表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/153

第84話 どうすればいい?

今回のお話も皐月ちゃん視点でのお話になります。

翌日、私は葉月の妙に焦った声で意識を取り戻した。

目を開けてすぐ、葉月が泣きそうな顔で私を揺すっている姿が見えてきた。


「あ…お姉ちゃん!?すごい熱だよ!?どうしたの…?」


初めは何を言われてるのか分からなかったけど、少しだけ意識が戻って来て、葉月が何を言ってるのかだんだん分かって来た。

どうやら、私は38度くらいの熱を出してるらしい。


なんでも、いつも起こしてくれる私が今日はまだ起きてなかったから、不思議に思って私の部屋に入って来たらしい。

そしたら、私が汗だくで寝てたからおでこに手を当ててみると、すごい熱かったらしい。

泣きながら葉月がそんなことを言っていた。


「そっか…。ごめんな心配かけて。それより、学校は良いのか?」


「うん…。今日は休むって萩君に言ったから。お姉ちゃんのことも伝えたから、今日は一日私が看病する!」


「心配かけてごめんな…。じゃあ、氷枕持って来てくれるか?冷蔵庫の一番下に入ってるから…」


「分かった!待ってて!」


別に風邪とかを引いてる訳じゃ無いんだけどなぁ…。

咳とか全然出てないし、なんでこんなに熱が出てるのか本当に原因がわからないんだけど。

病気とか、ここ数年かかったこと無かったのになぁ…。


葉月が氷枕を持って来てくれるまで自分の部屋の天井を見ながらぼーっとしていると、チャイムが鳴った。

こんな時に…。葉月大丈夫かな…。


「あ〜葉月ちゃん!?おっきくなったね〜!私のこと覚えてる!?」


「…。なんか聞き覚えあるなこの声…」


そして、その悪い予感はすぐに的中したことが分かった。

部屋に戻って来た葉月は、手にビニール袋と氷枕。隣にはジャージ姿の凛を連れていた。


いや、何当たり前にここに来てんの?あんた学校は?


「いつも休んでるんだし今日も休んで大丈夫でしょ!それより、なんで急に熱?風邪でも引いた?」


「病人相手にそんな大声で話すなよ…。何しにきたんだよ…」


「暇だから…じゃなくて!心配だからお見舞いに来た!」


「本音が漏れてるだろ。暇なら学校いけよ…」


「え〜?こっちに来た方が楽しいじゃんか!」


仮にもこっちは熱があるのに、なんでこの子はいつものテンションで話しかけてくるのか…。


しかも、その格好でここまで来たとか…信じられないんですけど…。


とりあえず葉月にはしばらく自分の勉強をしてるように言って、部屋から出てもらった。

看病は凛にして貰うからと言ったけど、怪訝そうな顔で出て行ったから…納得はしてないらしい。


ごめんね。今度いっぱい構ってあげるから許して。


「で?ほんとは何しに来たんだよ。凛がお見舞いに来るとかそんな訳ないもんな…」


「え〜?私のことなんだと思ってるの!?友達が熱出したらそりゃお見舞いには行くって!大会が近く無かったらだけど…」


「最後の方だけ小声で言うなよ…」


相変わらずな凛に呆れつつ、なんとか体を起こして凛の方を向いた。


なんで熱を出してる時もこの子のお守りをしないといけないのか...。


まぁ少しだけ...というかだいぶ不満だけど、葉月に付き添われてるとあの子に心配させないように無理しちゃいそうだからなんとなく救われた。


声に出してそんなことを言うと、凛が調子に乗るだけだから言わないけど。

だけど、もう少しで全国大会とか言ってた割にここにいるってことは、凛なりに心配はしてくれてるんだろう。


「実は昨日ね?美月から皐月の様子がおかしいって言われてさ!それでいきなり今日熱だして休むとか言われたらさ?なんか心配じゃん?」


「そう言うことか…。別になんでもないって言ってるのに…。心配性なんだから」


「美月が心配性なのは分かるけど、私も思ってたんだよね〜。最近の皐月なんか変だよ?」


美月だけじゃなくて凛にもそう言われてしまうのか…。

そんなこと言われても、本当のこと言える訳無いじゃん。


本当は美月が好きだけど、その気持ちを押し殺して紅葉との恋を応援してること。

その間に色々あって、自分の気持ちに完全に蓋をすることにしたこと。


そんなこと…誰にも言いたく無い。


「大体予想はついてるけどさ。美月のことでしょ?」


「...なんのこと?」


「ゲーマー舐めてる?好きなんでしょ?美月のこと」


そう言われた瞬間、思わず自分の耳を疑った。

これは夢かとも思った。今まで必死で隠して来たつもりなのに、よりにもよって紅葉と同じくらい鈍感で抜けてるな凛に気付かれるなんて…。


この際、ゲーマーが関係あるのかはどうでもいいとして、なんでそれがバレたのか全く分からない。


「一応聞くけど、なんでそう思うんだよ…」


「あんた自分じゃ気付いて無いかもしれないけど、美月と話してる時すっごい嬉しそうだよ?反対に、紅葉ちゃんと美月が話してる時はすごく辛そうでさ。誰でも気付くよ…」


私は、何も答えることが出来なかった。だって実際…その通りだから。

心のどこかで、紅葉と話す美月を見る度に辛くなっていたことは何度かあったかもしれない。


ここまで見抜かれてるなら…もう見苦しく隠し通すことはできない。

凛はバカだけど、美月にベラベラ喋るような奴じゃないし。


「はぁ。その通りだよ。中学から私は美月のことが好きなんだ…。だけど、それとこれとは関係ないだろ?」


「皐月さ、前にもこんなことあったの忘れたの?初めてあった頃はそんな喋り方じゃ無かったでしょ?どうせプールでのことでしょ?そこからおかしくなった気がするって美月も言ってたよ?」


はぁ…。いつもそんなに頭良くないくせに…。なんでこんな時だけ?

