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第80話 想定外と変わらない姿

今回は皐月ちゃん目線でのお話です。


しばらく皐月ちゃん視点でのお話が続く予定です。


なんとか文化祭の方針を決めて無事6時間目が終わった後、私は紅葉と緑川と一緒に文芸部の部室に向かった。


今日から私と美月も部員になったと言った時の紅葉の喜びようはもう凄かった。

少しだけど、美月がこの子をすごく好きな理由が分かった気がする。


「あ、そういえば話通してくれてありがとな!」


「別に…。朱音先輩も喜んでたし…。それより、部室では私達のことより自分のことを第一に考えた方が良いと思うわよ…」


「ん?なんだそれ」


「それは行けば分かるけど、先にこれだけは言っとく。奥田さんも一緒に来るなら間違いなく標的になるから、気を付けてね」


全く話の内容が分からなかったけど、とりあえずうなづいておいた。


前から文芸部の話はちょくちょく聞いてたけど、なぜか男子が入部したがらない部活程度の認識だったんだけど…。

紅葉の話だと、部員の先輩達は全員可愛いらしい。

じゃあなんで男子が一切入部しないのか…。


夏休み中だったしまともに調べられなかったけど、活動内容が本を読むだけとかだったし、単純にそう言うのに興味がない人がこの学校には多いのかもしれない。


図書室も、本を読む目的で利用してる人より、イチャつき目的で利用するカップルの方が多いくらいだし。


「でも、春奈先輩とのやりとり見ても、皐月ちゃんなら大丈夫なんじゃない?どっちかって言うと皐月ちゃんは恋愛とかに興味なさそうだし…?」


「なんで疑問系なんだよ…。別に興味がない訳じゃないぞ?ただ、相手がいないってだけだ。第一、私が恋愛するのなんて無理な話だぞ」


「なんで〜?皐月ちゃん可愛いじゃん!」


「可愛くはないだろ…。まぁ、どっちかって言うと私自身の問題なんだよ。まぁこの話はまた今度な」


私の過去の話は紅葉にはしたくない。

仕方なく緑川には話すことになったとしても、紅葉にだけは知られたくない。


美月の想い人としても、かつて美月を救ってくれた人に対してそんな情けない話はしたくない。


そんな話をしているうちに、どうやら文芸部の部室の前に着いたらしい。

なんか…中から女子の声がするんだけど…。しかも、イチャついてるみたいな声が。


なんとなく入るのが気まずくなってきたんだけど。どういうこと?


