ククル1-6
懐かしい夢を見た。
ララさん元気にしてるかな。
ていうか続き見たいな。もう少しだけ寝ようかな。どうしようかな。
う~んと唸っていると前方から怒号が飛んできた。
「ククルさん!起きなさい!授業中ですよ!」
ううっ、その授業が嫌なんだって。
だが、これ以上怒られるわけにはいかない。
昨日だって、帰ってそうそう母さんに怒られたばかりだ。
「あんた、学校サボってどこ行ってたの!」
うう、よみがえる嫌な記憶。
クスクスと周辺で笑い声も聞こえる。
最悪だ。ナーバスだ。
「すみません」
むくりと起き上がる。
周囲の視線は自分に集まっていた。
ハァ~と小さくため息をつく。
肩肘ついて窓から外を眺める。
今日も歴史の授業だ。
「では、授業を続けます」
4月だっていうのに、教室は蒸し暑くなっていた。
それなのに小鳥は春を告げるように鳴く。
そういえば、サラは大丈夫だろうか。
一応、コリウスを向かわせたから大丈夫だとは思うが心配だ。
ため息は止まらない。
一刻も早く帰って錬金術をやりたい。
こんな授業、本当に必要なのか。
毎日似たような内容を繰り返し、その理解度を推し量るテストをする。
それが将来役に立つ。そう言われても私には理解できない。
だって、私には錬金術が。それが私の将来に必要なのだ。
学校では教わらない廃れた技。
それが私の必要なもの。
なのに、なのに授業。ハァ、めんどくさい。
それを察したのか否か、先生は私を睨みつけていた。
「ククルさん?話、聞いていましたか?」
もちろん聞いてない。
「はい、聞いてました」
もちろん嘘だ。
「では、500年前に起こった戦争の名前、言えますか?」
「えっと…」
確か記憶では500年前に魔物が初めて現れた。
魔物は異界と通じている“ゲート”と呼ばれる門からなだれ込んできて、様々な人間を殺戮していった。
そこからは人間と魔物の戦争だ。
魔物の拡大を防ぐ戦争。
人類の存亡をかけた戦争。
当時は世界人口の3割を失ったらしい。
逆に3割で抑えられたともいえる。
それを決定づけた戦争。
その名前が思い出せなかった。
「第一次ゲヌス防衛戦です、ククルさん」
「それだ!そのダサい名前!」
第一次でゲート周辺を確保して、第二次でゲートを完全に閉じることに成功した戦争。
そして第三次と続くが、結局残党狩りで終わる戦争。
「ククルさん、あなたという人は…」
またクスクスと笑いが起こる。
それに恥ずかしくなって、そっと席に座った。
ハァ、本当に今日は憂鬱だ。
また肩肘をつく。
今度は黒板を見る。
せめて、真面目に受けるフリはしようと決めたのだった。