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第79話 文化祭前の決裂

後半部分は皐月ちゃん視点でのお話になります。



お昼休みの大半を女子トイレで過ごした私たちは、5時間目が始まる寸前で教室に戻った。

女子トイレの中で、立花さんとは少しだけ仲良くなれた気がする。


教室に戻ると、明らかにさっきのことで空気が悪くなってたのか、教室に入った瞬間に何人かに睨まれた。

思わずビクッとなっちゃったけど、雫ちゃんと皐月ちゃんが助けてくれてなんとか自分の席に戻れた。

そして、雫ちゃんだけじゃなくて皐月ちゃんも私の隣の席に座った。


「心配なのは分かるけど、なんであなたが奥田さんの席に座ってるの?」


「ん?そりゃ、あのバカ達が紅葉になんかして来ても大丈夫なようにだぞ?ちゃんと美月に話は通しとくって」


「いや、そういう問題じゃないでしょ?確かにこのクラスの男子は最低だけど、皐月さんは自分の席に戻った方が良いんじゃない?」


私を挟んでなんだか怖い雰囲気になって来た雫ちゃんと皐月ちゃんは、私が止めるとあっさりと喧嘩をやめてくれた。

なんでそんな急に態度が変わったのか分からなくてすっごく怖いんだけど…。


午後は、1ヶ月後にある文化祭の話し合いらしくて、クラス委員の美月ちゃんがいないから先生が代わりに話を進めてくれるらしい。


そういえばすっかり忘れてたけど、美月ちゃんってクラス委員だったっけ…。

全然そんなイメージないけど…。


「えっと〜10月の半ばにある文化祭なんだけど、各クラスから1つ出し物をしないといけないのね?それで、午後はそれをみんなで決めてもらうってことになってるんだけど…何この空気?」


「昼休みにバカな男子が転入生の子にちょっかいかけてたんで、ちょっと揉めたんですよ。なぁ?」


「あ?喧嘩売ってんのかお前」


「私は事実しか言ってないぞ?あんた達がバカなのも事実だし、ちょっかい出してたのも事実だろ?」


「ちょっと皐月ちゃん…言いすぎだって…」


なんだか、私たちの中で一番さっきの件で怒ってるのは皐月ちゃんらしい。

確かに私も少しだけ怒ってるけど、皐月ちゃんのはまたなんか…次元が違うというか?

昔なにかあったのかな?


