表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/153

第88話 我慢の限界

今回のお話も春奈ちゃん視点でのお話です

遊園地の中に入った私達は、まず始めに入口に置いてあったパンフレットを開いた。

先輩が一番始めに行きそうなところって言ったら…あそこしかないんだけども。


「まずはここだな!」


「やっぱりですか…」


先輩がパンフレットの中で指差したのは、お土産屋さんだった。

先輩と離れ離れになる少し前、一回か二回先輩の家族と一緒に、ここじゃないけど遊園地に行ったことがある。


その時もまず最初にお土産屋さんに真っ先に向かっていた記憶があった。


やっぱり園内でも当然のように手を繋いでくる先輩に、少しでも抵抗しようと腕を絡めてみるけれど、そのせいで余計に密着して手を繋ぐ何倍も恥ずかしい思いをした…。


お土産屋さんに着いた時なんて、もう見てられないくらい顔が赤かったんじゃないかな。

すっごい先輩が笑ってたし。


「あ!これ可愛くないか!?」


自分がやったことに自分で恥ずかしくなっていた私に対して、先輩が持って来たのは犬の耳がついたカチューシャだった。


これを付けろと…?余計恥ずかしくなるんですけど私!


「っていうか、私がこういう仮装?みたいなの苦手だって知ってますよね先輩…」


「忘れた!ほら!絶対可愛いって!」


「嫌ですよ…。先輩が付けるならともかく、私が付けても似合いませんって…。こういうのは私より可愛い先輩がつけたほうが…」


「…。なんでさっきのはダメで今の発言が良いのかは置いとくとして!私がこれ買ってあげるからさ!お願い!」


先輩が朝禁止って言ったはずのあの上目遣いで見て来て…私はさすがに断りきれなかった。


っていうか、先輩の発言の意味がイマイチ分からないんだけど、どういうことだろう…。


「やった〜!あ私もなんか付けたいから春奈が選んでよ!」


「はしゃがないでくださいよ…。じゃあ先輩は…これで…」


私が咄嗟に手に取ったのは近くにあった猫の耳がついたカチューシャだ。

先輩って犬か猫かって言われたら猫のイメージだしちょうど良いかも知れない。


先輩は私と違って可愛いから似合うだろうし…。


「あのな春奈…。そんなに可愛いって言われると流石の私でも照れるからな?」


「そんな風には見えませんけど…。っていうか、早く行きましょうよ!これ結構恥ずかしいんですから!」


「私の方がよっぽど恥ずかしいんだけどな…」


そうボソッと呟いた先輩の顔は、本当に少しだけ赤かった。

お会計の時、担当してくれたお姉さんもなんだか微笑ましそうに笑ってたし…。


お店から出た瞬間、先輩から催促されて私は犬耳のカチューシャを、先輩は私が選んだ猫耳にやつをつけてみた。


先輩は躊躇なく付けてたけど、私はこういうのが苦手だから少しだけ戸惑っていた。

ただ、先輩の猫耳が可愛すぎて見惚れてたらサッと付けられてしまった。


「そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいっての…」


「だって可愛いんですもん!っていうか写真撮りましょ!」


「今日はやけに積極的だな…。なにかあったのか?」


「そんなことないと思いますよ?はい撮りましょ!」


それから私は、いつの間にか自分の羞恥心を忘れて照れてる先輩と一緒に写真を撮ることに熱中した。


10枚くらい撮ったところでストップがかかっちゃったけど…。なんか…照れてる先輩って新鮮で嬉しい!


携帯を握りしめてホクホク顔だった私は、妙に焦ってる先輩に手を引かれて、裏道?に連れていかれた。


そこでいきなり先輩に壁ドンされた。金曜の部室の時みたいなおふざけって感じじゃなくて、なんか本気のやつ…?

先輩の目があの時と全然違う…。


「せん…ぱい?」


「あのな春奈…。私だって色々我慢してるんだ…。その我慢を無駄にするんだったら…今日は帰さないからな…」


「え…あの先輩…それってどういう…」


そこまで言って、私の口は先輩の唇で塞がれた。

それは残念だけどすぐに離れて行っちゃって、その後の先輩の顔は耳まで真っ赤になっていた。


多分私も同じくらい真っ赤だけど…先輩の気持ちが今のでなんとなく伝わった。

改めて考えると…なんかすっごい恥ずかしくなって来たんだけど!


なに!?私平気で先輩に可愛いとか…!もう無理なんですけど!

しかもしかも!帰さないって…。我慢してるって…そういうこと?


「恥ずかしいからこれ以上言わせるな!ほらもう行くぞ!」


「ちょっと待ってください…!もう少しだけここで休んで行きませんか…?」


「休むのは賛成だけどここじゃヤダ。人前がいい」


「分かりました…」


お互い耳まで赤くしながらその場を後にして、近くにあったベンチに座った。

2人の間にはなんとも言えないような空気が流れていて、私はさっき言われたことを思い出してはずっと顔を覆っていた。


先輩がどうなってるのかはわからないけど、多分私と同じような感じになってるんだと思う。

時々横からすっごい大きなため息が聞こえてくるし…。


「先輩…今日ずっとそう思ってたんですか…?」


「ん?むしろいっつもやり過ぎないように我慢してるんだけど…」


「我慢してあれなんですか!?」


「我慢しないでいいならもっとイチャつく!」


「いや…あの…嬉しいですけど今は…あの…」


「冗談だって。私も開始早々こんなに飛ばしてたら1時間くらいで身が持たなくなるって」


先輩の身が持たなくなるのが先か、私の精神が限界を迎えるのが先か…。

矛と盾のどっちが強いかみたいな…そんな勝負になることだけは絶対に嫌だ。


なにされるかわかんないし、今度から先輩に会うたびにこんな事言われ続けたら…恥ずかしさで死ぬ自信がある。


「じゃあ私も色々我慢するので、先輩は引き続き我慢してください…」


「なんだそれ…。私は別として、春奈は我慢しなくてもいいんだぞ?その場合今日は私の家に…」


「それは…いや全然嫌じゃないですけど!まだちょっと早いっていうか!心の準備っていうか!」


「はぁ〜。冗談だって。そんなに本気にするなよ」


「あんなことしておいて冗談で済むと思ってるんですか…。先輩の場合、本当にやりかねないでしょ…」


先輩は誤魔化すように笑った後、立ち上がってから大きく深呼吸をした。

そして私の方を向いて、とびっきりの笑顔でこう言った。


「わかった!色々我慢するから、今日は私のワガママ全部聞いてな!」


「いや…なにする気ですか…」


「約束な〜!よし行くぞ〜!」


そう言いながら座っていた私の手を引いて歩き出した先輩は、今までで一番楽しそうだった。


少しだけなにをされるのか怖いけど、それよりも妙にはしゃいでる先輩が可愛くて、今のこの状況が楽しくてしょうがなかった。

次回のお話は9月28日の0時に更新します。


また変換ミスで茜が朱音になってました...。

今度はおまけで春奈が春菜になっちゃってるかもです。


変換ミス1回しちゃうとその後のやつも次々そうなっちゃうのほんとにヤです...。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