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錬金術士ククルと妖精の国  作者: ラーメンカレーセット
始まり
10/121

ククル0-1

 それは、ちょっと勇気を出して、森へと出かけた時の出来事だった。

 ガサゴソと草が擦れる音がしたため、背後を見た時、目に入ったその光景に絶句した。

 魔物がいた。

 と言ってもさほど脅威のある魔物ではない。

 小さな液状の魔物、いわゆるスライムだった。

 だが、幼い自分には十分脅威だった。

「あ、」

 人は本当の危機に陥った時、悲鳴すら出ないと痛感した。

 足が震え、まるで自分は石像になってしまったかのように動かなかった。

 死ぬ。そう直感した。

 絶望し、何もかも諦めた。

 死を待つために、死ぬ瞬間を目撃しないために、私は目を瞑った。

 だが、その死は訪れることはなかった。

 代わりに大きな爆発音が聞こえた。

 ゆっくりと目を開ける。

 目の前に立っていたのは、それまでいた凶悪なスライムではなかった。

 爆風になびく長く美しい黒髪を持った女性だった。


「あっつ!あつ!いや火薬の量間違えた!」

 途端にジタバタとし始めた。

 その女性は颯爽と駆けつけ、カッコよく助けてくれたのだと思っていたが、途端にマヌケに見えた。

「あっつ、あっつ!あ!!!君、大丈夫だった!?」

 振り向いた女性は私に手を差し伸ばした。

 顔と白いブラウス、そして赤いネクタイは爆弾で煤汚れていたが、それでもわかる美しさがあった。

 私は差し伸ばされた手を握って起き上がった。

「だい、じょうぶです」

「良かった」

 煤汚れた顔でにっこりと笑った。

「私はララ。こっちはペットのアリー」

 彼女の長い黒髪からかき分けて肩に乗ったのは、小さなトカゲだった。

「よろしくね、えっと…」

「ククル、ククルっていいます」

「よろしくね、ククル」

 懐かしい私の恩師との出会い。そして、錬金術の出会いだった。



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