「なんか…いつもより声が大きいような気がするんだけど、気のせいかな?」


「気のせいじゃないと思う…。朱音先輩がもう来れないって言ってたから抑える必要がなくなったとか?」


「なぁ。全く話が見えないんだけど。これ大丈夫なのか?」


「全く大丈夫じゃないわよ。本当に入部するつもりなら、ここに来る度にこう言う状況になってることを覚悟しないとダメだと思う。夏休み中に色々あったから...」


そう言うと、緑川は紅葉とさりげなく手を繋いで、ノックをしながらドアを開けた。


ドアの向こうでは、黒髪の女の子が朱色の髪の女の子に壁ドンしてるところだった。

一瞬意味が分からなかったけど、横の2人も全く状況が掴めていないらしい。


「なっ!せっかく良いところだったのに…!」


「別に気にする必要ないだろ?ほら…」


そう言うと、なぜか壁ドンされてる方が顔を近づけてキスしに行っていた。普通逆だろ…と思う前に紅葉がぎゅっと目をつぶった。


緑川は紅葉に比べるとマシだけど、顔が少し赤い。

私は…あれが将来紅葉と美月がしていると考えると、なぜか寂しくなってしまった。


美月が紅葉と結ばれるのは良いとして、なんでそれが私の寂しさに繋がるのか全く分からない。


あれが緑川と紅葉だと想像してみてもどこか嬉しくなるし、私の心はどうなってしまってるんだろう。


やるべきことと自分の感情が矛盾している気がする。いや、気がするじゃない。矛盾しているんだ。


「ちょ!先輩!もう無理ですって!」


「え〜?まぁ仕方ないか。なぁ緑川〜。ノックするときは相手の反応が返ってきてから入って来ないとノックの意味ないだろ?せっかく春奈から積極的に来てくれたのに〜」


「そう言う恥ずかしいことは言わないでくださいよ!別に良いじゃないですか!たまには…」


「なぁ。帰っていいか?私…」


美月に頼まれたとはいえ、入る部活を完全に間違った気がする。

なんで部室開けた瞬間、濃厚な百合展開を見せつけられなきゃ行けないんだ…。


私への当てつけなんかじゃないことは分かってるけど、なんとなくそう思ってしまう。


「お。朱音が言ってた新しい部員ってその子か?部長の朱音が受験でもう来れないから、副部長の私がこの部活を任されたんだ!よろしくな〜」


「よろしくお願いします…。ちなみに、その女の子とはどう言う関係なのか聞いてもいいですか?」


私は、その副部長と名乗った先輩の横で真っ赤になりながら、必死で紅葉達に弁明している女の子を見ながらそう言った。


大体答えは分かってるけど、万が一恋人とかじゃなくてただの友達とかだとしたら、美月をここに入れるのはちょっと考えないといけないかもしれない。


そう思っていた私の気持ちは、幸い杞憂だったらしく夏休み中の花火大会から付き合ってる恋人同士らしい。


そしてなぜか、私と美月のことに関して色々聞かれた後、ニヤリと笑われた。


「なんで笑ってるんですか…」


「ん?別に?紅葉達と同じでなんか面白そうだなって」


「なんですかそれ…。とにかく、今日はちょっと用事があるの思い出したので先に失礼します…」


「おう。じゃあな〜」


早足で下駄箱に向かった私は、途中で綺麗なピンク色の髪をした女の人とすれ違ったけど、見たことない人だったからスルーしてそのまま帰った。


後日、その人が文芸部の部長さんだと知って少し驚いた。

ただ、すごい派手に髪染めてるなぁ〜くらいにしか思わなかったのに…。まさか部長さんだったとは…。


学校から出た私は、その足で美月の家に向かった。

今日の報告をしに行くのも、今日休んでもらうために私が出した条件の1つだったからだ。


「とりあえず、転入生は女子だったから万が一にも紅葉にちょっかいを出すってことは無いだろ。問題っていうなら、その転入生のことで色々あって、文化祭は女子と2人の男子。それと他の男子とで別々の出し物をすることに決まったってところか?」


