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第65話 溢れる想いと子供の凜

今回のお話は皐月ちゃん視点でのお話です。


やっぱり私個人がこういうのがあった方が読みやすいと感じたのでこれからもつけていきます。

カフェを出た私は、横で楽しそうに紅葉と話す美月を見て誰にも気付かれないように小さくため息をついた。

今頃になって、なんでこんな事してるんだろう…。そう思ってしまっている自分がいた。


元々は数日前、私が美月と一緒にプールか海に行きたいと思ったのが始まりだった。

その時は私らしくなく、即決して紅葉に提案してしまった。

普段の私ならもっとよく考えてから結論を出したはずなのに、美月と一緒にプールに行けると思うとどうしても気持ちが高まってしまった。


去年は受験で行けなかったし、余計に行きたいって気持ちが強かったのかもしれない。

ただ、まず最初に美月に相談していればもしかしたら私と凛の3人で行けたかも知れない。そう考えると、どうしても後悔してしまう。


作戦会議で美月には紅葉とイチャつけって言ったけど…正直、それもして欲しくない。

流石にそんな事は言えないから、せめて私はその現場を見ないように凛と一緒にその場を離れる提案をしたんだけど、正直かなりきつい。今にも叫び出したい気分…。


「どうしたの皐月。顔色悪くない?」


「え!?あ…ああ。大丈夫。」


「そう?なら良いけど…無理しないでね」


そんなことを考えてると、さっきまで紅葉と話してた美月がいつの間にか隣で歩いてて心配してくれた。

今ちょうど美月の事で考え事してた!とかバカ正直に言えるわけも無い。もうこの事を考えるのはやめたほうがいいかも知れない。

変に美月に心配させるだけな気がして来た。


「それより、紅葉とはもう良いのか?」


「え…あ〜うん…。凛とあの子が話したそうにしてたし。それに、さっきのカフェからなんか皐月の様子がおかしいなって思ってたから」


「変か?別にいつも通りだろ?」


「紅葉ちゃん達が来たあたりからずっと何か悩んでるでしょ?どうしたの?」


「別に…何にも悩んで無いぞ?」


「…。皐月がそれで良いなら良いんだけど…皐月はすぐ無理するんだから困ったらなんでも言ってよ?出来るだけ力になってあげるから!」


自分の好きな人がこんな事を言ってくれて嬉しく無い人なんかいないだろう。私も例外なく、凄く嬉しかった。

目の前に美月や凛達もいるのに泣きそうになったし。


でも、悩んでた理由を美月に正直に言う訳にはいかない。友達として、美月の恋を出来るだけ邪魔したくは無い。


「ありがとな。でも大丈夫だから心配するなって」


「分かった。でも、これだけは覚えといて。私は、いつでも皐月の味方だから」


そう笑顔で言った後、美月は少し後ろの方を歩いてる集団の方に戻って行った。

私の目からは、少しだけ涙が溢れて来ていた。


あの事があった後も、美月は今と変わらぬ優しさで、泣いて謝った私を許してくれた。

気にしないで良いって...そう言ってくれた。

それで私の気持ちが落ち着いたら…どれだけ良かったか。更に罪悪感に押し潰されそうになってしまっただけだった。


時間が経った今、当時よりはだいぶマシにはなったけど、今でも時々罪悪感に押し潰されそうになってしまう事がある。


「バカだな…私…」


カフェを出て10分くらい歩いたところあるプールには、ある1人のせいで20分もかかって到着した。

そのある1人とは…カフェで泣きながら宿題をやってたのに、パフェが来た瞬間満面の笑みになったやつだった。


「え!?私のせいなの!?なんで!」


「じゃあ考えてみ?その右手の荷物はなんだ?散々後で買えって言ったよな私」


「あ…いや〜夕方には売り切れてるかも知れないなぁ〜って…」


「紅葉、緑川。ちょっと2人でお手洗い行ってくるから先行ってて。美月は…一緒に来るか?」


