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紳士と淑女の夜

高級フランス料理店の雰囲気にも少しづつ慣れてきて、腹も気持ちも落ち着き始めた頃


俺はなんとなく聞いてみた。


「そういえば唯、こういう店によく来るのか?何か慣れてそうだし」


「うん、まあ……」

 

「ふ~ん、仕事とかで来るとか?」

 

「まあ、そんな感じかな」

 

なんだか歯切れの悪い答えだが、追及する事でもないので深くは聞かないでおこう。

 

「でも駿介には本当に感謝しているのよ、これは嘘じゃないわ」

 

「じゃあどれが嘘だったのでしょうね?色々騙されたので


当方としてはお客様を信頼しかねている次第にございまして」

 

「悪かったわよ、ちょっとしたかわいい悪戯心じゃない、それぐらい寛大な心で許してよ」

 

何かとすぐにブチ切れるお前がどの口で寛大とか言うのだ⁉︎と、ツッコみたかったが


ここで本当にプチ切れられても厄介なのでここはグッと堪える俺だった。

 

「でも、本当にありがとう、駿介」


唯は珍しくしおらしい態度で深く頭を下げた。

 

「別にいいよ、俺も貴重な体験が出来たし。それにそのおかげ……


という訳でもないけれど、今度大きな仕事を任される事になってさ」

 

「へえ~そうなの?」

 

「ああ、今度うちの会社で大きな【企業コンペ】があるのだけれど


俺が会社の代表としてプレゼンする事になったのだよ


会社の命運をかけた一大プロジェクトと言ってもいい仕事の一環を任されたのだ」

 

「へえ〜、それって凄い事なの?」

 

「まあな、普通こういう大きな仕事はもっとキャリアを積んだ人がやるモノだ


まだ入社三年目の俺がやるなんて異例の事なんだぜ」

 

「凄いじゃない、でもどうして駿介がやる事になったの?」

 

「そこは俺が名乗り出たのだよ〈どうしても俺にやらせてくれ‼〉ってな」

 

「やるじゃない、でもそういうのって立候補したらやらせてくれるものなの?」

 

「いや、もちろん上も渋ったさ、だけど〈もし俺にやらせてくれればかなりのメリットがある‼〉と猛アピールしたからな」

 

「やるわね、そういえばこの前の社長相手にも一歩も引かずに頑張ったものね」

 

「ああ、やる時はやる男だぜ、俺は……と言いたいところだが


実はそこまでやる気になったのは唯。お前のおかげでもある」

 

「私の?どういう事?」

 

「唯が頑張っているのに、俺も負けていられないっていうか


偉そうな御託ばかり並べても結局何もできない口だけ番長は嫌だしな


そう思ったら自然と名乗り出ていた」

 

「私のおかげか……悪くないわね、じゃあ私も応援するわ、頑張って駿介‼」

 

「ああ、任せろ、必ず【企業コンペ】に勝って見せるぜ‼」


俺はこれ見よがしに右腕の力こぶを見せつける、そんな俺の姿を嬉しそうに見ている唯


まだ何かを成し遂げた訳でもないのに何だかわからないが気分が良かった。

 

「ちなみに猛アピールしたという駿介がやるメリットってどういうモノなの?」

 

「まずは若さだな、一応相手先の担当でもある俺は顔も知られているし


俺がしっかりとしたプレゼンをすれば相手先としても


〈ウチの担当には有望な若者を付けてくれているのだな〉


と向こうに信頼を植え付けられる、そして若い人間がはつらつとプレゼンすれば


ウチの会社のイメージが良くなるのではないか?と訴えたのだよ‼」

 

「やるじゃない、そういう所は抜け目ないわね」

 

「おう、もっと褒めていいぞ、遠慮するな


そして最後に俺にしかできない爆弾級の最大のメリットを提示したのだよ‼」

 

「なに?まだあるの?何よ、教えて⁉」


最初は何となく聞いていた唯だったが段々と俺の話に興味がでてきたのか


目を輝かせて食い気味に聞いて来た。よし、ここはビシッと決めてやるか‼︎

 