「その2人の男子が誰なのか嫌でも想像できるけど、まぁ仕方ないとして...。色々って何があったの?」


「ん〜。まぁ簡単にいうと、転入生が男子に絡まれてるとこに紅葉が突っ込んで行って、助けてから私達がその後に男子と色々やり合ってそうなったって感じか?」


「そうなんだ。紅葉ちゃんが…あの時と同じことを…」


美月は紅葉に助けてもらったっていう過去があるから、余計に感慨深いものがあるのかも知れない。


あの時は私も、当時を思い出してしまって少し強く言いすぎた気もするけど。それは美月には言わなくていいだろう。


私がまだあのことを気にしてるなんて言ったら、優しい美月はきっと気にしないでと言ってくれるだろう。

ただ、それだと私が納得できない。

あの時の情けなかった私は、もう二度と美月には見せたくない。


「後、美月。文芸部に行く時は、必ず私と一緒に行くことな。間違っても1人で行こうとか思わないこと!」


「ん?それはまたなんで?」


「副部長がちょっとやばそうな人だから」


「なにそれ…」


「私もよく分からんけど、とにかく1人では行くな。うまいことして文化祭は紅葉と一緒に居られるようにしてやるから」


「本当!?ありがと!」


とりあえず、美月が1人であの部室に近づくことは避けないといけない。

もし美月が1人の時にあの鈴音っていう先輩に会ったら…何を吹き込まれるか分からない。


ただでさえ、最終的に美月が目指してるのが先輩達みたいな女子同士のカップルなんだから、何かと理由をつけて向こうから突っ込んでくる可能性が十分ある。


もちろん、美月と紅葉の関係とかは話してないけど、態度であの人なら察しそうだし。


しかも、美月の方から色々聞きに行く可能性すらある。

それだけは絶対に阻止しないと、今よりめんどくさいことになりかねない。


もうこれ以上(こじ)れたり、ライバルが増えると私の頭がパンクする…。


「私も色々考えてたんだけどね?文化祭の時が一番いいと思うの!」


「自分の正体を明かすのが…か?確かに文化祭が一番いいだろうけど、良いのか?1番の武器とか言ってただろ?それを使うのか?」


「まぁ、それはそうだけど紅葉ちゃんも言ってたじゃん。『なるべく早く!』って。それに!あのジンクスもあるしさ…」


美月が言うジンクスは、物語の世界で良くあるような文化祭で告白したら結ばれるとかそう言うのではなく、単なる噂だ。


確か文化祭が行われる日、時計の数字が全部揃った時にその時計の前で好きな人に秘密を打ち明けると、その後の告白が必ず成功するとかそう言うのだった気がする。


「あのなぁ…。あのジンクスはどう考えても怪しいだろ…。大体、なんだよその10分くらいで考えました〜みたいな設定。1分で自分の秘密打ち明けるとか無理あるだろ…」


「いや…それはそうかも知れないけどさ!でも、チャレンジする価値はあると思うんだ!」


「第一に、その怪しいジンクスには色々穴がありすぎる。数年前に生徒会か先生達が考えて広めた噂感しかないぞ?」


「それは言いすぎなんじゃ...。確かに色々ツッコミどころはあるけどさ!それでも...」


「いや、私だったらその秘密は、文化祭中じゃなくて文化祭の前に言う。考えてみな?あんなに喜んでたんだぞ?一緒に文化祭回りたいって言ったら、普通に言うより喜ばれると思うぞ?」


「それは…否定できないけど…」


「まぁ今すぐに決める必要はない。まだ文化祭まで全然時間はあるんだ。ただ、私はそう思うってだけだ」


まぁ、この先は美月に任せるとして、問題はどうやって紅葉と美月を一緒にするかだ。

美月は紅葉と違って間違いなくパンケーキ屋の店番をすることになる。


だから、美月と緑川は一緒の日に店番して貰わないと、紅葉と緑川が一緒に回ることができてしまう。


逆に、私と美月をバラバラにすれば私は紅葉と凛の子守り?をすることが出来る。

どっちにしろこの先の展開次第だけど、こうなるのが理想だ。


文化祭の最終日が確か一番盛り上がるって話だったから、その日は私が店番をするように仕向ける。

最終日はやりたがる人の方が少ないだろうからこれは簡単だろう。


問題は、初日はやりたがる人も多そうだから、美月達に店番をして貰うようにうまいこと持っていけるかだ。

それが出来ないと、この計画は少しキツイかもしれない。


まぁこの計画だと、3人で回ることになるかも知れないけど、緑川と2人きりで回るよりは良いし美月も納得してくれるだろ。


で、肝心の初日は凛も連れて回ればいい。

うちの学校は割と広いし、初日は凛がいるからほとんど回れないだろ。


2日目に3人でゆっくり回ればいい。

私は文化祭には興味無いし、美月達の邪魔はしたくない。


凛がもし来た時の為とか言って適当にバラけてれば良いだろ。

まぁ、初日しか来ないだろうけど。


「じゃあ、また明日な」


「うん。ありがと」


私は帰り道も色々と文化祭のことについて考えていた。

もし凛が文化祭に来ないと言っても、初日の数時間だけ来いって言えば多分来るだろ。


今日は頭を使いすぎて疲れた…。早く休みたい…


「そう言えば、結局凛来なかったな…。今度会ったらちゃんと言っとかないとな…」


ここにいない凛に愚痴りながらゆっくりと家に戻った。

次回のお話は9月4日の19時に更新します。


なるべく早く文化祭に持っていきたいんですけど、焦って持ってきてもいい事ないと学んだので、じっくり焦らずやっていきますm(_ _)m

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