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第95話 予想外の展開

「嘘!ほんと!?」


私は朝早く、皐月ちゃんからの電話で起こされて、電話の内容を聞いてそう漏らしていた。


その内容は、今日あの中学生の頃に仲良くしてた子が会いたいと言ってくれているらしい。

前から会いたかったから、寝起きだったとしても私は凄くテンションが上がってしまった。


結局、雫ちゃんにはまだ誤解させちゃってるままだけど、お母さんと鈴音先輩が変なことを毎日言ってくるから、余計に顔が見れなくなってるんだよね…。


その状況で、こんな一大イベントが起こるなんて!

こう言ったらあれだけど、その子に会えたら、雫ちゃんにもなんだか謝れるような気さえする。


ずっとどうしてるか心配だったんだよね!

しかも、こんなに早く会いたいって言ってくれるなんて!


「で、今日の朝、私ら早めに学校に行くからさ。前に話した非常階段のところで待っててくれないか?」


「あ〜だからこんなに朝早くに電話して来たんだね?」


「そうそう。ごめんな〜?早い方がいいと思ってな〜」


「分かった!じゃあ私もなるべき早く行くね!」


そう言って電話を切った私は、早めに学校に行く用意を済ませて、ダッシュで学校に向かった。

急いでたせいで携帯を忘れて、それに気付いたのが学校に着く直前だったって言うのは…笑うしかないんだけども。


私がいつも学校に着く1時間ちょっと前に着いたのに、校門はちゃんと開いていて少しだけ安心する。


携帯忘れちゃったから、皐月ちゃんたちとの連絡がつかないんだけどさ…。非常階段で待ってたらいつか来るだろうし…。


だけど、私が教室に上がった時、これから非常階段で待ってるイベントと同じか、それ以上に驚くことが起きていた。


そこにいたのは、キスをしてる女の子2人だった。

教室の奥の方にある窓から刺している朝日で顔までは分かんないけど…なんでこんな朝早くから鈴音先輩と春奈先輩みたいなことしてるの!?


しかも、この教室一年生のだよね!?

え?なんで?

そんな人このクラスにいたっけ!?


「!だれ?」


「ふぇ!?」


あれだよ。部室で先輩達がイチャついてる現場に、偶然居合わせたみたいな感じなんですけど今…。


動揺しすぎて廊下でカバンを落としちゃったせいで、相手に気付かれてしまった…。

観念して教室の中に入ると、1人は見覚えがあったけど、もう1人は全然知らない人だった。


「…。あの、ごめんなさい。別に覗くつもりじゃなくて…」


「誰?あやは知ってる?」


「え…えっと…クラスメイトの紅葉さん…です」


1人はクラスメイトで、文化祭当日に皐月ちゃんと一緒にお店でクレープを作ることになってる霧島さんだった。


そしてもう1人は、霧島さんと同じで黒髪のポニーテールで、女の子にしてはかなり身長が高い人だった。

多分、先輩だと思うけど…。3年生かな?今2年生の先輩は皆修学旅行中だし…。


「ねぇ君。今見たこと、秘密にしてくれる?」


「え!?いや…私は別に…」


「してくれるよね?」


私がこの人について色々考えてる時、いきなり微笑みながらそんなことを言われた。

だけど、目だけが笑ってなくて今にも泣いてしまいそうになる…。


唯一助けてくれそうな霧島さんは、先輩?の後ろに隠れて震えてるし…。

人見知りの子供が、お母さんの後ろに隠れるみたいなやつね。

私も小さい頃よくやった記憶が…じゃなくて!


「私はあんまり気が長い方じゃないんだ〜。秘密にしてくれるならなにもしないから!」


「え!?秘密にしなかったらなにかされるんですか!?」


「ん〜。それはその時のお楽しみな。で?秘密にしてくれる?」


「はい!絶対誰にも言いません!」


私はただひたすらに怖くて、足を震わせながら必死で頭を下げた。

この際、なんで2人があんなことをしていたのかはもう忘れよう!そう思って…。


絶対深く聞いたらいけないやつだしこれ…。


「ん。聞き分けの良い子は好きだぞ。じゃああや。場所変えようか〜」


「え?ま…まだするんですか…?」


「良いじゃん別に〜。まだ誰も来ないんだし!この子も言わないって約束してくれたし!」


そしてそのまま、先輩?に連れられて霧島さん達は教室から出て行ってしまった。

残された私は、あまりの怖さにその場に座り込んでしまった。


まるで、最初の頃に会った雫ちゃんをもっと怖くした感じの女の人だった…。


それから5分くらい経って、皐月ちゃんが教室に入ってくるまで、私はその場に座り込んで少し涙目になっていた。


皐月ちゃんが入ってきた時、真っ先に飛びついて泣きながら怖かった〜!って言ったもん!あの人怖いからヤダ!