そういえば、皐月ちゃんと美月ちゃんって高校からの付き合いだから、あんまり昔のこととか知らないんだ…。

あ、それは雫ちゃんも同じか…。


なんだか、まだ半年くらいの付き合いだって思えない。

もう何年か一緒に過ごして来てるような感じがする…。


「あ〜お昼休みなんだか騒がしかったのはそういうことだったの。でもね?文化祭はクラスみんなで協力しないと…」


「多分ですけど、クラスの女子全員ここのバカな男子とは協力とかしたくないと思いますよ?ここにはいない女子も含めて」


「そりゃこっちも同じだわ!別に女子の手なんか借りなくても問題ねぇし」


クラスの中がまた危うくなって来て、本来止めるべきな担任の柊先生もただタジタジしてるしで…。


今にも立ち上がりそうな男の子と、私の横でひたすら煽ってる皐月ちゃんの喧嘩が始まりそうになった時、いきなり教室の前のドアが開いた。


「すいません〜。ちょっと寝坊しちゃって〜」


そんな今のこの教室には似合わない呑気な声が聞こえて来た方向を見てみると、寝癖が微妙に直しきれてない凛ちゃんが笑いながら立っていた。


手には学生鞄じゃなくて、なんでか普通の白いハンドバックを持ってるけど…。


そんな凛ちゃんを見て、さっきの口調とはだいぶ変わって、今度は呆れたように皐月ちゃんがため息をついた。


「なぁ凛。色々言いたいけど、一応聞くぞ?そのバックはなんだ?」


「え?なにって別に変じゃないでしょ?普通のカバ…うわ!なにこれ!?」


「はぁ…。なにやってんだよ...。さっさと戻って取ってこいよ…」


「ごめん!先生!そういうことなので、一回帰ります〜!」


そういうと勢いよくドアを閉めた凛ちゃんは、あんまり勢いよく閉めたせいで大きな音をたてながら閉まったドアにビックリしながら走っていった。


先生も皐月ちゃんも、「なにしに来たんだろう?」みたいな顔をしてるけど、多分クラス中の人がそう思ってると思う。


だけど、凛ちゃんのおかげで不穏すぎる空気が流れてた教室の空気が、少しだけ軽くなったような気がした。


「え…えっと〜それで文化祭の出し物の件だけど…とりあえず、なにがしたいのかだけハッキリさせない?じゃないと、この時間は授業になっちゃうよ?」


「あの、クラスの男子と女子で別々のものやるっていうのはダメなんですか?さっきから言ってますけど、あんな人たちとはしたくないんですよ」


「おう。俺らもそう思ってたとこだ!女子なんざいなくてもどうとでもなるわ!」


さっきから皐月ちゃんと言い合ってる男の子の名前は知らないけど、周りの女の子の反応を見てる限り、皐月ちゃんに賛成の子達が多いらしい。


私は別にどっちでも良い。

元々文化祭とかにはあんまり積極的に参加する方じゃなかったし…。


いつも周りの人に言われたことをやってただけで、当日は適当に回ってから帰るみたいなことしかしてなかったし…。


「じゃあ僕は女子の方についても良いかな?山村さんの言ってることはもっともだと思うし、男子がみんなバカだと纏められるのは納得いかないからね」


唐突にそう言って来たのは、雫ちゃんが嫌ってるあの男の子だった。

大きなあくびをした後、眠そうに目をかきながら雫ちゃんの方を見た気がした。


私個人的にはあの人とは…やりたくない。雫ちゃんが嫌ってるし…。


「じゃあ俺も女子の方につこう。男子の大多数がその子の言う通りバカなのは認めるけど、一緒にされたくないのは俺も同じだ」


少しだけイラつきながらそう言った人は、もう言わなくても分かるかもだけど、美月ちゃんに告白してきたって人だった。

何人かの女の子は嬉しそうだったけど、皐月ちゃんは目に見えて嫌そうな顔をした。


どっちも名前は知らないけど、1人目の人とはあんまり関係がないからどうでも良いんだろう。


だけど、2人目の人は美月ちゃんに告白したって言うのがあって嫌がってるんだ。

確か…2人目の人は名前を聞いたような気がするんだけど…忘れちゃった。


「なんだよ!裏切んのか!?」


「裏切るもなにも、君のことを僕はよく知らないし、さっきも言っただろ?君達と一緒にされるのは嫌なんだよ」


「俺もだ。女子側が嫌がるのなら仕方ないと割り切るが、そうじゃないなら俺はそっちと一緒に準備がしたい。大体、これはお前達が招いたことだろ?自業自得だ。で?女子は俺達が加わるのは嫌か?」


そう皐月ちゃんの方を見て言った2人目の人は、笑いながらもう1人の男の子を見た。

私たち3人は嫌だけど、クラスの女の子達は多分みんな賛成するんじゃないかな。

2人とも期末で満点取ってたし…。


「私個人的には思うところあるけど、他の子達が良いなら私は別に良い。後、勘違いしないで欲しいけどまだ男子と女子で別れてするって決まったわけじゃない。あくまでそうしたいって言ってるだけだ」


「もちろん分かってる。だけど、クラスのほぼ全員が同意してるんだ。そうせざるを得ないんじゃないか?なぁ先生」


「本当はクラスみんなで協力して欲しいんだけどね…。みんながそれで良いなら、私から話は通してあげる。文化祭はあくまでみんなが楽しむものなんだから、私が口を出しても良いことないしね」


