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第69話 先輩の目的と少しの嫉妬

後半部分だけは今まででかなり自信があるんです!

お楽しみいただけたら嬉しいです!


今回も春奈ちゃん視点でのお話になります。

「春奈…。もうちょっとここで休んで行こ…」


「そんなに怖かったならやめとけば良かったんじゃ…」


上映が終わった後、私達は映画館から出て近くの公園まで来ていた。

意外にも、上映中に何か先輩からされたとかそんな事はなくて。いや厳密にはあったんだけど、そんな思ってたような事はなかった。


ただ、上映中ずっと震えながら私の手を必死で握りしめていた先輩は、すっごい可愛かった。

いつもあんなに元気?な先輩が、余裕をなくして震えてて、しかも私を頼ってくれてる姿なんて可愛すぎる!

そのせいで映画の内容が全く入ってこなかった私は、先輩とは違ってケロッとしていた。


「今日も一緒に寝てね…」


「え…いや私は今日床で寝ますけど…」


「やだ!春奈が隣にいないと怖くて寝れない!」


「またそういうこと言う!分かりましたよ…。昨日みたいな事は無しで!」


「うん!ありがと!」


さっきまで涙目だったのに急に笑顔になった…。まさか…全部演技?

ちょっとどころか、すっごい可愛い!って思ってた私の純粋な心を返して欲しい...。

涙目で上目遣いの先輩を見た時、もう本当に可愛い!って思ったのに。


「怖かったのは本当だけど…春奈が優しくて嬉しかったんだよ〜」


「昨日の件でもう一緒に寝てくれないと思ったから急にホラー映画見たいって言い出したのかと思いました…」


「まぁ…それは〜あるけどさ…」


「あるんですか…!?もう色々損しました…」


「ん?もしかして可愛いって思った!?本当に!?嬉しいなぁ〜!」


子供みたいにはしゃいだ先輩は、座ってたブランコを急に漕ぎ出し、笑った。

それこそ、制服を着てなかったら一瞬、小学生の女の子がはしゃいでるようにすら見える光景だった。

なんだか…そんなにはしゃがれるとこっちが恥ずかしくなってくるんですけど…。


「なぁ春奈〜。この後ゲーセン行こうって話してたけどさ〜もう一本映画見るか〜?今度は怖くないやつ!」


「嫌です!今度は何かされそうですし…」


「じゃあもうちょっと休憩したらゲーセンだな〜。でもさ、怖かったのは本当なんだからな?」


「分かってますよ…。震えてたじゃないですか…」


「映画館の中での春奈、ちょっとカッコ良かったぞ!」


そう笑顔で言われた瞬間、私の顔は一気に真っ赤になっていった。

さっきまでは大丈夫だったのに、そう言われた瞬間急激に今までのことが恥ずかしくなってきた。


上映中、震えながらも必死にスクリーンを見ていた先輩の隣で、私はずっと先輩が握りしめてくれてた自分の左手と、スクリーンを眺める先輩の顔をずっと眺めていた。それがこの上なく恥ずかしい…。


「よし!だいぶ落ち着いてきたし、行こうか!」


「は…はい…」


「ん?どした?顔赤いぞ?」


「なっ!なんでもないです!」


先輩のこのニヤケ顔を見ていると、私がこうなってる理由も全部見透かされている気がする。

実際、半分くらいは見透かされてるような気がするんだけど…。


それから、やっぱり恋人繋ぎで近くのゲームセンターまで歩いた私達は、予想以上にお店が小さくてビックリした。

クレーンゲームしかないタイプのゲームセンターで、マップアプリで検索しただけだった先輩は、結構がっかりしてた。


自分がクレーンゲームあんまり得意じゃないからこんなにがっかりしてるんだと思う。

わたしもそんなに得意なわけじゃないけど、でも商品をすごく欲しそうに眺める先輩も可愛い…。


「そういえば春奈の誕生日ってもう直ぐじゃなかったか?」


「えっと〜今日が8月の8日なので〜後1週間弱ですね」


「プレゼント何がいい〜?なんでもいいは無しな!」


「急ですね…。そう言われても…欲しいものってあんまり無いんですよね。元々本以外あんまり買う方じゃ無いので…」


「なら〜誕生日わたしの家で誕生日会でもするか?結奈達も呼んでさ!」


「なんか…そのまま泊まって行くって流れになりそうですっごく怖いんですけど…」


「そんな事にはならないって〜。多分?」


「多分!?多分って言いましたよね今!」


「とにかく、決定な〜!」


楽しそうに笑って私の意見なんて聞こえないふりをしてる先輩は、少しだけ顔が赤くなってるように見えた。

今までの私の誕生日の中で、一番楽しくて、一番色々と我慢するのが大変な1日になりそうだなぁ〜とこの時思った。


先輩の家に泊まるって話が何日か前に出たばかりだから、余計その可能性が高い気もするけど…こうなった先輩はもう止められないって事くらい、付き合いがすごく長い私は知ってる。