「行く訳ないでしょ…。程々にしなさいよ?」


「え!?ちょっと!私も一緒に行きたくないんだけど!絶対怒られる!」


「ほら行くぞ〜」


子供みたいに少しだけぐずりながらついて来る凛に、呆れながら私は一緒の個室に入った。

凛の右手には、今からプールって言ってるのにも関わらず寄り道して買った、袋に入ったゲームソフトが握られていた。


別に5分くらい待たされるのは慣れてるし別に良い。ただ、凛は限度を知るべきであって。


「ねぇ皐月…。今度から気をつけるからさ…あんまり言うのはやめない?」


「別にゲーム買う事自体は良いんだよ。ただな?5個も10個もまとめ買いしようとするのは違うよな?そこはどう説明するんだ?」


「え!?あ〜いや〜ここら辺大きいゲーム屋があるって聞いてさ!結構お金持って来たんだよね!」


「嬉しそうに言うな。説明になってないぞ…。私が一緒に行って止めなかったら店員の人ドン引きどころじゃ済まないぞ…。高校生がなんでそんなに爆買い出来るんだよってな」


「そうかな〜?普通じゃない?痛!もう叩くのやめない…?」


「お兄さんにちゃんと許可はもらってるぞ?とにかく、今度から気を付けろ。良いか?」


「ふぁい…」


涙目の凛と一緒に個室を出ると、ちょうど入って来た若い女の人に変な目で見られた。

別にそんなんじゃ無いんですけど…。


「あ〜おかえり。凛反省したの?」


「美月〜皐月なんであんなに怖いの!?今日いつもより怖いんだけど!」


「先に行ってくれてても良かったのに。悪いな待たせて」


「全然。紅葉ちゃん達は先に行ってもらったから。ほら凛涙拭きな?心配されるよ」


「皐月今日機嫌悪いの…?」


「ん?別にそんな事ないぞ?なんだその疑ってる目は…」


少ししてやっと泣き止んだ凛は、美月の手を離さずずっとくっつきながら入って行った。

この辺りじゃ一番でかい屋外プールってだけあって、入り口も更衣室もかなりでかい。


一番奥の方のロッカーで着替えてる紅葉達と合流して、私達も一緒に着替え始めた。

私達3人は少し前に買った新しい水着で、緑川と紅葉は前から持ってたやつを持って来たらしい。


こう…改めて見ると、美月以外全員比較的小さいな〜と思って少しだけ安心した。

凛は問題ないとして、紅葉か緑川が着痩せするタイプだったら…少しだけ悔しいし。


美月は、恥ずかしいからって露出が比較的少ないピンクと白がベースの水着を選んでいた。

私個人としては…正直露出が多いのは嫌だったから少しだけ安心した。


凛は興味が無いらしく、試着もしないで適当に赤い水着を選んで、ちょうど今焦っていた。


「え!?こんなに肌出るの!?だいぶ恥ずかしいんですけど!」


「どうでもいいとか言って試着しなかったからだろ…。自業自得だろ」


「ええ!?皐月のやつと交換して!」


「私だってそんなに露出多いの嫌に決まってるだろ…。我慢しろ」


かく言う私も、美月と一緒で露出が多いのが嫌だったからなるべく布面積が多い白の水着にして、上から羽織れる様な服もちゃんと持って来た。

凛はそれすら持って来てなくて、顔を少しだけ赤くしながら震えていた。


まぁ凛はいつもこんな感じだからほっといていいとして、美月にあんなこと言った私でも、久しぶりに見る美月の水着姿にだいぶドキドキしていた。

美月は紅葉の水着姿に見惚れてたからちょっとそこだけ微妙な気持ちになったけど…。


紅葉は白いフリフリがついた、お世辞にも私達と同じ歳とは思えないような幼い感じの水着で、緑川は水色と白のボーダーのやつで、凛の次に布面積が少なかった。


この中で一番露出が少ないのは紅葉だと思う。その次に美月が来るって感じ。

はぁ…。これからが一番きついって言うのに、ここでもかなりきついって…耐えられるかな私。


更衣室から出た私達は、辺りを見回して驚きの声をあげた。

夏休みだからそりゃ人は多いだろうけど、予想してたよりかなり人が多かった。


