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第76話 複雑な感情

今回のお話は雫ちゃん視点でのお話になります。


今回で夏休みのお話は終わりです〜。

春奈先輩の誕生日会から紅葉ちゃんを救出して2人で近くの公園で休んでいる時、顔が赤くなっている恵先輩も公園に入って来た。

ブランコに座って落ち着こうとしてる先輩は、多分私達と同じ理由で帰って来たんだろう。


向こうはこっちには気付いてなさそうだけど…紅葉ちゃんはさっきから顔を覆ってため息ばっかりついてるから今は離れたくないし…。


「ねぇ雫ちゃん…。どう思う?あの先輩達…」


「紅葉ちゃん?大丈夫なの?」


「うん…。まだちょっとあれだけど、なんとか大丈夫にはなって来た…」


紅葉ちゃんは私と違ってすごく純粋だから、あの2人のあんなところを見せられたら耐えられないんだと思う。

私は普段からそう言うことを書いてるから少しは耐性があるけど、正直現実で見ると結構刺激が強い…。

耐性がない紅葉ちゃんはなおさらだと思う…。


「普通人前であんなことできる!?私絶対無理!」


「私も…ちょっと恥ずかしいかな。経験はないけど…」


「へぇ〜経験ないんだ...。そういえば聞いたことあったっけ?雫ちゃんの好きな人の話」


「え!?いや…話したことはないと思うけど…」


大体、好きって自覚したの最近だし、紅葉ちゃんが好きなのにその本人に恋愛相談とか…絶対無理!


そもそも、紅葉ちゃんは恋愛相談とかしてもあんまり頼りにはならないと思う…。するなら皐月さんかな?

いやでも…あの子は多分奥田さんの味方だろうし…。


「雫ちゃんのタイプって聞いてもいい?」


「え!?なんでまた急に…?」


「え〜なんとなく?深い意味はないけど…なんか聞きたくなって!」


確か…何かで読んだことがあるけど、相手に好きな人がいるかを聞くときは…相手に好意がある!とかだっけ?

でも紅葉ちゃんの場合…っていうかこれ、相手が異性の場合であって、同性の場合は意味ないんじゃ…。


誕生日での相性診断とか、そういうのはしたことあるけど…ああいうのもあくまで異性との相性であって、同性だと意味ないのかな…。


「私のタイプ…。特に考えたことはなかったけど…」


強いていうなら、紅葉ちゃんみたいに可愛くて、どこか天然で、目を離せないくらい危なっかしい人?

いやそんなに正直に言ったらバレる…。もう少しなんかこう…隠してというか…。


鈴音先輩ならストレートに春奈!とか言うだろうけど、私には無理だし...。


「強いていえば…優しい人?」


「優しい?ふ〜ん…。なら!明日から私優しくなる!」


「ん!?なんでまた?」


「え?なんとなく…?あ〜!あれ恵先輩じゃない?ちょっと行ってくるね!」


そう言って恵先輩に手を振りながら走っていく紅葉ちゃんを見ながら、私は心臓が張り裂けそうなくらい動いていた。


だって!優しい人がタイプって言ったら、急に明日から優しくなるって言い出したんだよ!?

私じゃなくても色々想像するでしょ!?


なんだか楽しそうに恵先輩と話してる紅葉ちゃんを見ながら、私はドキドキが止まらなかった。

ないと分かってるけど、前に紅葉ちゃんが男の人が苦手って言ってたこともあるし…もしかしたらって考えるじゃん!?


現に、奥田さんは紅葉ちゃんのことを好きみたいだし、紅葉ちゃんもそっちの可能性は…あるかもじゃん!

そうだったら、私のことを好きになってくれないかな…。って考えても別にいいでしょ?


