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第35話 テスト返却と部活動の再開

「川上さ〜ん」


 そう言われて、美月ちゃんの後ろの席の子が黒板の前にある教卓で待っている柊先生の前に歩いていく。

 2日間のテストが終わって2日の休みがあり、今は中間考査の答案が返される時間。


 美月ちゃんや皐月ちゃん、雫ちゃんは落ち着いてる一方で、凛ちゃんは朝からずっと泣きそうだし、私は不安でいっぱいだった。


 初日の3教科。物理と現代社会。それと英語は全然心配してないけど、一番心配なのは数学で……。


 数学のテストは多分ギリギリ赤点かそうじゃ無いかだと思う……。

 全然自信がない……。美月ちゃんの対策問題でやったところが数問しか出てこなくてすっごく焦った……。

 今は英語のテストが返されてるんだけど、みんなどうなんだろう……。


「奥田さ〜ん」


「はい……」


 先生に呼ばれて、美月ちゃんがさっきの子と入れ替わりでテストを受け取ると、その瞬間ホッとしたような表情になった。

 多分かなり良い点が取れたんだと思う……。英語は皆自信があるって言ってたし私も多分大丈夫だと思う……。


「えっと次は〜小田川君〜」


 そう言われて席を立った男の子を見た瞬間、美月ちゃんの顔が急に怖くなってサッと席に戻ってしまった。


 その男の子は前に美月ちゃんに告白してきたっていう男の子で、今でもたまに話しかけてくることがあるって前に美月ちゃんに相談されたことがある……。私もあの人にはあんまり良いイメージを持てない……。


「すごいね〜。満点おめでと〜!」


 柊先生がそういうまで、私はさっきからずっと机で突っ伏している美月ちゃんを心配しながら見ていた。

 でも、先生のその一言で思わず前にいるその男の子に目を向けてしまった。

 凛ちゃんが英語は満点いけそう!って言ってたけど……まさかこの人も……?


