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第4話 急接近の予感!?

 前日の夜遅くまで奥田さんとLINEのやり取りをしていたせいか、その日の目覚めはいつもより遅かった。


 お母さんが起こしに来てくれはしたけど、いつもならそこからすぐリビングに降りて行くのに2度寝をしてしまった。


 そのせいで、朝ごはんを食べている時間は無くなってしまった。

 自分のせいだから仕方ないんだけど、昨日夜更かしして少しお腹が空いていたのに、朝ごはんすら食べられなかったこともあり、今すごくお腹が空いている。


 お弁当は作ってくれてたけど、次ごはんにありつけるのはお昼休みと悟って、早くも気分が少し落ちてしまった。

 そこに追い打ちをかけるように、玄関の扉をあけるとパラパラと雨が降っていた。


 私は雨が嫌いだ。だって気持ちよくお昼寝をするのに、雨音は邪魔で仕方が無いし。

 それを抜きにしても太陽があった方が気持ちよく寝れる。とかいろいろな理由で、私は雨が嫌い。


 お腹が空いて、少し気分が落ちてたのにおまけに雨が降っているなんて私なにか悪いことした!?


 傘をさしてうろ覚えの道を通りながら学校へと向かう。

 少しだけ歩いたところで同じ制服を着た男の子が目に入ってきた。


 周りには見たことがある女の子が数人と男子が数人。

 多分、同じ中学校の人たちのグループだろうな〜。


 そのグループに着いていくことで、無事に学校にはつけたけど、いつものように明るい気分で教室に上がることはできなかった。


 教室に上がると、すでに複数人が教室の中でおしゃべりをしたり、黒板に落書きしたりでHRまで時間を潰しているようだった。黒板にそんな落書きして大丈夫なの?


 黒板には落書きと言うにはあまりに上手すぎる人物画が描かれていた。

 何のキャラクターなのかは知らないけど、教室の中には男子もいるのに男の人同士が恋人っぽく触れ合っている絵が黒板に書いてあった。


 そんなの黒板に書いたらダメなのでは…と思ったけど、それを声に出して言うほどの勇気は私にはない。


 見なかったふりをして、自分の席に向かうと、当然のように読書をしている緑川さんの姿があった。

 彼女は私が席に着くと、よほど本の世界に入り込んでいたのか少しビクッとして本から目を離し、私を見た。


 その表情には、驚きばかりではなく、何故か不安の色が浮かんでいたような気がしたけど、気のせいだと思ってあまり気にしなかった。

 学校で緑川さんとはあまり話したことはなかったけど、一応挨拶はした。


 緑川さんは私の挨拶におはよ。とそっけなく返すと、再び読書を再開した。

 いつもなら読書をしている緑川さんを眺めるところだけど、今日は寝不足なのに加えて、お腹もすいている。


 HRが始まるまで少し寝ることにした。


 机に突っ伏して寝る体制をとると、少しして、教室の前の方から笑い声が聞こえて薄れかけていた意識が、急速に覚醒する。


 少しイラ立ちながら、どうしたのかと声のした方を向くと、男性同士が触れ合っている絵に加えて、その横にキスをしているシーンが書かれていた。

 その絵を書いたらしき人が、周りの友達に反応をうかがった結果、大爆笑が巻き起こったらしい。


 よりによってなんでスケッチブックとかじゃなくて黒板に書くのか…

 それにしても…うまいなぁ。プロの絵描きさんみたい…。


 あの人は確か…霜月あかりちゃんだっけ…

 グレーの髪にピンクの目をもったギャルっぽい子だ。


 あの子にこんな特技があったなんて…少し驚きながらも再び私は眠ろうと机に突っ伏したその時、すごく小さな声で、くだらない…と言う声が聞こえた。


 びっくりして顔を上げると黒板の前で爆笑している女の子達は気付いていないようだった。

 まさか、緑川さんかな…。そう思って横を見ると、すごくイライラしている様子の緑川さんがそこにいた。


 多分だけど、読書の邪魔をされてすごく怒っているのかも。

 ああ、読書中に邪魔されたら凄い怒るタイプなんだ…緑川さんって…


 そんな彼女の姿に、少しカッコいいという気持ちが出てきた。

 お腹が空いていたことも、寝不足なことも忘れて、毎朝のように緑川さんを見つめてしまったいた。


 緑川さんは読書をやめて、雨が降っている窓の外を見ながら深いため息をついた。

 いつもよりカッコいい…。多分怒っている緑川さんの姿を見ながら私はそんなことを思っていた。


 少しばかり緑川さんを見つめていた私は、いつの間にか目の前にいた奥田さんに気付かなかった。

 今の時間を確かめようと教室の前の時計に目を向けた時、頬を膨らませた奥田さんに気付いた。


「うわ!ビックリした~。いつからいたの?」


 私は驚いて少しだけ大きな声を出してしまった。

 そんな様子の私に奥田さんは少し表情を緩めながらも少し怒っている様子だった。


「なんで目の前にいるのに気づいてくれないの~。私泣いちゃうよ?」


 そう言いながら彼女は再び頬を膨らませた。

 その顔はまるで、ハムスターがヒマワリの種を頬に詰め込んでいるかのような表情で、かなり可愛いと思ったけどここで可愛いよ。なんて言っちゃうとますます怒りそうだったので素直に謝った。