「ふっふっふ、これは俺だけに可能な必殺技だ、聞いて驚け


なんと相手先である【佐山商事】の決定権を持っている猪端常務は


俺の彼女のお父さんだ‼」

 

「はあ?」

 

急にテンションが下がり呆れ顔で俺を見つめる唯。

 

「何だ、その顔は?」

 

「最後の何よ……彼女のコネを使って仕事を取ろうって事?最低……」

 

「馬鹿、使えるモノは何でも使う、それがビジネスだ


しかも彼女は今回、司会進行役のアシスタントみたいなことをやるみたいだし


ここで俺がカッコいい所を見せれば相手のお父さんも


〈素晴らしい、娘の相手は君しかいない‼〉となるじゃないか⁉


これは正にウインウインと言えるだろ、これ以上最高でハッピーな展開があるか?」

 

「ハア、もういいわ、一瞬でも駿介を見直した私が馬鹿だったわ……」


ため息をつきながらガッカリ感満載で首を振る唯

 

「馬鹿言え、じゃなければ入社三年目の俺にこんな


ビックビジネスのチャンスが来るわけがないだろ‼」


「胸を張って言う事?言えばいう程……って感じ」


「どうとでも言え、相手はあの【佐山商事】だぞ、吸収合併した会社も含めると


何十億という規模のお金が動くのだ⁉


もしこれがきっかけで【佐山グループ】の全管理を任せられたりしたら


数百億とういうお金が動くのだ、どういう手段を使ってもモノにしたいのは当然だ」


「そうか、【佐山商事】って【佐山グループ】なんだ……」


「おお、さすがに唯も知っているのか?」


「うん、お仕事で【佐山グループ】の関連企業の


【佐山製鉄】と【佐山薬品】の企業イメージのポスターをやらせてもらったから」


「なるほどね、そういえば見た事ある。あのポスター唯だったのか⁉


今気が付いた、世間は狭いな」


「それで、その【企業コンペ】はいつなの?」


「来月の第三月曜日だ」


「もうすぐなのね、間に合うの?」


「ああ、管理システムのソフト自体はもう大分前に制作し始めているからな、何とか間に合いそうだよ」


「ふ~ん、何か応援する気が失せたけれど、まあ精々頑張って」


「何だ、その投げやりな応援は⁉もっと心を込めた応援をしろ‼︎


今日は俺への感謝も込めた食事だろ?」


「その分を含めて、感謝の気持ちが吹き飛んだわよ


仕事で美人局つつもたせみたいな真似をして恥ずかしくないの?」


美人局つつもたせなんて言葉、よく知っていたな……じゃなくて‼


言っていい事と悪いことがあるだろう⁉誰が美人局つつもたせで仕事をするヒモだ‼」


「もういいわよ、デレデレしてみっともない」


「俺がいつデレデレした?お前、焼きもちでも焼いているのか?」


「ば、馬鹿じゃないの、そんな訳無いじゃない、うぬぼれないでよ、【痴漢変態男】のくせに‼」


「また【痴漢変態男】って言いやがったな⁉昨日の謝罪は何だったのだ⁉」


「いつも偉そうな事ばかり言っている癖に


やっている事はホストかジゴロと変わらないじゃないの⁉


どうせ得意先の【佐山商事】でも〈いつもご指名ありがとうございまーす〉


とか言っているのでしょう?」


「何だ、それは、お前は俺を何だと思っているのだよ⁉」


「もう忘れたのかしら?貴方の事は【痴漢変態男】と思っているわ」


「ちょ、おま、いい加減にしろよ‼」


「デレデレと鼻の下伸ばしちゃって、みっともない」


「お前、俺がいつ鼻の下を……」


こうして、シックでエレガントな高級店の中


厳かな雰囲気の紳士と淑女の高貴な会話はどこまでも続き、静かに夜はふけていった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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