「どうも……」


 それだけ言って、その男の子は自分の席に帰ってしまった。

 クラスの女の子数人が目をハートにしてその人を見てたからちょっと嫌な気持ちになった……。

 美月ちゃんに告白しといてなんであんなに……。


「砥綿さ〜ん」


「あ……私だ」


 凛ちゃんが席を立つと、その周りにいた男の子数人が一斉に凛ちゃんの方を向きながら何か言ってたけど周りがガヤガヤしててあまり聞こえなかった。


 凛ちゃんも当然!みたいな感じで満点を取ったらしくて、皐月ちゃんに向かってガッツポーズをしていた。

 休み時間にいばるな〜って言われながらチョップされてたけど……。


 それに、満点を取った人がもう1人いて……それが雫ちゃんがすごく嫌ってるあの男の子だった。

 このクラスってちょっと特殊なのかな……。私すごい自信があったのに58点だったんだけど……。

 なんで満点が3人も……。そんなに簡単じゃなかった気がするんだけど……


 その後は大体予想通りで、数学はギリギリ赤点を回避できて、凛ちゃんも赤点はなんとか回避したみたい。

 凛ちゃんが満点を取れたのは英語だけで、そのほかの教科は赤点ギリギリだったみたい。

 休み時間にすっごい美月ちゃんと皐月ちゃんにペコペコしてたし……。


 一番驚いたのは、全教科満点を取った人が1人いたってことで……。それが意外にも美月ちゃんに告白したあの男の子だった。

 あの人なんであんなに頭がいいの……。

 雫ちゃんが嫌ってるあの人も現代社会以外は満点だったし……。そんなに簡単じゃ無かったよね……。


「そうか?今回は割と簡単じゃ無かったか?」


 そうお昼ご飯の時に言われて、私と凛ちゃん以外の2人がうんとうなづいててちょっと驚いちゃったけど……。

 私、全部の教科の平均点50点くらいなんですけど……。


「まぁ……2日間しか勉強してないんだし妥当なんじゃない?むしろ、よく数学赤点にならなかったわよね……」


「ほんとだよ〜!美月ちゃんのおかげ!ありがと〜!」


「いや……わっ私は何も...してない……から……」


「なぁ美月?なんでそんなに顔赤いんだ?トマトみたいだぞ?」


「うるさい!そんなことないもん!」


「ほんとだ〜。美月の顔トマト見たい〜」


「も〜!」


 実際美月ちゃんの顔はすっごく赤くなってたけど皐月ちゃんと凛ちゃんがニヤつきながら美月ちゃんをからかってたから別に体調が悪いってわけじゃないんだと思う……。雫ちゃんは……なんでか複雑そうだったけど……。


「でもほんと、美月には感謝だよな〜。対策問題がほとんど出てきてだいぶ点数稼げたし〜。な?紅葉」


「え?あ……うん!あの対策問題のおかげで数学の赤点回避できたもん!」


「そっそう……?なら良かった……」


「どうせなんだしさ、お礼として付き合ってあげれば?」


「は!?何言ってんの?皐月!」


 美月ちゃんはすっごく顔を赤くしてるけど……私は別に……。お礼がしたいっていうのは本当だし……。

 買い物とかなら別に……。美月ちゃんって、時々すっごく真っ赤になるけどなんでだろう……。こういう雰囲気の子...知ってる...


 もちろん美月ちゃんじゃないけど...

 中学生の頃ちょっとの間だけだったけど仲が良かった女の子にどことなく似てる気がする……。


 まぁあの子は美月ちゃんとは全然違う見た目だし多分気のせいだけど……。

 あの子も可愛かったけど、美月ちゃんほどじゃ無かったし……。というか、美月ちゃんが可愛すぎるだけな気もするけど……。


「私は別に……買い物とかなら行けるけど……それでもいい?」


「え!?ほんと!?」


「うん!今回のお礼もしたいし!」


「おお〜。なら私たち5人でまたどっか行くか?」


「あ〜私は来月に次の大会が……」


「凛〜?私は5人でって言ったんだけど〜。行く?」


「行きます!うん。行く!」


 なんでそんなに泣きそうなんだろう……。テストの返却の時より凛ちゃんが泣きそうなのがすっごく気になる……。

 美月ちゃんはさっきから少し顔が赤いし……皐月ちゃんはずっとニヤついてるし……。


 私が一番気になったのは雫ちゃんがついて来てくれるのかだったけど、今度の日曜日は家族で予定があるって参加ができないみたいだった。ちょっと……というかかなり残念だった。