「ごめん。ちょっとボーっとしてて。」


 悪戯っぽく笑いながら奥田さんに謝ると、さらに頬を膨らませて、可愛く怒っていた。

 怒られている間、奥田さんのことをずっと可愛いと思っていたけど、それがバレてしまったのか、少し顔を赤くして、自分の席に戻ってしまった。


 そんな後ろ姿も可愛かったけど、ふと視線を感じて、緑川さんの方を向くとビクッとしながら、顔を窓の方へ向けてしまった。


 なんで緑川さんが私の方を見ていたのか分からないけど、別に嫌な気はしなかった。

 むしろ、嫌われているんじゃないかと心配していたけどその気持ちは杞憂だったと勝手に思った。


 多分だけど緑川さんの性格上、嫌いな人には目も向けないはずと思っていたから。


 その後はいつも通り朝のHRが始まる時間になって、柊先生が教室に入ってきた。

 黒板にいた人が、黒板の絵を消そうともせず席についたから、黒板には学校にはふさわしくないような男の人同士のキスシーンやら触れ合っているシーンがそのまま残されていた。


 当然柊先生もそれを見たわけだけど、顔を真っ赤にして、書いた犯人を探していた。

 柊先生が顔を真っ赤にして怒っている姿は言うことを聞かない弟や妹を叱りつけているお姉ちゃんのようで、すごく微笑ましい光景だった。


 その後の4時間目、これが終わったらやっとご飯が食べれるという授業でちょっとした問題が起きてしまった。


 前の授業は物理学だったから、私は案の定教室でお昼寝をしながら授業を過ごしたけど、まだ意識がはっきりとしてないせいで、数学の問題で指名された時、答えがわからずにあわあわしてしまった。


 どうしようと泣きそうになっていると、横から-3よ。と声が聞こえてきた。

 え?と思いながらも、とっさに-3です!と答えると、「正解。座っていいぞ。」と言われ、ほっとしながら席に着いた。


 横を見ると、緑川さんが心配した様子で私を見ていた。


「大丈夫?朝から何か変だけど…」


 小声で聞いてきた緑川さんの顔はすごく心配そうな顔だった。

 心配されているのに、私が心配されたことにすごく感激して泣きそうになっていた。


「ちょっと色々あってね。大丈夫。ごめんね、心配掛けて。」


 できるだけ心配させないように笑顔を作りながら答えると、そう。大丈夫ならいい。と言って黒板の方に顔を向けた。


 心配されたことで私は嬉しさのあまり、そこから授業に集中できなかった。

 気づいたら4時間目が終わって、お昼休みになっていた。


 奥田さんに一緒にご飯食べよ。って言われて、我に返ったほど、放心状態だったみたい。


 すごくお腹が空いているはずなのにそのことも忘れて放心状態になるなんて…

 どれだけ心配されたことが嬉しかったのか……。


 我に返ると、急にお腹が鳴ってしまった。

 ふぇ!?って変な声まで出てしまった。


 クラスの人にも思いっきり聞かれて私は体温がだんだんと上がっていくのを感じた。

 奥田さんもちょっと笑っていて、私は顔を真っ赤にしながらご飯を食べた。


 午後の授業もあまり身に入らず、7時間目が終わった後の下校時間になるまで、あっという間だった。

 帰ろうとしていると、緑川さんから話しかけられた。


「ねぇ。本当に大丈夫?4現から授業全く聞いてなかったでしょ?何か心配事があるなら聞くわよ?」


 心底心配したような緑川さんの表情は、すごく可愛かった。


「ほっ……本当に大丈夫だよ?なんでもないから」


 私はすごく動揺しながら答えた。でも、緑川さんはまだ心配なようで、


「はぁ。そんな顔で大丈夫って言われても信じられるわけないでしょ?心配だから、一緒に帰ってもいい?」


 ふぇぇぇぇぇ!?一緒に帰っても…って…それは願ったり叶ったりだけど…。

 そんなに心配させるような顔しちゃってるかな…私。


「え!?ほんとに!?帰ろ!帰ろ!大丈夫じゃないから一緒に帰りたい!」


 この時の私は、憧れの緑川さんから一緒に帰ろうと言われて飛び上がってしまった。

 飛び上がるほど嬉しかった。じゃなくて、飛び上がってしまった。


 そんな私の姿に、緑川さんは少し驚きつつも、一緒に帰ってくれた。いつの間にか雨は止んでいた。

 そのせいで朝さしてきた傘を学校に忘れてしまった……。


 学校の外の緑川さんは、やっぱり学校での氷の女王のような感じではなく、優しいお姉ちゃんみたいな感じで、私の話を聞いてくれていた。


 なんであんなにボーっとしていたのかと聞かれた時は、心配されたことが嬉しくて放心状態になってしまっていました。なんて言えるはずもなく、なんとなくはぐらかした。


 おしゃべりしながら下校していると、あっという間に家の前についた。

 別れ際に、なんとかLINEのアカウントを交換できた。


 すごく嬉しかったからか私の顔は、今までにないくらいの笑顔だった気がする。

 緑川さんも少し顔が赤くなっていたような気がするけど、多分照りつけていた夕日のせいだと思う。


 家の中には既にお母さんがいた。私が幸せいっぱいといった感じで帰宅したので、お母さんがすごいびっくりしていた。


 朝家を出た時とは真逆の顔で帰宅したらそりゃ驚くよね。まぁ傘を忘れた事を言うと、ちょっと呆れてたけど……。


 自分の部屋にあがって制服を脱いでパジャマに着替える。でも寝るわけじゃなくて、リビングに降りる。

 リビングのソファで夜ごはんができるまで、ニヤニヤしながら、帰りの別れ際に見た緑川さんの顔を思い出していた。


 そんな様子の私を見て、お母さんが何かあったの?と聞いてきたけど、私は答えることができずに、ずっとニヤニヤしていた。

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