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第31話 凛ちゃんの話と寂しそうな女の子

「それで?私らを呼んだ理由ってなんだ?わざわざ凛の方から呼び出すとか珍しいじゃん?」


「あ〜。本題忘れてた……。ちょっ痛いってば皐月!ゴメンって〜」


 机の下から鈍い音がした後、凛ちゃんが急に涙目になって皐月ちゃんに謝ってた。

 凛ちゃんが呼び出したのに自分で理由を忘れちゃうなんて……。この二人って、お食事会の時から思ってたけど仲良いなぁ……。


「それで?本題の内容まで忘れたとか言うんなら〜このパフェも追加するけど?」


「別にそれはいいんだけど……。本題はちゃんと覚えてるよ。えっとね〜」


「すいませ〜ん。このチョコパフェをもう一個追加でお願いします〜。後カフェオレ!」


「結局頼むんだ……。よくそんなに食べられ……ゴメンってば!まだなにも言ってないじゃんか〜」


 私と美月ちゃんは二人のやりとりを苦笑いしながら眺めてたけど……仲のいい姉妹にしか見えない……。

 その時、凛ちゃんの後ろに座ってた女の子がちょっと泣いてたような気がした……。

 見間違いかもしれないけど……何かあったのかな……。


「いいから本題を早く話なって」


「皐月が話し遮ったんじゃ……まだ言ってないからセーフ!ね!?セーフだから!」


「別になにもしないから。ほら」


「皐月って私にだけあたり強いよね……。えっと、本題なんだけど。皐月から聞いたんだけど、学校で私が凄い話題になってるってほんとなの?」


「うん。凛ちゃんすっごい話題になってるよ。男の子達がずっと騒いでたもん」


「そっか……」


 少し複雑そうに笑った凛ちゃんは、その後目を瞑ると、あ〜とか、うーんとか難しい顔をして何かを考えていた。

 2分も経たないうちに結論が出たのか、また話し始めようとした時にちょうど皐月ちゃんがさっき頼んだパフェが運ばれてきちゃって、またまた話が中断してしまった。


「あ。食べながら聞くから続けていいぞ?」


「分かった。まず、今回私が入賞したのはほんとだけど、表彰はされたくないってちゃんと学校に言ったんだよね。まぁ…………正確にはお母さんにそう言って、学校に伝えてもらったんだけど…………。だけど、どうしてもって言われちゃって……。それで…………どうにか表彰をされないようにしたいんだけど、どうすれば良いかなって相談したくてさ……」


「……待って。凛。まさか……それだけ?」


「?そうだよ?どうしたの美月……。怖い顔して……」


「すいませーん。私もパンケーキ追加でお願いします〜。みなちゃんもなにか頼まなくて良い?」


「ちょ!美月まで〜!」


 ちょっと涙目の凛ちゃんを見て、流石に私まで頼んじゃったら可哀想かなって思って遠慮したけど……美月ちゃんと皐月ちゃんはちょっと怒ってるみたいだった。いや……呆れてるのかな……?


「そんなことで私達を呼んだの?ほんとに?」


「ちょ!他人事だと思って!私が表彰されるの嫌だって皐月なら分かるでしょ!?なんか知恵貸してよ!」


「別に怒られるわけじゃ無いんだから素直に表彰せれれば良いじゃん……。知恵貸してって言われてもなぁ……。明日行かなかったとしても、どうせ今度登校した時に表彰しますとか言いそうだしな〜。もしかして、今回あんまり悔しそうじゃないのってそのことが原因なのか?」


「悔しくないって言うか…………。今回は受験とか色々あって練習が足りてない部分あったから仕方ないかなって感じ?むしろよく入賞できたな〜って」


「はぁ…………。あんた…………少しゲームする時間減らさないとほんとに頭悪くなるよ?」


「ひっど〜!ホントの事でも言っていいことと悪い事があるじゃん!」


「ホントの事って…………認めるなよ…………。まぁでも、表彰の事はなんともならないんじゃねぇの?」


「皐月も無理って思うの?お母さんもなんともならないって言うし……。美月と紅葉ちゃんは?なんか良いアイデア無い?」


「ない。観念して大人しく表彰されなさい」


「そもそも、凛ちゃんはなんでそんなに表彰されるのが嫌なの?私には嫌がる理由がわかんないんだけど……」


 そう言うと、凛ちゃんは少し考えた後、ちょっと顔を赤くして……


「恥ずかしいじゃん……」


 なにこの子……。可愛いんですけど……。

 凄い結果出してるのに、表彰されるのは恥ずかしいって……。可愛い……。

 なんかもっと重大な理由があると思ったのに……。


「私にとっては重大な理由なの!中学の時は嫌だって言ったら表彰されなかったのに……なんで高校生になったら嫌でも表彰されるのよ……」


「そりゃ高校のイメージアップになるからだろ……。今ゲームってプロがいて、それで食べてける人だっているんだから……。というかあんたもその一人でしょうが……。そんな人が学校にいたらアピールしたくなるもんでしょ。大人は」