「一般的には男子と女子が付き合うのが普通…。同性のカップルは…先輩達みたいにいないことは無いんだろうけど、珍しいってことくらいわかる…。自惚れてるわけじゃ無いけど、あの…なんだっけ…。思い出せないけど、鬱陶しい人は多分私のことが好きなんだろうし、ある意味そっちが普通なのかもね…」


遠くのブランコで先輩と話してる紅葉ちゃんには決して聞こえない独り言を言ったところで、少しは冷静になれた。


別に同性同士が好きになっても、先輩達がそうであるように、それは別に変なことじゃ無い。

ただ、告白とかそう言うことをするってなった場合、相手が私や奥田さん、先輩達みたいに同性の人が好きなタイプの人じゃ無いと、少なくとも私は告白にはふみきれない。


自分の好きな人に、私は友達と思ってたけどあなたは違ったんだね…。なんて思われたりしたら、生きていけない自信がある…。

私には色仕掛け?とかそんなことをして、紅葉ちゃんに私のことを好きになってもらうなんてことは出来ない。


そもそも、私にはそんな技術も、勇気も、肝心な魅力もない。


そんなネガティブなことを考えていると、たくさん話して満足したのか、紅葉ちゃんが走りながら帰って来た。

すっかりさっきの誕生日会の時の恥ずかしさは無くなったらしい。


「何話してたの?」


「え…えっとね〜先輩達のこと!お似合いだね〜って!」


「…。そう。そろそろ帰る?」


「うん!帰ろ〜」


恵先輩と鈴音先輩達の話をしてたって言うのは嘘だってわかるけど、紅葉ちゃんは楽しそうだからそれはそれでいい。

私が1人で何をしてたか聞かれても答えられないのと同じように、紅葉ちゃんには話したくないことがあるのかもしれない…。


今日は紅葉ちゃんに可愛い!って言われただけで得した日だし…。


そういえば、私達って朱音先輩の案内でここまで来たから、よく考えたら帰り道がわからない…。

そりゃ、一回朱音先輩の家までバスで行って、そこから電車で帰れば帰れるけど…。


「ねぇ…。そういえば、雫ちゃん帰り道知ってる?」


公園から出たところで、紅葉ちゃんもそのことに気付いたのか、不安そうにそう聞いて来た。


この子は、こういうチワワみたいなうるうるした目が可愛くて…どうしようもないくらい可愛くて好き…。

不意になんだか抱きしめたくなるような…頭を撫でたくなるような可愛さ。


その衝動をなんとか抑えて、極めて冷静に、あくまでも紅葉ちゃんにはそう見えるように振舞った。


「一旦公園まで戻ろうか…。私もここら辺初めてだから調べないと分からないし」


「分かった。今度は雫ちゃんがいて助かった…。この前みたいに迷子になるのはもう…」


「ん?この前?」


「えっと…。この間、朱音先輩の家にお見舞いに行ったって言ったじゃん?その時、帰り道が分かんなくて迷子になっちゃって…」


「ちょっとその話詳しく…」


公園に戻ると、すでに恵先輩はいなくなってたけど、私と紅葉ちゃんはさっきと同じベンチに座って、迷子になった話を詳しく聞いた。

そうすると、考えてた通りの最悪な展開で終わっていた。


「それでね?全く知らない商店街?確かそんなところに迷い込んじゃって、そこにたまたま通りかかった美月ちゃんと会ってね!?家まで送ってもらったの!」


「そう…。とりあえず、帰り道がわからなくなったら私か皐月さんに電話して?たまたま通りかかってくれたから良かったけど、奥田さんがいなかったら本当に危なかったんだからね!?」


「うん…。それ皐月ちゃんにも言われた…。まず誰かに電話しろって…」


「はぁ…。皐月さんも私に教えてくれればいいのに…」


まぁ、明らかに奥田さんのポイントになるような話だから黙ってたってことかもしれないけど…。

その出来事で紅葉ちゃんが奥田さんを好きになった可能性は…多分ない…?