もういいや。ここまでバレてるなら隠し通せるわけがないし。


っていうか、なんでそこまで分かってて喋ってこなかったのかすごく不思議なんだけど。

凛の性格だと、真っ先に「なんで!?」とか聞いてきそうなのに。


「はぁ。なんて言えばいいのかな…。私には美月と付き合う資格がないだろ?いや、好きでいていい資格も...本当は無いんだ。そんな私が、美月の好きな人に対して嫉妬しないと思ったか?そんな訳無いだろ。資格がないなりに、一人前に嫉妬はするし悲しくもあるんだ。私ってめんどくさいだろ?」


気付けば、私は泣きながらそう言っていた。

自分がこれまでして来たことを思い出しながら、その時々で感じていた美月に対する恋心が、抑えて来た感情が、全て綺麗に溢れ出してきた。


「ねぇ。1つ聞いていい?なんで美月のことを好きでいる資格がないの?なんで美月と付き合う資格がないの?」


「凛は知らないかもしれないけど、美月は中学の時、少しの間虐められてたんだよ。それを助けたのは…私じゃなくて、当時美月の顔も知らなかった紅葉だ。そんな、好きな相手を助けられなかった私には…そんな資格ないだろ?」


「ふ〜ん。それで?」


「挙句の果てには美月が好きになったのは紅葉だ。考えてみれば当然だよな。危ないところを助けられたなら、好きになることは良くある....」


「なら聞くけど、私はその時ゲームに夢中だったよね?そんな私は美月と一緒にいる資格もないの?確かに皐月の考えは分からなくないけどさ、なんでそんなに重く考えるの?」


「全然重くないだろ。友達で、好きな人で…そんな人が虐められてるのに助けにすら行けなかったんだ。凛はともかく、私には無理だ…」


そう言うと、凛は呆れたようにため息をついて自分で買って来たと言っていたビニール袋の中からカップアイスを取り出した。

私が好きなバニラ味のアイスだ。


てっきり私のもあると思ってビニールの中を見てみると、他にアイスは入ってなかった。


「ねぇ皐月。まさかとは思うけど、あんたそんなこと抱え込んで熱出したわけ?」


「…」


「ばっかじゃないの?うまく言えないけど、そんなこと美月気にしてないんでしょ?っていうか、皐月の理論だと私も美月と一緒にいたら行けないよね?でも、そんなのは本人の気の持ちようだよ?私は美月が気にしてないんだったらそんなに重く受け止める必要無いと思うけど?」


「さっき分からんでも無いとか言ってたのはどこ行ったんだよ…」


その私の質問に適当に答えた凛は、食べ終わったアイスにカップを近くにあったゴミ箱目掛けて投げた。

投げるのはいいけど外すなよ…。汚れるじゃん。


「あ、なんか流れで皐月に買ってきたやつ食べちゃったけど許して〜」


「どう見ても謝ってるやつの態度じゃ無いけどな!」


「とにかく、美月が気にして無いんだったらあんまり気にしないでいいと思うよ?そんなこと気にして今まで過ごしてきたんなら、明日からそんなこと考えるの禁止ね。守れないなら、私と美月はあんたと付き合うの辞めるから」


「は?なんで急に…」


「美月には私から事情は話しとく。なんでって?そんなこと1人で抱え込まれてた人の気持ち考えてよ!私達友達じゃなかったの!?なんで相談してくれなかったの!?相談してくれたら…あんたをそんなに追い詰めなかった!皐月を救えなかった私や美月には、あんたと付き合っていく資格はないんでしょ?」


涙を流しながら本気で怒っている凛は、その後も同じようなことを必死で私に言ってきた。


30分以上怒られ続けて、流石に凛も慣れないことをしたせいで疲れたのか、最後に釘を刺して部屋を出て行った。


「良い?明日私は起きれたら学校行くけど、明日もそんなくだらないこと言ってたら本当に友達辞めるから!」


私は何も言えず、ただベットの上で部屋から出て行く凛を眺めてることしか出来なかった。


すぐに葉月が部屋に入ってきたけど、しばらくの間1人にしてくれと頼んだ。

目に見えて不機嫌になったけど、なんとか宥めて出て行ってもらった。


1人になった私は、ひたすらどうしたら良いのか分からずに、ただ泣いてしまった。

自分が今熱を出していることを忘れて、ただひたすら泣いた。


ずっと凛に言われたことと美月の顔が頭の中で渦巻いて、今まで溜め込んでいたものが全て溢れて行くような感じ。


自分のこの気持ちを整えるのに、後半日しかないなんて、とても間に合いそうにない。


だけど、この気持ちをどうにかしないと自分の友達どころか、自分の好きな人すら失ってしまう。


誰か…私はどうすれば良いのか教えて欲しい…。

次回のお話は9月16日の19時に更新します。


皐月ちゃんのお話はあともう少しで終わりです。


皐月ちゃんのお話が落ち着いたら投稿時間を変更します。

度々変更してしまって申し訳ないですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