「はぁ。落ち着いたか?」


「うん…。ありがと…」


「で?何があったんだよ」


「あのね!?実は…」


そこまで言いかけて、あの先輩に秘密にしろって釘を刺されてことを思い出した。

もうあんな怖い目にあいたくなかった私は、心配してくれてる皐月ちゃんに、結局何も言えなかった。


どうやっても私が何も話さないから、だいたい察して諦めてくれた皐月ちゃんは、今日の対面はやめとく?とまで言ってくれた。


なんでも、向こうも少し緊張してて、今はトイレに篭って心の準備をしてるらしい。

だけど、こんなことがあったからこそ、余計に私は会いたくなった。


「みっちゃんが良ければだけど!今すぐにでも会いたい!」


「みっちゃん?ああ〜はいはい。なら先に行っててくれ。すぐに連れて行くからさ」


「分かった!絶対だよ!」


私はさっきまでの怖い気持ちをすっかり忘れて、スキップしながら非常階段へと向かった。


一瞬、さっきの2人がこっちに来てたらマズイ…。と思ったけれど、その心配は杞憂に終わって、非常階段はすごく静かだった。


そして、皐月ちゃん達がくるまでのほんの2・3分の間、私は心臓を凄く高鳴らせながら、その時を今か今かと待っていた。


そう言えば、昨日もここで皐月ちゃんと話したっけ…。

その時は確か、雫ちゃんと何か揉めてるのか聞かれたんだけど…。


鈴音先輩の時と同じで、変に納得されてすぐに話が終わっちゃったんだよね。

私は意味が全然分からなかったけど、皐月ちゃんはなんでだかマズイ!みたいな顔をしてた記憶が…。


私が何か変なこと言っちゃったのかって凄く心配したんだし!

もちろんその日も雫ちゃんとは顔も合わせられなかったけども…。


「紅葉〜。連れて来たぞ〜」


そんなことを考えていると、非常階段と廊下をつなぐドアが開いて、皐月ちゃんと顔を伏せたもう1人の子が入ってきた。

あれ…。なんでだろう。なんかクラスで見たことある気がするんだけど…。


「いや今気付くのかよ…。ほら顔上げな?始まらないだろ?」


そう言われて顔を上げたその子は、当時の眼鏡をかけて、髪型も少しだけ変えていた美月ちゃんだった。


一瞬、訳がわからなくて混乱してた私に、美月ちゃんが言った一言で、私はすぐに我に帰った。


「ずっと秘密にしててごめんね…。みなちゃん。覚えてる?私のこと…」


「え…?美月ちゃん…?嘘だよね…?」


「ううん!みなちゃんが中学生の時に、いじめられてた私を助けてくれたの!」


「え?だったら...なんで…?なんで私の前からいなくなったの…?」


気が付くと、私は自然と涙を流してその場に崩れていた。


みっちゃんが美月ちゃんだったのは驚いたけど、ならなんで、あの時私の前からいなくなったのか…そう考えると、凄く悲しくなってくる。


それに、入学した時に言ってくれれば…もっと、色んなことできたし…話せた…。

今考えると、気付くチャンスはいくらでもあった。


皆でお出かけした時だって、最初に雫ちゃんや皐月ちゃんと一緒にカフェまで行った時も…。


気づけなかった自分に情けなさすら覚える。

こんなに大事だったのに…あんなに仲が良かったのに…。


髪型を変えて、眼鏡からコンタクトになっただけで分からなくなるなんて…。


「ごめんね…。私がみなちゃんから逃げちゃっただけなの…。あの頃の私って、みなちゃんに助けてもらってばっかりで、何もして上げられなかったから…」


「そんなことない!私だって、みっちゃんに助けてもらってた!急に会えなくなっちゃって!私が何かしちゃったんじゃないかって…。悪いことしちゃったんじゃないかって!ずっと悩んでたの!」


「うん。皐月から聞いたよ…。誤解させてごめんね?でも、あの時はああするしか思い付かなかったから…」


「だったら…もっと早く打ち明けてくれたら…もっと色んなこと…」


色んな感情が心の奥底から湧き上がってきて、うまく言葉が出てこないなんて…初めての経験だった。


変わらずに元気だったのが嬉しくて、気づけなかった自分に対して怒って、本当はすぐ近くの美月ちゃんだったことに驚いて…。

その他にも色んな感情が渦巻いて、爆発しそうだ。


「紅葉。私からも謝る。黙っててごめんな…」


「皐月ちゃんも!全部知ってて黙ってたの!?始めに話した時も!皆でカフェに行った時だって!」


「…。ごめん」


涙を前が見えなくなるほど流している私と、本当に申し訳なさそうな声で謝ってくる2人。


私は乱暴に涙を拭って、完全に気付けなかった自分に対する怒りを、理不尽に2人に向けるために向き直った。


この2年間、私は色々我慢したんだ。少しぐらい理不尽でも、受け止めてもらうんだから!

次回のお話は10月19日の0時に更新します。



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