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第89話 好きの暴走

今回も春奈ちゃん視点でのお話です。


先輩とのデートのお話はこれで終わりです〜

先輩の気持ちを知ってから、私はなんとなく先輩の笑顔が一際可愛く見えている。


なんでこんな気持ちになっているかは分かんないけど、売店でポップコーンとかアイスを買った時も、それを一緒に食べた時も、その笑顔が可愛くて仕方がなかった。


いつもは単に、やっぱり先輩は可愛いな〜って感じだけど、あんなことを言われた後だからなのか…先輩が凄く愛おしく思えてしまっている。


なんだか…うまく伝えられないんだけど、なんか可愛いの!


「次どこ行く〜?」


「先輩が行きたがってたお化け屋敷とかどうですか?」


「あ〜近いし行こっか!」


ベンチで少し休憩した後、私達は先輩が行きたがってたお化け屋敷に向かう事になった。


今いる場所からも近いし、ちょうど良いと思ったんだけど…こんな変な気持ちのままお化け屋敷なんかに入ったら、なんだか不味い気がする。


この前の映画館での先輩の態度的に、お化けとかそっち系が苦手なのは何となくわかってる。


ただ…お化け屋敷なんて密着するゾーンで、それこそ抱きつかれたりしたら…今の私には刺激が強いかもしれない。

いや、普通の状態でも十分刺激は強いんだけどね!?


「先輩…できるだけ耐えてくださいね?いろんな意味で…」


「ん?私ぜんぜんお化けとか大丈夫だぞ?むしろ好きだから!」


「ちょっと手震えてるじゃないですか…。別に強がらなくても…」


「が…頑張るから!」


手を握りながら歩いてるから、先輩の手の震えが何となく伝わってくる。

強がってる先輩の横顔がやっぱり愛おしくて、可愛くて…今にも抱きしめたくなるような感じ!


なんとか必死で抑えていると、やっと目的の場所に着いたらしい。

外見はなんだか廃病院っぽくて、いかにも不気味って感じだった。


入口の注意書きに、「中学生以下はお断り」って書いてるんですけど…。どういう事…?


「そんなに怖いってことですかね…?」


「さあな〜!なぁ。やっぱりここは後にしないか…?」


「なんでここまで来て怖がってるんですか…?」


「怖がってないし!ちょっとなんか…アレなだけ!」


その時、中から悲鳴みたいな声が聞こえて来た。

ちょうど新しい人達が建物内に入ったところだったらしく、開いたドアの向こう側から泣き叫ぶような声が聞こえた。


女の人の声だったよね…?

確かここって、すっごい怖いって有名だけどあれ本当だったんだ…。


「うわ〜!春奈!ちょっと無理!一回帰ろ!」


「なに言ってるんですか…。お化け屋敷に行きたいって言い出したの先輩ですよ?」


「気が変わったんだって!私絶対無理!な?なんでもするからここだけはやめよ?」


いつもは大人っぽい?先輩が急に駄々をこねる子供みたいになってしまった…。

これはこれですっごい可愛いけど、なんだか日頃の仕返しでイジワルしてみたくなった私は、後先考えずに先輩の手を引いてお化け屋敷に入って行った。


待っている人が意外にも多くて、10人くらい並んでいる列の最後尾に並んだ私達は、全く違う反応で順番が来るのを待っていた。


先輩はひたすら帰りたがって、半分泣いてる。

一方の私は、そんな先輩を見てちょっと可愛いなと思ってしまっていた。

なんだか虐めてるみたいだけど…先輩が行きたいって言い出したんだし!


私もちょっとは興味あるしで、初めて先輩をリード出来る時がくるかもしれない。

私たちの後ろに人が並んだことで逃げ道が無くなったと観念した先輩は、それからは必死に何かに祈っていた。


そんなにお化けが苦手ならなんでここに行きたいなんて言ってたんだろう…。

別に強がらなくても良かったのに…。


「強がってた訳じゃないんだって…。そんなに怖くないって朱音が言ってたから…私でも大丈夫って…」


「完璧に騙されてるじゃないですか!ここ結構怖いって有名ですよ?」


「ちょ!春奈!本当になんでもするから今すぐ出よ!?今ならまだ間に合うって!」


「え〜?いやです〜」


笑顔でそう答えた私に、絶望の顔を向けてきた先輩はせめて自分だけでも逃げようと必死に脱出を試みた。

もちろん私がしっかり手を握ってたから逃さなかったけど!


ここまで慌ててる先輩は貴重で、もう2度と見られないかもと思って目に焼き付けておいた。


10分くらい待った後、ようやく私達と後ろの同年代くらいの女の子2人と一緒に中に通された。


一瞬だけ見た感じだと、その子達もお互い手を繋いでたから、私達みたいなカップルなのかもと思ったり?