「それにしても〜今日も何枚か撮りたかったんだけどなぁ〜」


「何をですか…?」


「ん〜?これ。これ撮ってる時の春奈めっちゃ可愛かったからさ!もう一回見たいな〜って!」


そう言いながら財布の中から出て来た一枚の写真は、この前先輩とゲームセンターに行った時に撮った写真だった。

この時は確か、まだ告白するなんて考えてなかった頃だったなぁ…。

私も同じ写真をお守り代わりに財布に入れてるけど…先輩もなんだ。ちょっと嬉しい。


「ほら!凄い恥ずかしがってる春奈可愛いだろ!?」


「それ本人に言いますか!?普通…」


「あ〜あのぬいぐるみ可愛くないか!?」


「露骨に話題変えるのやめませんか…。本当にもう…」


顔を少しだけ赤くした私は、目の前で気に入ったらしいぬいぐるみを必死で取ろうとしてる先輩を眺めながら、やっぱりこの先輩には勝てる気がしないと思った。

私はそんな事、それこそ先輩が寝てる時とか、聞いてないところでしかいえないけど先輩は今みたいに平気で私の前で言ってくる…。私には、絶対に無理。


結局2000円と散財しながらも、ようやく取れたクマの少しだけ大きいぬいぐるみを大事に抱えながら、先輩と私はそのゲームセンターを後にした。そのまま同じ電車で同じ家に帰って来た私達は、部屋に戻るなり急いで着替え始めた。


制服デートなんて初めてしたけど…恥ずかしすぎてもうしたくないと思った。少なくとも休日とかは…。


「またやろうな!」


「せめて放課後にしませんか…。休日だと色々あれじゃないですか…」


「してくれるなら放課後でもいいぞ!あ、今日は春奈の作るご飯が食べたい!」


「そんなこと言われても…今日は誠也(せいや)が冷やし中華が良いって言ってたからそれになりますけど…大丈夫ですか?」


「うん!待ってるな!」


笑顔で手を振りながら見送られた私は、妙に張り切って台所まで向かった。

すると、意外にもリビングでいつもテレビを見ながらダラダラしている誠也が、今日は作るのを手伝ってくれると言い出した。

急にそんな事言われても…なんかちょっとだけ気持ち悪いんですけど…。


「ひっでぇ言い方。別に良いだろ。てか、夜中までイチャイチャすんのやめてくんね?隣なんだからちょっと声聞こえるんだけど…」


「別にイチャイチャなんかしてません〜!」


「ちょっと笑ってんじゃん。キモチワリィ…」


「うるさいなぁ…。良いでしょ別に。ほらそれこっちに持って来て」


別に夜中までイチャつこうなんて私も考えてないけど…昨日は先輩のテンションが高かったり、お風呂上がりの私に色々言って来たせいで結果的にそうなってしまっただけで…。今日はそんなことがないように気をつけるから…。

先輩のテンションは昨日より格段に高いような気もするけど…。


「俺また二階で食べたほうがいいか?」


「むしろこっちで一緒に食べなさい。誰かがいないとすぐ暴走するから」


「俺がいても暴走するときゃする気がするけどな。見てた感じ」


全くその通りなのがまたなんともいえない。

実際、今日も街中でも遠慮なくからかって来たし…。誠也がいても平気で何か言ってくるかもしれない…。

まぁ、少しは抑制になってくれる…はずだし。


その後出来上がった料理をテーブルに運んで、誠也にも変なこと言わないでと釘をさしてから先輩を呼んだ。

上から鼻歌を歌いながら降りてきた先輩に、誠也は何故だか顔を少し赤くしていた。


「どうですか…?先輩」


「ん〜。美味しい!」


「良かったです…」


「あ、そういえば弟君って今年受験だったよね?どこの高校に行くの?」


「あ…俺は姉ちゃんと同じ所で良いかなって思ってます。別に特に行きたい高校とか無いんで」


「へ〜。勉強で分かんないことあったらなんでも聞いてくれて良いからな〜」


「ど…どうも…」


なんであんたが照れてんのよ…。いや確かに先輩可愛いけど…なんであんたが照れてんの?

別に嫉妬とかじゃ無いけど!なんかモヤモヤする!


ご飯を食べ終わった後もその気持ちが収まらずに、先輩がお風呂から上がった後までそのモヤモヤは続いていた。

当然先輩は私のその気持ちに気付いてたらしく、お風呂上がりでいつもとは違うけど良い匂いがする先輩が優しく抱きしめてくれた。

それだけで、さっきまでのモヤモヤが全部晴れて行くのを感じた。


「ごめんな。これで許して…」


「ずるいです…。先輩は…」


しばらくそうしていると、自然と涙が溢れて来た。

別になんてこと無い、そんな会話なのに自然と涙が溢れてしばらく止まらなかった。

私が泣き止むまで、先輩は優しく抱きしめてくれていた。

お風呂の中で落ち着いた私は、どれだけ恥ずかしい事をしたか思い出して悶絶してたけど…。


「春奈…。今日はありがとな…」


「どうしたんですか急に…」


ベットに横になって、お互い向き合った状態で電気を消した後、唐突に言われた。

先輩は笑っていたけど、目は真剣だった。


「今日の事色々。付き合ってくれて」


「いえ…。私も…楽しかったですし…」


「そっか…。じゃ、おやすみ」


「おやすみなさい…」


私は無意識のうちに、先輩に背中を向けて目を閉じた。

多分、昨日のことがあって先輩と向き合ったまま寝ちゃうと、またろくに眠れないだろうなって思ったからだった。

その他にも色々理由はありそうだけど...。

ただ、すぐに後ろから抱きつかれて、それが正解だったことに気がついた。


「ごめん…春奈…。やっぱりちょっと怖いからさ…このままでいさせて…」


先輩に抱き枕のように抱きしめられていたその夜は、私にとっては多分一生忘れられない夜になった…。

次回のお話は8月2日の19時に投稿します。


次回のお話から19時の投稿になります。


更に、次は70話です!ここまで続けられてるのも読んでくださってる皆様のおかげです!

ありがとうございます!

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