紅葉ちゃんってそういうことがきっかけで人を好きになるってタイプには見えないし。


どっちかっていうと…いつの間にか好きになってたとか、告白されて初めて自分の気持ちに気付くとか…そんなタイプな気がする。

恋愛経験値ゼロの私の考えだけど…。


「こうなると…紅葉ちゃんを助けてくれたって解釈するべきなのか…ポイントを稼がれたって解釈するべきなのか私じゃわからない…」


「ん?何か言った?」


「ん?いや…本当に紅葉ちゃんを1人にすると危険だな〜って」


「そうだけど〜!でも、昔はそんなこと全然無かったんだよ!?ここ最近になって、本当に急にそうなったんだって!」


「全く信じられないけど…はぁ。とりあえず帰り道調べるからちょっと待ってて」


横で不満そうに唸ってる紅葉ちゃんは無視して、帰り道を調べてみると、以外にも近くに駅があった。

そこから電車で30分くらいしたら帰れるらしい。

意外と近くて良かったと思いながら、まだ拗ねてる紅葉ちゃんの手を握って歩き出した。


まだ少しだけ恥ずかしいけど、鈴音先輩達のせいでだんだん慣れてきた。

っていうか、あの先輩達を見てると手を繋ぐだけならなんの問題もないような気がして来た。

人前でキスなんてする人達だし…。


「ねぇ雫ちゃん。今度美月ちゃん達も誘ってどこか行かない?夏休み中にもう一回!」


「どこかって?」


「えっと…遊園地とか…?」


「それ、今日結奈先輩と恵先輩が渡してたプレゼントに影響されてるでしょ…。私は良いけど、行くならあの2人と行く日が被らないようにしないとダメよ?」


「うん!それはもう!もちろん!」


少しだけ顔を赤くしながらそう言った紅葉ちゃんは、またさっきの鈴音先輩の家であったことを思い出してしまったんだろう…。


咄嗟に目を隠してガードしたけど、ちょっとだけ見えてしまったらしい…。

先に帰ってしまった沙織さんも似たような感じだったし。


「でも…凛さんと皐月さんは来れないかもよ?」


「え?なんで?」


「美月さんはいざとなったらこっちに来ると思うけど、凛さんが今月末にまた大会に出るって皐月さんが言ってたし」


「あ〜だから最近会えないのかな?じゃあどこかにみんなで行くなら夏休み開けてからの方が良いかもね…。残念…」


一瞬、私達2人で行かない!?と言いかけたけど、なんとか堪えることができた。

そんな事を言ったら、どう考えても変だし…。


いや、友達同士だと変じゃないかもしれないけど、紅葉ちゃんが好きな私としては、色々変に考えてしまうから…。

危険は避けた方が良い。好きな人のことになると、いつもの自分を見失うって誰かも言ってたし…。


「じゃあね紅葉ちゃん。また今度」


「うん!またね〜!」


紅葉ちゃんの家の前まで送っていこうとしたけど、なぜか駅までで良いって言われてしまって駅で別れた。

時間はまだ16時30分くらいだったけど、色々ありすぎて今日は大変だった…。


家に帰った私は、夜に皐月さんから電話がかかってくるまで疲れて眠っていた。

前は頻繁に電話やメッセージをやり取りしていたけど、最近は忙しいのかそういうこともなかった。


だから、電話の音で起きて表示されてる名前を見たときは結構驚いた。


「はい?もしもし」


「あ緑川さん。私だけどさ。最近紅葉どうだ?」


「どうって言われても…別に普通だけど…どうしたの?」


「いや別に。それでさ、美月が急に文芸部に入りたいって言い出したんだけど、大丈夫か?」


「はい!?いやそれはまたなんで?」


「それは知らないけど…夏休みあけに入れるようなら入りたいから、部長さんに話しといてくれないか?多分私も入ると思うから、大丈夫そうならまた連絡くれ」


それだけ言うと、皐月さんは電話を切った。

なんだか、あのプールの日から皐月さんはどこか変わった気がする。

どこか怖くなったと言うか、前よりしっかりしてると言うか…?


でも、それより問題なのは美月さんも文芸部に入りたいと言ってること…。

絶対距離を縮めようと狙ってるし、皐月さんはそのアシストで入りたいって言ってるんだと思う…。


どうにか対策を考えないと…。とりあえず、今日は朝までいろいろ考えないと!

次回のお話は8月23日の19時に更新します。


最近暑すぎて体調を崩しているので、皆様もお気をつけくださいm(_ _)m

近々、色々挑戦したお話が出ます〜!

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