第75話 誕生日会の夜
今回のお話は春菜ちゃん視点でのお話になります。
このお話の後しばらく2人だけのお話は無いと思います。
その代わり、結構気合を入れて書いたので楽しんでいただけるとm(_ _)m
先輩達が帰って、誕生日会の後片付けも大体終わったのは6時過ぎだった。
鈴音先輩は手伝わなくていいと言ってくれたけど、私のために用意してくれたんだから無理を言って私も手伝わせてもらった。
本音で言うなら、休んでると嫌でもさっきからかわれたこととかを思い出して、恥ずかしくなるから何かして気を紛らませていたかっただけなんだけど…。
「ありがと春奈。意外と早く終わったな」
「いえ…。嬉しかったので…」
「それは良かった〜。それでさ!嬉しかったって言うのはなにが!?」
「え…いやあの…誕生日会開いてもらったこととか…」
「その他のことは?嬉しかった!?」
ニコニコしながらそう言ってくる先輩の姿を見て、他のことがなんの事を言ってるのか大体察した私は、主に返り討ちにあった時のことを思い出して耳まで真っ赤になった。
今までで一番ってくらい笑顔の先輩は、私の態度で満足したのかトイレの方に行ってしまった。
正直誕生日会も、先輩の言う他のことも嬉しかったけど、私が耐えられる容量をこれ以上ないってくらいオーバーしてる....。
今自分の家に帰ったら真っ先にベットにダイブして明日の昼まで寝てる気がする…。
そして、翌日にまた先輩が家に来て誠也が照れて…私が嫉妬して〜って流れになるところまで容易に想像ができる…。
「春奈〜私お腹すいてないんだけど、お腹すいてる?」
トイレからハンカチで手を拭きながら帰って来た先輩は、少しだけ頬を染めながらそう言ってきた。
なんで顔が少し赤いのかはわからないけど、この後のことでも考えてたのかな…。
「私も別にすいてません。そういえば先輩、ドアのところにあったやつはなんですか…?」
別にケーキやお菓子を食べたてたからお腹はすいてなかった。
ただ、この家に来た時からずっと気になっていたことについて聞いて見ることにした。
先輩は小学生の頃に引っ越してるけど、また同じこの家に帰って来た。
だから小学生の時に書いたやつだったらそのまま残っててもおかしくはないけど…。
「ん?ドアのやつ…。なんのことだ?」
「なんか私の家!みたいなこと書いてましたよね…」
「あ〜それね…」
恥ずかしそうに頬をかいた先輩は、かなり恥ずかしそうにそのことを話し始めた。
「私一回この家引っ越してるだろ?で、引っ越す前に親に気付かれないように書いたものがそのまま残ってるんだよ…。戻ってきた時にこの家に誰も入らないように…。みたいな感じで書いたんだと思う。あの頃はどのくらい引っ越すのか具体的には決まってなかったからな」
「先輩子供みたいですね…」
「仕方ないだろ!?子供だったんだから!」
「いえ…。いつも私よりしっかりしてた先輩にもそんな一面があるんだな〜って」
「しっかりしてたって言ってもなぁ…。そりゃ春奈より年上だからしっかりしてるように見えただけだと思うぞ?」
苦笑いしながらそう言った先輩は、当時を思い出してるのかソファに座ってため息をついた。
私も隣に座って、一緒に当時を思い出していた。
あの頃はただ純粋で、今みたいにからかわれる事なんてなくて、よく一緒に遊んでいただけだった。
「そういえば、私は先輩がいなくなった後、何日か泣いてた記憶があるんですけど。あの頃から好きでしたし...。先輩はそんな事無かったかもしれませんけど…」
「そうだな〜。私は泣いたりしなかったな〜。お嫁さんにしてください!って言われて嬉しかったからかな〜?」
「ちょ!そのことは忘れてくださいって言いましたよね!?」
「あ〜!ちょうどその頃の写真あるから持ってこようか?」
「本当にやめてください…。見たくないです…」
部屋まで取りに行こうとする先輩の腕を掴んで必死に止めると、笑いながら
「冗談だって〜」
って言ってたけど、私が止めないと本気で取って来るつもりだったのはわかる…。
しかも、今日朱音先輩にもらったアルバムに入れるとか言いそうですごく怖い。
多分私の家にも当時の写真がアルバムの中にあるけど、そんなの絶対に見たくない。
当時の私は、今より全然可愛くなくて、どっちかと言うと男の子っぽい元気な女の子だった。
「別に気にしないでもいいと思うけどな〜。あの頃の私も別に可愛くはないだろ?」
「いや…先輩は今も昔も可愛いですよ。私が可愛くないだけで…」
「ん?今も昔もなんて?」
「え!?あいや!忘れてください!」
つい本音が漏れてしまったことで、先輩が急激に笑顔になってしまった…。
今にも抱きついて来そうなくらい顔が近いし…。私のバカ!
「なぁ〜もう一回言って!今も昔も?」
「何回も言わないでくださいよ!
