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罵倒と感謝の境界線

こうして俺は何とか交渉を終えホッと一息ついた


結構な重責だったと思うが自分なりに満足いくものだったと思いたい。


事務所を出て唯と共に駅へと向かう途中、唯が恥ずかしそうに語り掛けてきた。


「ね、ねえ、駿介……今日はありがとう……」


「えっ?ああ、あんなので良かったか?」


「うん、嬉しかったよ。それに……


駿介が私の事をそんな風に思っていてくれたなんて、少し意外だったわ……」


なぜかモジモジしながら頬を赤らめている唯


「へっ?俺が何を言った?」


「ほら、その……私が【世界を代表する大女優】になれるとか、何とか……」


「ああ、アレか、あんなの嘘に決まっているだろ?単なるハッタリだよ」


「はあ?何よ、それ⁉」


「当り前だろう、交渉事では時にハッタリも必要だ


向こうの社長が随分と唯の事を買っていたからそれに乗っかっただけの事


そもそも俺個人の感想だと唯みたいにすぐに感情が態度と顔に出る単純人間は


女優どころか学芸会でも【村人A】が関の山だと思っているよ」


「誰が【村人A】よ‼いくらなんでも酷くない⁉」


「仕方がないだろ、こっちはド素人なのだから唯に女優の才能があるか?


なんてわかるわけないだろう。


そもそも俺の考えがどうとかより、あの女社長が唯にそれほどの才能を見出しているというのが重要で


俺は関係ないだろ、まあ俺個人の感想で言えば


今回に限ってはあの敏腕社長が【見誤った】と思っているけれどな」


「何よ、それ……ちょっとは感謝していたのに、少しだけだけれど嬉しかったのに‼」


「おいおい、自分で言いうのもなんだが、今回の俺は結構頑張ったと思うぞ⁉


それがちょっとだけの感謝と少しだけの幸福とか


お前の言っている事の方が酷くないか?」


「うるさいわね、どうせ駿介にしてみれば私が泥んこ色物タレントになろうが


ヌードになろうがどうでもいいと思っているのでしょ⁉」


「何を怒っているのだよ?それはあくまで例えであって


あの社長さんが唯にそんな扱いをするわけないだろう?」


すると唯は視線をそらしながら小さな声で問いかけてきた


「いいの?」


「は?何が、だよ?」


「私がその……ヌードとかになっても、駿介は平気なの?」


「どうして俺が関係するのだよ?お前のヌードが見たいか見たくないか?って、事か?」


「もういいわよ、馬鹿‼︎この痴漢変態男‼」


唯は怒ってどこかへ行ってしまった、何なのだよ、もう……


こうして俺の契約交渉は何とか無事に終えた、俺としてはそれなりの成果を上げたと自負していたが


依頼主には【痴漢変態男】という感謝の言葉をいただいて、この茶番のような劇は終幕を迎えた……


ここで俺は女社長に一言言いたい〈やっぱり唯に女優は向いていないと思う〉と。



そして翌日の夜、唯からメールが来た、その内容は。


〈昨日は有難う、お礼がしたいので時間が空いたら電話ください〉というモノだった。


何だよコレ?昨日は感謝どころか罵声をもらった気がしたが……


美少女に【痴漢変態男】と罵られるのはある意味ご褒美なのだろうか?


俺にはそういう趣味は無いので、普通に〈ありがとう〉


という言葉が欲しかったのだが、女はよくわからん……


とはいっても俺の彼女はこんなワガママで感情的じゃないし


同じ女としてカテゴライズしてしまうのは日向に悪いな


そんな事を想いながらスマホを手に取る。


「ったく、しょうがないな……」


俺はため息交じりに唯に電話をかけると、唯がワンコールで電話に出たので少しこちらが驚いてしまった。


〈もしもし、駿介?〉


「いえ、私は【痴漢変態男】という名前でして、野崎駿介ではありませんが、何か?」


〈ごめんなさい……〉


「もういいよ、で、用件は?」


〈その、昨日のお礼がしたくて……これでも本当に感謝しているのよ〉


「ふ~ん、昨日あなたからいただいた言葉は本当に感謝している人間から


いただいたモノとは思えませんでしたが?」


〈しつこいわね、いい加減、ちゃんと謝っているじゃないのよ‼〉


「それがちゃんと謝っている人間の態度か?文句が言いたいだけなら切るぞ」


〈ちょっと待ちなさいよ、駿介は本当に性格悪いわね


感謝のしるしにお礼がしたいって言っているのじゃないのよ‼〉


語気を荒げて感謝とか謝罪とか言われても、コイツは本当に……


まあこれぐらいで勘弁してやるか。


「別にお礼とかいいよ、唯もこれから忙しくなるだろうに」


〈一応駿介には感謝しているし、人としてお返しをするのは当然じゃない


あくまで人としてよ、わかった?〉


それは何の確認だよ……


「ああ、わかったよ」

 

〈じゃあ、駿介が行きたい所とかある?……ってアンタに聞くとまた【スタボ】になってしまうわね


じゃあ私が何かいいお店でごちそうするわ、今度の週末空いている?〉


「まあ、今のところ空いてはいるけれど……」


〈何?その(いつもは空いていないのだけれど今回はたまたま空いていました)


みたいなこざかしい見栄の張り方は?〉


「切るぞ」


〈ああっ、ゴメン、つい思った事を口にしちゃった、謝るわ〉

 

謝って無いだろ、それ?コイツには一度【謝罪】という言葉を検索させた方がいいかもな。


「お礼とか、本当にたいしたものじゃなくていいぞ


土曜はもしかしたら仕事が入る加能性があるから、どちらかといえば日曜がいいな」


〈OK、今度の日曜日ね、じゃあ、いつもの駅で10時に〉


「ああ、わかったよ」

 

〈じゃあね、おやすみ〉


「ああ、おやすみ」

 

俺は電話を切った後、軽くため息をつく。


「いつもの駅って……もうすっかり〈二人の思いでの場所〉扱いだな


アイツわかっているのか?あの場所は俺がお前に痴漢扱いされた所なのだぞ⁉」


自分で言っていても、もう今更という感じではあるのだが……



頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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