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第94話 絶好の機会

今回のお話は美月ちゃん視点でのお話になります


紅葉ちゃんが熱を出して休んでしまった翌日、学校での態度を見て、私はあることを決めた。

そのことを皐月にも相談するために、放課後凛の家まで行くことにした。


最近皐月の様子がガラッと変わったせいで、なんだかお互いの家で2人きりになるのは…なんだかちょっと恥ずかしい。


凛に許可は取ってないけど、どうせ寝てるかゲームしてるかなんだしお邪魔させてもらおう。

お兄さんも別に嫌な顔はしないだろうし。


「ん?ああ皐月さんたちか。凛呼んできた方がいいかな?」


「あ、大丈夫です。凛は今?」


「多分、ゲーム部屋に篭ってると思うよ。僕は部屋で勉強してるから、なにかあったら呼んでね」


「ありがとうございます」


凛の家に着くと、案の定ほとんど予想していた通りの展開だった。


凛は昨日の夜ご飯を食べてからずっとゲーム部屋。お兄さんは資格取得の為に勉強をするらしい。

別に騒ぐ訳じゃないから、嫌な顔なんてされなかった。


凛のゲーム部屋篭りは、私たちが泊りに来た時に一切ゲームをさせなかったから仕方ない。本人は相当根に持ってたけど…。


「で?話ってなんだ?」


リビングにあるソファに座りながら、そう言った皐月は、遠慮なく私を隣に座らせようとして来た。


仕方ないので横に座りながらも、間に鞄を置いて少しだけ距離を取る。

その私の鞄を自分の左に持っていって、皐月が私に近づいて来た時は流石にちょっと焦った。


「ちょっと…近くない?」


「普通普通〜。それで?」


「はぁ。紅葉ちゃんのこと。どう思う?」


「ん〜。やっぱりその件か。正直に言うなら、私も美月と同じで緑川に対して怒ってるようには見えない。ただ、なんで避けてるのかまでは分からないって感じかな?」


やっぱり皐月もそう思うんだ。

紅葉ちゃんが本気で怒ってるところなんて、私を助けてくれた時以外知らない。


基本的に誰かと揉めることなんて、紅葉ちゃんはしないし。

あの転入生の子を助けた時はどうだったか私は見てないから分かんないけど…。


「それでね?打ち明けるなら今しかないんじゃないかなって思うの!」


「ん?ああ〜そう言うことか。まぁ確かに、何があったかは知らないけど、紅葉が緑川を避けてる現状だと、かなりいい手かもしれないな」


「でしょ!?しかも、紅葉ちゃんが休んだ日に大体文化祭の準備は終わってるし、後は1週間後の最終確認だけでしょ?時期的にもちょうどいいんじゃないかなって!」


そう。紅葉ちゃんが休んだ日、文化祭で出すお店のことがほとんど片付いてしまった。

後は私達作る組の最終確認と、当日使う材料の仕入れで終わる。


もちろんお店は2人じゃ切り盛り出来ないから、2人か3人はお手伝いに来てもらうけど。

そのお手伝い役も、皐月のおかげで私と緑川さんが担当する日は紅葉ちゃんになっている。


これは本人にはまだ伝えてないけど…まぁ明日明後日で伝えれば良いかな〜って。


「まぁ確かに、時期で見れば最高って感じはするな。ただ、1つ問題なのは紅葉のアレが好き避けだった場合だ」


「…。無いんじゃない?高校生にもなってそんな…」


「いや美月も紅葉ならありえるって顔してるじゃん。仮にあれが好き避けだった場合、ちょっとめんどくさいことになりかねないって言うのが少し気になる。緑川と紅葉が両思いってことになるからな。そこに、告白はしないまでも美月が入っていくことで、訳が分からなくなる可能性がある」


「なに言ってるの!?その可能性があるからこそ、そう言う状態に持っていくんだよ!」


よく分かってないらしい皐月に、私は自前の謎理論を得意げに説明した。


簡単に言うと、吊り橋効果って、怖いって気持ちが好きって言う気持ちだと錯覚することじゃん?

なら、緑川さんへの好意が私への好意だと勘違いする可能性が生まれるんじゃないかってこと。


自分でも謎理論だとは分かってるけど、吊り橋効果がある以上、その…すり替え効果?もあり得るんじゃないか説!

どうこれ!結構ありえそうじゃない?