 ならまたの機会に……ってなりかけてた時、皐月ちゃんが今度の日曜以外だと私が無理になるってなって、雫ちゃん以外の4人で行くことになってしまった。


「本当にごめんね……」


「ううん。気にしないで楽しんで」


「雫ちゃんとももう一回遊びに行きたい!」


「う……うん……。また今度ね……」


 ちょっとだけ顔を赤くしてそう答えた雫ちゃんはちょっと可愛かった。

 美月ちゃんと皐月ちゃんがなんでだか嬉しそうにしてた理由は分かんないけど……。


 7時間目が終わった後、今日から文芸部の部活動を再開すると朝文芸部のグループラインに朱音先輩がメッセージを入れてくれてたか

 ら、私と雫ちゃんは一緒に部室に向かった。


 グループラインで春奈先輩の様子がちょっとおかしかったのが気になったけど……。また何か鈴音先輩とあったのかな……。


「あの2人ってほんとなんなんだろうね。部室に行く度にイチャついてる気がするんだけど……」


「ああ〜確かに!でも……あれってイチャついてるの?」


「イチャついてる以外に良い表現が思い浮かばないんだけど……」


「なんか春奈先輩が襲われたって言ってた気が……」


「それは……多分違うと思うけど……なんかまたやってる気がするよ私……」


「それはさすがに……」


 そう言いつつ、私もうっすらそんな気がしてたのは雫ちゃんは気付いてると思う……。

 だって……本当にそんな気がするし……。春奈先輩が冗談で中間考査頑張ったご褒美ください!みたいに言って実際……みたいな……


「ついたは良いとして……ちょっと開けるのが怖いんだけど……」


「この前朱音先輩が怒ってたしさすがに……」


 そう言いながら部室のドアを開けると、私と雫ちゃんはノックをして入らなかったことを後悔することになってしまった。


 だって……なんとなく想像はしてたけど、そこには鈴音先輩と顔を真っ赤にした春奈先輩が今にもハグをしそうな距離で春奈先輩が躊躇してるところだった。


 私たちが入った時、春奈先輩と一瞬目があってしまってその瞬間元々かなり赤かった顔がさらに赤くなっていって……とっさに鈴音先輩から離れた春奈先輩は必死に私たちに弁明しようと口をパクパクさせていた。


 だけど、後ろでニヤニヤしていた鈴音先輩が……


「ん?どうした春奈。ハグしてくださいって言ってたからしてあげようと思ったのに……。良いのか?」


 そう言われた瞬間、春奈先輩が頭から湯気みたいなものを出して、その場に倒れこんでしまった。

 そんなに恥ずかしいなら冗談でそんなこと言うのやめれば良いのに……。

 春奈先輩はこんなところばっかり見てるからなんでだか先輩だと思えなくなって来てしまってる……。


「春奈〜?どうした?体調でも悪いのか?」


「違います!もう!」


「勉強頑張ったからハグしてくださいって言ったのは春奈だろ〜?ん〜?」


「やめてください……。私はただ!鈴音先輩からなにかご褒美が……じゃなくて!」


「ご褒美が欲しいのか?なら〜」


 そのまま、まだ倒れこんでる春奈先輩に近づいて抱きしめてしまった。

 私達もいるのに……。というか、私達も顔がすっごく赤いと思いけど……それ以上に春奈先輩の顔が……


「春奈。勉強頑張ったな。お疲れ」


「ふぁ……ふぁい……」


「ん?顔すっごい赤いけど大丈夫か?」


「もう……。ちょっとしばらくこっち見ないでください……」


 しばらくして朱音先輩が部室に来て……顔が真っ赤な私達と春奈先輩を見て状況を全て理解したのか、鈴音先輩をすごく怒ってた。

 春奈先輩は……部活が終わるまでずっと顔が赤くて時々鈴音先輩の方を見ては目があったらすぐ逸らして顔を更に赤くする。みたいなことを繰り返してた……。


 私と雫ちゃんはさっきの光景を見てしまってるだけに、ずっと恥ずかしかった……。

 鈴音先輩が怒られた後もずっと春奈先輩にちょっかいを出してたから春奈先輩がどうにかなっちゃいそうなくらい顔が赤くなっちゃってた時があったけど……。


「ほんとにあんた達は……部室でイチャつくのはやめなさいって言ってるのに……」


「朱音先輩!でも今回は鈴音先輩が!」


「...発端はあなたなんでしょ?もう……」


 残りの3人は今日は用事があるらしくて来てなかったけど……もしあの光景を見ちゃったとしたら……私達みたいになってたと思う……。

 今度からこの部屋に入るときは絶対ノックしよ……


「ほんとにあの2人部室でいちゃつくの好きよね……」


「今日のあれはちょっと私も恥ずかしかった……」


「今度からあの部屋には朱音先輩が来るまで入るの待ったほうがいいかもね……」


「そう……だね……」


 学校からの帰り道も鈴音先輩と春奈先輩のことをずっと話してた。


 寝る直前にまたあの光景を思い出しちゃって、夢にまであの光景が出て来て、起きた時に私の顔は真っ赤になってしまっていた。

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