「え〜?当時も可愛いって思ってくれてたんだ〜。へぇ〜」
「私もう帰っていいですか…」
「ダメに決まってるじゃん〜。楽しいのはこれからこれから〜」
そう言いながらソファの上なのに密着して来る先輩に、今日のことがあってすでにいっぱいいっぱいな私は、体全体が恥ずかしさで暑くなってきていた。
こんな話をしてると、いつの間にかもう7時を過ぎていた。正直、私はここで寝て先輩とは違うところで寝たくなってきた。
「この後どうする?一緒にお風呂入って〜ゲームでもして寝る?」
「いやちょっと待ってくださいよ!一緒にお風呂なんて入るわけないじゃないですか!」
「なんのゲームする?私結構持ってるぞ?」
私の方を見向きもしないで、テレビの下の棚からいろんなゲームソフトを取り出して何をしようか迷っている先輩に少しだけ呆れながら、私は震えた声で反論した。
さすがに一緒にお風呂なんて無理…。ただでさえもう限界なのに…。
「いや話聞いてますか…?一緒にお風呂なんて入らないですからね…?」
「え〜!?入ってくれないのか…?」
「むしろなんで一緒に入ること前提なんですか…。この前は恥ずかしいって言ってたじゃないですか!」
「春奈の誕生日だし?私と同じ歳になったんなら大丈夫かなって?」
「先輩の恥ずかしい基準が全然分からないんですけど…。一緒の歳なら大丈夫で、一個下ならダメってどう言うことですか…」
「ん〜。気分の問題?」
大真面目に首を傾げながらそういう先輩を見て、思わずため息が出てしまった。
なんとか一緒にお風呂に入ることは回避できたけど、この後も何か変なことを言いそうですごく怖い…。
一緒のベットで寝ようって絶対言ってくるし…それを強く言われたら私は反対できなくなるってこともちゃんと分かってるし…。
「上がったぞ〜。次どうぞ〜」
パジャマ姿で髪の毛をタオルで拭きながら部屋に戻ってきた先輩は、なんだか色っぽかった。
パジャマは私の家に泊まりに来た時と同じなのに、なんだか別のものに見える。
「なんだよ〜。そんなに見つめるなって〜」
「別に見つめてません!変なこと言わないでくださいよ....」
「へ〜?じゃあ私は春菜のお風呂上がりしっかり見てもいい?」
「だから変なこと言わないでくださいって!はぁ...」
私がお風呂から上がった時、先輩はテレビで先に2人でやると決めたゲームをしてたけど、私を見ると一旦ストップしてわざわざ走って寄って来た。
私のパジャマ姿も一回見てるはずなのに、すごい笑顔で抱きついてくるから…色んな意味で恥ずかしくなる…。
先輩からはいつも先輩から漂ってくる匂いがしてなんだか落ち着くけど…抱きつかれてるから心臓がうるさいくらいなる…。
しかもすっごい見つめてくるし...。
余計に恥ずかしい。
「ん〜。照れてる春奈めっちゃ可愛い!」
「そんなことわざわざ言わないでくださいよ!余計恥ずかしいです!」
「分かった分かった〜。ほら一緒にやろ!」
恥ずかしかったけど、一緒にゲームをしてる間だけそんなことが気にならなくて、一時休憩みたいな感じになった。
夜中の11時までやってるくらい楽しかったけど、やっぱり一緒に寝よう!と言われて断りきれなかった私は、見事にこの前見たく先輩の隣で寝ることになった。
「なぁ春奈〜」
「なんですか?先輩…」
向かい合ったまま寝ることを条件に、寝てる間は何もしないことを約束をしてもらった。
だけど私は、先輩の顔が目の前にあるとどうしても緊張するからと言う理由で早く眠ろうと目をつぶった。
でもその直後に、先輩が渡したいものがあるって言いながら小さめの箱を枕の下から取り出した。
「改めて…誕生日おめでと!」
「いつも急なんですよ…。プレゼントのこと忘れたのかと…」
「ごめんごめん。いざ渡すってなると恥ずかしくてさ…」
「開けていいですか?」
「うん…」
その箱を開けて見ると、小さな首飾りが入っていた。
先輩の方を見て見ると、恥ずかしそうに笑って
「お揃いだな…」
普段はさっきみたいにずっと面白がって私をからかってくるような人が、こんな時だけ恥ずかしそうにしてるのに今日1日の恥ずかしさとか、嬉しさとかが爆発して、思わずベットの中で抱きしめてしまった。
先輩がよく、私が可愛すぎて…。なんて言うけど、今の先輩を見てるとなんとなくわかる気がして来た。
「ちょ…!春奈?」
「今日1日のお返しです…。今日はありがとうございました…」
「ふ〜ん…。じゃ…そろそろ」
「離しませんよ…。このまま寝るんです…」
慌ててる先輩が可愛くて、逃げられないように少しだけ強く抱きしめてから眠りについた。
そんな私は、翌日起きた時に今の状態を見てすごく慌てて後悔することになるけど、それにはまだ知らないことだった。
次回のお話は8月20日の19時に更新します。
普段受けに回ってる春菜ちゃんが、攻めに転じるところ!私こういう展開結構好きなんですけど皆さんはどうですか?
現実の夏休みも、この物語での夏休みももうすぐ終わります。
夏休みが終わったら、本格的に物語が進んでいく予定(あくまで予定)です!