「…。いくら紅葉でも好きな相手を勘違いするなんてありえないだろ…。生まれたばっかのひよこじゃないんだからさ…」


「でもでも!用はそのすりこみって言うの?それと一緒じゃないの?」


「一緒な訳ないじゃん…。ひよこが生まれて1番初めに見たものを親と認識するのとは訳が違うんだよ〜」


皐月はそう言いながら、私の頬をつまんできた。

ん〜!結構良いと思ったんだけどなぁ…。ありえないんだ…。


でも、吊り橋効果があるんだったら、理論上はありえそうだって…。


「ありえません〜。大体なんだその理論上は〜って。なんでこんな時だけアホになるんだよ…」


へ〜()はっへは〜(だってさ)!」


「とにかく、明日紅葉に簡単に探り入れてみるから、その結果待ってくれないか?もし好き避けだったとしても、正体を明かすことに関しては反対しない。ただ、その後の対応も考える必要が出てくるだろ?」


はかっは(わかった)!」


「じゃあとりあえず、好き避けとかじゃ無かったとして、その時はどうするんだ?」


そこまで言って、皐月は私の頬から手を離してくれた。

ずっとむにむにされてたから少しだけ痛い…。


で、紅葉ちゃんに伝えた後の展開だけど、とりあえず色々怒られる予定!

っていうか、まず絶対怒られるもん!話はそれからだよ…。覚悟はできてるし…。


「まぁその時は私も一緒に怒られてあげるから。で?怒られた後は?」


「とりあえず、文化祭2人で回って見ないか話す!これは、意外と自信あるんだけど、多分回ってくれると思うのね?1日だけでも良いから、2人きりになるって言うのが大事なの!」


「ふ〜ん。そこで告白する気なのか?」


「さすが皐月!好き避けじゃ無かった場合なんだから、一気に勝負を決めた方がいいと思ってる。ここは自信ないけど、1週間くらい時間ちょうだいって言われると思うのね?結果はどうなるか分かんないけど、多分緑川さんへの気持ちが無いんだったらオッケーしてくれると思うの!」


皐月もそんな気がするのか、複雑そうに頷いてくれた。

ただ、ここまでうまくことが運ぶ訳がない。


まず、緑川さんへの気持ちが全くないかって言われると、それは怪しい。

次に、あくまでこれは好き避けじゃ無かった場合だから、喧嘩でもしてるんだったらその相乗効果でオッケーしてくれるかもって言う希望も含まれてる。


その点から考えても、ここまでうまくは行かないと思う。


「ここまでが理想ね?で、一度確定してるところまで整理すると、2日目に私と紅葉ちゃんが2人きりで文化祭を回って、そこで私が告白するって言うところまでは確定してるのね?」


「は!?いや2日目に紅葉が2人きりで回ってくれるなんてまだ確定してないだろ?」


「いや?多分紅葉ちゃんの性格的に、強くお願いしたら3日目もあるし多分オッケーしてくれるよ?その間の緑川さんの行動が、皐月がいないから少し怖いけど…」


「はぁ。そこまで考えてるのかよ…」


「告白しようって言うんだから、皐月に頼らずに、最低限は自分で考えてるよ?それで、告白の部分も結局私の意思が揺らがなければ確定してるのね?」


多分、皐月が私に好き好き言ってくれてるのに告白してこないのは、私が紅葉ちゃんのことを好きだってことがあるからだと思う。


だから、邪魔はしたくないと告白はしてきてないんだと思う。

皐月って、そう言う優しいところあるし。


「ん〜。なら、仮に2日目に紅葉と2人きりで回ることになったら、凛に頼んで緑川についてもらうわ」


「うん。そうしてくれると嬉しい!好き避けだった場合、多分断られはしないだろうけど、分からないとかは言われそうかな?って考えてるのね?」


「まぁ紅葉の場合、それは十分あり得るな。そこら辺のことは明日にならないと分からないから、明日もまたここに集合か?」


「そうだね。非常階段とかでもいいけど?」


「いや…あそこは誰かに聞かれる可能性が万が一にもあるからな。こっちの方が安全だろ」


「そうだね。じゃあここで」


そこで一旦、この話し合いは終わった。

せっかく凛の家に来たんだし、凛にも顔を見せておこうと言う話になってゲーム部屋まで行ってみることにした。


この部屋に入るときは、お兄さんでもノック無しで入って来たら怒るらしい。

それは私達でも例外じゃないし、この部屋のドアは凛本人から開けないとダメってルールがあるらしい。


この前のお泊まりの時に自慢げに説明されて、皐月がチョップしてたけどさ…。


ゲーム中に勝手に部屋に入ってこられると、それがいくら私達でもイラっとくるらしい。

時にそれが、オンラインでの大会中だった場合は、マジギレするかも!なんて軽く言ってたし…。


「凛〜?私だけど、今大丈夫か〜?」


ちなみに、この部屋にもベットはあるけど、凛本人が寝てる時でも勝手に入ることはダメらしい。


こっちとは別の部屋に入るときはそんな制約?はないのに、このゲーム部屋は何が何でも勝手に入らせたくないらしい。

そんなに言うなら、チェーンでもかければいいのに…。


5分待っても凛が出てこなかったので、寝てると判断してお兄さんに挨拶をしてから凛の家を出た。


そういえば、12月にまた海外に行くとかいってたような…?今月末に全国大会に出るのに、本当に忙しい子だなぁ…。


帰り道、私と皐月はその微妙にすごい友達の話でもちきりだった。

次回のお話は10月16日の0時に更新します。



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