それなりにデカイプールだし、何箇所かに別れてるからそこまで混雑してないだろうなって予想してたけど…結構多い。


「うわ〜。結構多いね〜!」


「おい紅葉。さっきに言っとくぞ?絶対1人で行動するな。ここ結構敷地が広いから逸れたら結構めんどいぞ」


「え!?あ…うん分かった!」


「はぁ…。一応私が携帯持ってるから、何かあったら更衣室に戻って私の携帯に連絡すること。特に紅葉な。分かったか?」


「分かった!」


「じゃあ、私と凛は向こうに用があるから一旦別れるな。緑川〜一緒に行かないか?」


「え?私?別に良いけど…」


「よし。じゃあな〜」


紅葉がついて来る前にさっさとその場を後にした私達は、とりあえずさっきの場所から一番遠いエリアを目指して歩いた。

美月の方が大丈夫かどうかは分かんないけど、まぁなんとかなるだろうしどうせずっと紅葉と2人きりってわけじゃ無いから、少しの辛抱。


このプールに来た時から、もしくはここに来るって決まった時から私の試練は始まってるんだ。今日も…いつも通り…耐えれば良い。


「ねぇ皐月さん。私ここ始めて来たんだけど…どういうとこなの?」


「ん?あ〜ここは何個かのエリアがあるんだけど、その1つ。確かここは〜海賊エリアかなんかだったかな?私もそんなに来てるわけじゃ無いからな。で、あのデカイウォータースライダーが目玉らしい」


「へ〜。そういえば、なんであの2人とは別行動なの?」


「ん?それはな?凛が緑川と勝負したいことがあるらしくてさ。美月にはその間、紅葉が迷子にならないように見張っててもらってる。紅葉達巻き込むわけに行かないだろ?」


「ふ〜ん。それで…勝負って何かしら?」


「え!?あ〜えっと…。あ!あのウォータースライダーでどっちが早く滑れるかってどう!?」


やろうとしてる事が子供すぎる…。率直に今思った事を言うならそれだ。

確かに、勝負させるとは言ったけど内容は凛に任せていた。

ただ…今の様子だと、何も考えてなかったな?思いついた事適当に言っただけだろ。


緑川もそう思ったのか、明らかに怪訝そうな顔をした。それでも乗ってくれたのは、緑川が案外優しいからだろう。


色々不安もあるけど…この後私も美月と一緒にあれを滑ることになってるんだから…それまで我慢すれば良い。

今頃いちゃつきながら楽しそうに遊んでるであろう…あの2人のことは考えないようにして。


それから作戦通り、くだらなすぎるウォータースライダー勝負で以外にも面白かったのか、子供のように何回も階段を登って滑っていく凛と、それを呆れた感じではあるけどついていく緑川の姿を私は日陰で見ていた。


最初の方恥ずかしがってたくせに…もう慣れたのか凛のやつ…。


最後の方には、私も混ざってひたすら登っては滑る事を繰り返していた。

凛は凄い笑ってるけど、最初の方から律儀に付き合ってる緑川はだいぶ疲れてるみたいだった。


一体何十回滑ってんだよ…。係員の人も乾いた笑いしてたぞ…。

結局、別れていた2人と合流するまでに私達2人の体力は無くなって、普段引きこもってるはずの凛だけ楽しそうに滑っていた。


「なんであんなに体力あるんだよあいつ…。普段ゲームしかしてないだろ…」


「ほんと…。体力ありすぎ…」


「緑川もごめんな。あいつがあんなにはしゃぐとは思ってなくてさ」


「ううん。案外楽しかったし大丈夫。ありがと」


はぁ…。緑川が優しくて助かった…。

そして、また笑顔で降りてきた凛を日陰で見てた私達は、また登っていく凛の姿を見て仲良くため息をついた。

次回のお話は7月21日の21時に更新します。


次回も今回に引き続き皐月ちゃん視点からのお話になります。

次回のお話は色々頑張ったので、是非楽しみに待っていただけると嬉しいです

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