「それはありがたいですけど、先生としてはどうなんですか…」


「ん〜。ギリギリセーフなんじゃない?生徒思いの良い先生で通るかも!」


「いや通らないと思いますけど…。じゃあ、私たちは私たちで勝手にして良いですか?」


「ちゃんと休憩は取りなさいね?じゃあ、女子は前の黒板、男子は後ろの黒板を自由に使って良いから、各々テーブルをくっつけるなりして話し合い初めて〜。6時間目が終わるまでになにをするか決めてね?」


それから女の子達は、私たちの近くにみんな集まって話し合いを始めた。

雫ちゃんがあの嫌いな男の子をずっと睨みながら、机の下で私の手を握って来てたから、私は話し合いに全く集中できなかったけど。


このクラスはどっちかといえば女の子の方が少ないから、出来ることには限界がある〜。みたいなことを皐月ちゃんが言ってたのは聞こえたけど、それ以上は全く聞いてなかった。


◇ ◇ ◇


「まず、16人で何ができるかだ。あんまり大掛かりになってくると、人手が足りない。小田川だっけ?力仕事できそうな奴が1人しかいないって言うのも少しきついし、料理系の屋台が一番無難な気がするけど、どうだ?」


美月がいたら全部丸投げできたのに…と少しだけ憂鬱になりながらも、なんとか話を始めた。


流石にクラス全員の顔と名前が一致しないから、進行が大変だけど言い出したのは私なんだから仕方ない。


「私はパンケーキとかで良いと思うんだけど、みんなはどう?そう言うのが得意じゃない子はサポートに回ってくれれば良いし、確か文化祭は2日か3日あったはずだから、店番も日で分ければ文句ないでしょ?」


そう言ったのは、女子の中で多分一番目立つ存在の霜月あかりだった。

私でも流石にこの子は知ってる。無駄にイラストが上手くて、最近髪の色を変えた人だ。


噂だと、美月に告った小田川って人のことを狙ってるらしい。私はどっちにも興味ないけど。


「私たちは別になんでも良いから、さっさと決めて欲しい。文化祭にはどうせ出られない。準備は手伝えるけど、当日は出れない。決まったのに従う」


「あ〜卓球部はそん時大会かなんかでいないんだっけ?分かった。で、そこで寝てるやつも異論なしで良いのか?」


近くの席に座って堂々と寝てたやつにそう言うと、眠そうにうなづいた後、再び眠ってしまった。


凛と同様、自由だな…。あの子はあの子でまだ帰ってこないし…。戻ってくるのめんどくさくてゲームでもしてるのか?

帰ったらちゃんと話聞かないとだな…。はぁ…。


文化祭ではパンケーキ屋をするってことで案外簡単に決まったけど、よく話を聞いてみると、料理が得意な人が私と美月を含めて数人しかいなかった。


みんな、必要最低限はできるけどそれ以上はしたことないらしい。まぁその気持ちは分かるけどさ。


「じゃあ、担当する日はまた今度決めるとして、後は料金のこととか材料のこととか、できる限り今日で決めとかないか?そっちの方が今後楽だろ?」


「そうね。じゃあ今度誰かの家で試しに作ってみるとして、後1時間あるし色々決めちゃおっか」


そこからは霜月さんに進行をパスして、私は色々意見を出す側にチェンジした。

予定通り大体のことは決まって、先生に今日決めたことをノートにまとめて提出に行くと、男子側は何をするかまだ決まってないらしく、少し呆れた。


出来るだけ紅葉と美月を一緒に居られるように考えないといけないし、出来るなら緑川を引き離すようにしないといけない。

はぁ…。文化祭も色々考えないといけなさそうだなぁ…。

次回のお話は9月1日の19時に更新します。


次回はチョロっとあの先輩達が出てきます〜。

文化祭は色々書きたいことがあるので、頑張ります!

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