(3) へらへらしてる時の犬は笑顔に見える
3話です_φ( ̄ー ̄ )
慌ただしい1日だった…
まさか橘花さんと話せる日が来るとはな…
マンションのロックを外してエレベーターに乗り込む。
明日かー…どこでやるんだろ?
迎えにくるって言ってたからウチではないだろうし
橘花さんち?知らないし流石にな…
となると長居しても大丈夫な所か…
と自宅のある8階に到着した。
まだメロンパンがあったかいから帰ってればいいな、
と家の鍵を開けると…
「お帰りなさいっ!遅かったねっ!」
と妹が玄関に待ち構えていた。
「なんか甘い匂いがする…」
すんすんと上を向きながらすり寄ってきた。
「今日は新刊もなかったからお土産に
メロンパン買ってきたぞ」
と渡そうとするが受け取らず、
「あと動物の匂いと…」
「ああ、メロンパン買った途端にワンコにからま…」
「あと女の匂いが…」
ふんふんと下を向いて腕の辺りを嗅ぎ出した。
「が、学校だしすれ違う時にぶつかったのかなー?」
「そうだよねー、お兄ちゃんに限ってないよねー」
なんか笑顔が怖いぞ、妹よ…
「ほら、あったかいうちに食べないとカリカリ感が
どんどん下がっていくぞ?」
「分かったー珍しくお土産なんか買ってきたから何かあったかと思ったよ」
「あははは…(何か有ったのはその後だけどな)」
妹を先頭にしてリビングの方に歩いていく
後ろで汗が止まらなかった…
10階建ての8階に住んでる俺たちは両親共に仕事でなかなか帰ってこない
というか好きなことを仕事にしたようなので趣味と実益を兼ねすぎて
ある意味困ってるようだ。
高校生くらいになると進路のことを考えるとそんな両親が羨ましくなる…
が今は気ままな自堕落生活を送れる状況を楽しんでいる。
小学生の頃は帰ってこない事で学校の行事にも来てもらえず
妹と2人で寂しいと思ったこともあった。
だからなのか妹は物心ついてから俺から離れなくなった。
兄としては兄離れができるのか心配になる…
というか離れて欲しいと願う。うん。
ご飯も食べて自室のベッドでゴロゴロし
明日の事を考えながら眠りについた…
。。。。。
。。。。。。。。。
。。。。。。。。。。。。。。。わん
ん?わん?
夢現のまま明け方に犬の鳴き声で起こされた。
……どこのワンコだ?
結構近くに感じたけど……
「わんっ!」トントン…
…ベランダ?
「えっ!うちのベランダっ!?」
ガバッと布団を跳ね除けて飛び起きた!
うち8階だぞっ!と慌ててカーテンを開けると
そこには帰り道でまとわり付かれた白いワンコが座っていた。
しかもぼんやり銀色に光りながら……
ああ…まだ夢の中なんだな…と窓を開けて
ワンコに触ろうとベランダに出ようと踏み出した
……途端に足が地面につかなかった
「えっ!」
階段を踏み外したような浮遊感に
ああ、夢でよくあるビクってなって起きるやつだ
と余裕があったけど浮遊感が長い…
というか暗闇にずっと落ちていってないか?
あれっ?えっ?!
もしかしてベランダから落ちた俺?
マジでっ!……っていつ地面着くの?
振り返ったらワンコも一緒に落ちてたけど、
落ちる直前に見た座った姿勢のままだった……
なんでその姿勢のまま?
へらへらしてるし?慣れてるの?夢なのに?夢?
と足元にぼんやり光が見えてきた。
一瞬エレベーターが止まるような感覚がして
早く近づいてきた光がゆっくりになった気がした
と地面に着いた感触があった。
布?柔らかいな…高そうな絨毯かな?
と気づくと大広間の赤いカーペットの
真ん中に座っていた。
いつの間に明るく……
目の前の高くなっている段の上に
黒く大きな玉座があった。
『よくぞ召喚に応じてくれた…』
玉座の上に中身の無い黒い魔術師のローブが
2階建てくらいの高さに浮かんでいた。
いや、中身が無い訳ではなく黒いモヤのような
モノが入っておりフードには2つ赤い光が覗いていた。
(召喚というかただ暗闇に落とされただけなんだけど…)
『同胞を危機から助け出してくれた事に感謝する…』
その黒いローブの何かは高いけど無理矢理低めに
話してる様な声をしていた。
あと…これローブが話してるの?
なんか違うとこから聞こえる様な…
『貴殿に頼みがある…』
そのローブはゆっくり玉座に下がってきた…