最初に5分くらいの設定ビデオを真っ暗な中で見せられて、そこからお化け屋敷の中に入るみたいだった。


大体の設定は隣の先輩がずっと目をつぶって耳も抑えてた姿が可愛すぎて、ずっと見惚れてたから覚えてないけども…。


「先輩?終わりましたよ?行きましょ?」


「春奈ぁぁ…。私もう無理だって…」


「まだなにも始まってないじゃないですか…。ほら行きますよ?」


もう泣きそうな声で反論してくる先輩をなんとか宥めながら、私達4人は案内された通路を進んで行った。


ちなみにもう一組の女の子達もやっぱりカップルだったみたいで、私達と同じように一方の女の子は嫌がってて、もう一方はノリノリだった。

さすがに話はしなかったけど。


迷路の中は当然だけど真っ暗で、後ろには私の服の裾を引っ張りながらなんとか歩いている先輩がいる。


もちろん目は瞑ってるから、先輩は何も見えてないんだけど、ちゃんと目を開けてる私は周りがぼんやりと見える。


ベットの上で血まみれで寝てる女の人がいたり、よく分からない薬品が飾られた棚があったりだとか。


そこまで怖い要素はないんだけど、時々上から風が勢いよく出てくるとか、大きな音でビクってなる。


そのたんびに後ろの先輩が泣き叫ぶからずっと宥めて歩く。

もう一組のカップルの子達もなんとかついてきてるみたいだけど、先輩以上に怖がってるからなんだか少し面白かった。


「春奈ぁぁ…。まだ終わらないのか…?」


「初めて入ったので私もいつ終わるかは分かりませんって…。でもだいぶ歩いたのでもう直ぐじゃないですか?」


「そう…。ならもっと早く歩いて…。もうやだ…」


「分かりましたって…。ほら涙拭いてくださいよ…」


「やだ!目は開けたくないの!」


こんな時でも、やっぱり先輩への愛しさは消えなくて、むしろどんどん強くなっていった。


ただ、私の予想は残念ながら当たってしまって、その後直ぐに出口に出てしまった。

出口に着いた時、後ろの先輩が情けない声を出して無事に帰れたことを必死で喜んでいた。


肝心の私は、ネットで見たほど怖くなかったし、先輩の怖がってる姿が可愛かったからもう少し見たかったと残念だった。


近くのベンチで先輩が泣き止むまで待っていると、5分くらいして落ち着いた先輩は、早速私に愚痴を言った。


「春奈が暴走したせいで私は怖い目にあった…」


「だって…先輩が可愛くてつい…」


「なんでもするから助けてって言ったのに…」


「なんもするってなんですか…」


「なんでもはなんでもだもん…。2度とあんな場所入んない!」


勢いよく鼻をかんだ先輩は、まだ溢れてくる涙を拭きながらさらに続けた。


「春奈…。この仕返し…覚えとくんだな…」


「え!?いやなにする気ですか!?」


「知らない!とりあえず頭撫でて!」


「え…?えぇ…」


お願いが可愛すぎて一瞬困惑したけど、言われた通り頭を撫でてあげると、それこそ猫みたいに甘えてきた。


なんだか…喉を鳴らしてるみたいな感じで…。

猫耳をつけてるからか、凄く可愛いんですけど…。


側から見たら、姉を慰めてる妹にしか見えない気がするんですけどこの構図…。

っていうか、あのプレゼント渡すなら今なんじゃ…?


「先輩…。この前渡しそびれたもの渡したいんですけど…」


「ん〜。なに〜?」


「これです。先輩欲しがってましたよね?」


バックから私が取り出したのは、先輩がずっと探していた百合の本だった。

この間ばったり会った時、実は弟の忘れ物を届けにきたんじゃなくて、この本を探しにきていたんだ。


本当にどこにもなくて一日中探し回ってやっと手に入れた代物だった。


「なんでこのタイミングなんだよ…」


「あの…なんだか悪いことしちゃったかなって…」


「そう思うなら今日は私の家に…」


「それは却下で!」


先輩は頬を膨らませて拗ねながらも、私が渡した本に関してはしっかりと抱きしめていた。


その後もしばらく頭を撫でてと言われて…どれくらいそうしていたか分からなくなってきた頃、もう充分と言われた。

私も先輩に撫でられてみたいんですけど…。


「は〜!じゃあ今度はあっちのゴーカート行こ!」


「復活早いですね…」


「好きな人にナデナデされたらそりゃ復活する!」


「そうですか…。っていうかそんな恥ずかしいことわざわざ言わないでくださいよ!」


その後も散々振り回された挙句、最後にお土産を買ってその遊園地を後にした。


電車の中では色々あって疲れたのか、私の肩にもたれかかって寝ていた先輩の寝顔をこっそりと写真に収めてその日は終わった。

次回のお話は10月1日の0時に更新します。


これでやっと文化祭に向けてお話が進みます。


もう少しで100話の大台ですよ!?

続けられてるの頑張ってますよね!?

読んでくださってる皆様のおかげですほんと...。


これからも頑張りますm(_ _)m

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