「え。じゃあ何?部活で全国まで行きました!みたいに名前とか書かれてどっかに貼られるの?そんな事されたら恥ずかしくて死にたくなるんだけど……」


「むしろ部活とかよりでかく貼られるんじゃねぇの?それだけの事したんだから……」


「本当にやめてほしいんだけど……。学校やめようかな……」


 皐月ちゃんは笑ってるけど凛ちゃんはちょっと深刻そうに。本気で学校を止める事まで検討してそうな真面目な顔で悩んでいた。

 学校を休めるから頑張ってたゲームのせいでこんなに恥ずかしい思いをするかも!なんて悩むなんて……なんというか……。うん……。


「はぁ……。なら、明日学校行った時、校長か誰かに、本当に表彰するなら学校辞めます!とか言いに行けば良いんじゃねぇの?多分ホームページには載せさせてくれとか言ってくると思うけどそれもなんとかして断りな?それでもダメなら……しゃーないから大人しく表彰されな?」


「流石にやりすぎなんじゃ……」


 私が心配しても、凛ちゃんは目をウルウルさせながら皐月ちゃんを見ていた。

 ちょっとその姿が面白くてちょっと笑ってしまいそうになった。


「あ〜良いんじゃない?私も皐月の案に賛成。辞めるって言ってるのにそれでも表彰したい。なんて言うわけないから。ほら。うちの校長先生優しそうだしさ。なんとかなるんじゃない?」


「分かった……。明日早めに行って校長先生に言ってみるよ……。それでもダメだったら……お兄ちゃんに電話してどうにかしてもらう……」


「凛ちゃんのお兄さんって何してる人なの?」


「え?普通の高校生だよ?うちの高校の3年生。でも〜お兄ちゃんは私には甘いからなんとかしてくれると思うんだ〜」


「この子がこうなっちゃったのって、甘すぎるお兄さんのことがあるからだと思うんだよね。だから私が面倒見てるんだけど……。でも……響先輩って意外と有名らしいよ?なんかすっごいモテるらしい……」


「お兄ちゃんは優しいもん。でも、好きな人がいるらしいから誰とも付き合ってないみたいだよ?好きな人が誰かまでは私も知らないんだけど……」


 みんなで凛ちゃんのお兄さんの話をしてると、凛ちゃんの後ろに座ってた女の子と私の目が、一瞬だけあった気がした。

 気のせいかもしれないけど……なんでか泣きそうな目でこっちを見てた……。本当にどうしたんだろう……あの子……。


「?紅葉?どうかしたか?」


「ん?別に〜。なんでもない!」


「ちょっと……何どさくさに紛れてフルーツサンドまで食べてるのよ……。奢りだからって……」


「今日うちに私だけだからな。ついでに夕飯の分って事で〜」


「葉月ちゃんは?どうしたの?」


「あの子は友達の家でご飯食べてから帰るってさ」


 それから、皐月ちゃんがフルーツサンドを食べ終わるまで、雑談が続いてカフェを出た。

 途中、あの気になっていた女の子のそばを通った時、チラッと何か独り言を言ってた気がしたけど上手く聞き取れなかった……。


 凛ちゃんは本当に全員分のお会計を払ってくれたけど、レジで値段を見た時、すっごいため息をついてた……。

 私もこんなに高いんだってちょっと驚いちゃった……。


「本当に皐月は遠慮ないんだから……。私が自由に扱えるお金ってそんなに無いんですけど……」


「奢りって言ったのは凛だろ〜?良いじゃん。良い解決案出してあげたんだから」


「そりゃそうだけどさ……あ、お兄ちゃんが近くにいるから迎えに来てくれるって!」


「相変わらず甘いな〜。一人でも帰れるだろ……」


「えへへ〜。やっさしー」


「はぁ……。じゃあ。私らはこれで。ちゃんと明日来いよ〜」


 その後は、3人で駅まで歩いて……私が電車に乗るところまで見送ってくれた。

 皐月ちゃんがこの前電車を乗り間違えたって言ったらまた間違えそうだからって……。いくらなんでも心配しすぎって思ってたけど……案の定間違えそうになってた……。


「紅葉……降りる駅は流石に間違えないよな?私らは逆方向だからここまでだけど……美月はこの後暇らしいから一緒に行ってやったら?」


「は!?あんた何言ってんの!?でも……本当に大丈夫?」


「た……多分……。帰ったらちゃんと連絡するから!大丈夫!」


 自信満々で電車に乗った私は、揺られ始めてから5分ほどで寝ちゃって……降りる駅を数駅過ぎたところで目が覚めて……。

 そのことを美月ちゃんに伝えると、すっごい心配された……。

 お食事会の帰り道は雫ちゃんが一緒にいてくれたし……行きは朝だったし……。


 皐月ちゃんからはすっごい呆れられたというか……やると思ってた……。って言われちゃった……。

 家に帰り着いたのは7時前だったけど……疲れて美月ちゃんと皐月ちゃんにちゃんと帰れたって送った後は、力尽きた……みたいにベットで横になって寝てしまった。


 お母さんがベットの上にパジャマを置いてくれてなかったら制服の姿のまま寝ちゃってたかもしれない……。

 お母さん……ありがと〜。

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