや唯であった


両手を腰に当て睨みつけるように自分の祖父を見つめていた。


「いい加減にしておじいちゃん、だから外で待っていてと言ったじゃない‼︎」


「じゃが、唯、お前はいつもワシに何も話さないではないか?」


「おじいちゃんがこういうことをするからじゃない‼︎


孫の喧嘩に祖父が出てくるとか、立場のある人間として恥ずかしくないの⁉︎」


「ワシは唯のためを思ってだな……」


「それが余計だって言っているの、もう帰ってよ‼︎」


あの伝説の経営者、【佐山グループ】の独裁者とまで呼ばれた佐山会長が


唯の前ではただの孫に甘いおじいちゃんに見えた


唯に背中を押され部屋から出ていくように促される佐山会長


この老人にこんなことができるのはおそらく世界でも唯だけだろう。


俺はその時、先程唯が言っていた〈私、佐山グループには顔が利くの〉という意味をようやく理解した。


皆が呆然とその光景を眺めている時、佐山会長が不意に俺の方へと視線を移し


ニコリと微笑みかけてきたのである。


「君が野崎駿介くんか、唯から話は聞いておるよ」


いきなり【佐山グループ】の会長から声をかけられ、俺も思わず直立してしまう。


「あっ、はい、お孫さんとは仲良くさせてもらっています‼︎」


佐山会長は嬉しそうにウンウンと何度も頷き、再び口を開いた。


「ワシが仕事でインドに行っていた時、ワシの代わりに唯の合格祝いをしてくれたそうではないか


あの時は急な悪天候で飛行機が飛ばなくて、どうしても帰る事ができなかったのじゃ


本当にありがとう、感謝しておるよ」


「いえ、そんな、私などは……」


「それに唯の所属事務所との契約の件でも色々と世話になったそうではないか


重ね重ね感謝する、唯はワシには何も言わないからのう


後で聞かされてびっくりしたモノじゃ、後から〈駿介が、駿介が……〉


といやと言うほど聞かされたわい」


嬉しそうにそう語る佐山会長、すると唯が顔を真っ赤にして話に割り込んできた。


「ちょ、ちょっとおじいちゃん、何言っているのよ‼︎」


「何って、本当のことだろうが?」


「私そんなに何度も言っていないわよ、もう、やめてよ‼︎」


「そんなに照れなくても良いではないか」


「もういいから、早く帰ってよ‼︎」


そんな唯の言葉を右手を差し出して一旦止めた佐山会長


そして再び猪端常務を睨みつけ、冷淡な口調で言い放った。


「猪端くん、そこのお嬢さんが言う通りワシは今回の件では部外者じゃ


だから何かを言う権利もないし、その立場でもない


だからあくまで【一個人】としての意見じゃが、今回のコンペ、公平で適切な判断を頼むぞ」


「はい、もちろんでございます」


「そういえば来年、パプアニューギニアに佐山商事の出張所を作ろうと思っているのじゃが


そこの所長を誰にしようか?と思っていたところじゃ。現地の人々は皆はいい人達らしいし


空気もうまいとのこと、どうかね君?」


「は、はあ……」


大量の汗をダラダラと流し、見ている方が哀れなほど動揺している猪端常務


「じゃあ〈部外者〉はこれで失礼するとしようかの」


凄まじい圧力を残して唯と共に部屋を出て行った佐山会長


しかしこれで【企業コンペ】の結果は決まった、まさに【鶴の一声】というわけである


こうして長くて濃密だった運命の【企業コンペ】は意外な形で幕を閉じたのである。


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