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第26話 思い出の品

 あ〜あ……。行っちゃった……。

 そう思いながら紅葉ちゃんが駅の中に入って行く後ろ姿を眺めていると、突然後ろからさっきまで私の家にいた友達の声が聞こえてきた。


「特に何もなかったな〜。もうちょっと何かあると思って着いてきたのに……」


「なんでここにいるの……皐月……」


「そりゃ面白そうだからに決まってんじゃん!」


 本当にこの子は……面白そうって理由で着いてくる?葉月ちゃんと萩を2人きりにするって思惑もあるんだろうけど……。

 まぁいいや。紅葉ちゃんから嬉しい言葉聞けたし……。


「あ〜そういや美月が前に話してたキーホルダーつけてくれてたな〜。それで顔が赤いのか?」


「なんで分かるの!?」


「そりゃ分かるだろ……。どんだけ分かりやすいんだよ……」


「だってさ〜……気にいってるって言ってくれたし……それに!」


「ああ〜はいはい。分かったから続きは家でな?」


 なんかまた面白がられる気がする……。

 あの、私にとっても思い出の品のキーホルダーの事は皐月にも話してるけど……それで更に……みたいな。

 まぁ私も皐月に色々聞きたい事があるし良いけど……。


「それで〜?私に聞きたいことってなんだ?」


 家に帰り着いて早々、皐月がニヤつきながら言ってきて、ちょっとだけため息が出てしまった。

 なんだじゃないでしょ……。最初見た時本当にビックリしたんだから……。


「エプロンの事に決まってるでしょ!あれは何……」


「ああ〜。前に私が作ったものなんだけどさ〜ついでに猫のも今回の事が決まってから急いで作ったんだよ。凄いだろ〜。」


「そんな気遣いいらないよ……。ていうか、なんでクマの方は前から作ってたのよ……」


「ん〜。それは内緒。まぁ良いじゃん。可愛い紅葉の写メ手に入ったんだし。」


「そういう問題じゃない!ほんとに……」


「そう言ってニヤケけてるじゃん……」


 だって...皐月が写真を撮ろうって言ってきたせいで何も考えられてない私ととびっきり可愛いエプロン姿の紅葉ちゃんが私の写真フォルダに保存されていた。


 多分エプロンの柄を猫にしたのもキーホルダーの事を思い出したからとか言うんでしょ……。

 料理以外は皐月に勝てた事無いけど……本当に裁縫のスキルだけは敵う気がしない……。


 裁縫だけは無駄に上手なんだから……。

 なんでこんな可愛いエプロンを数日で作れるんだか……。


「あんたまさか……金曜学校休んでたのってこれ仕上げる為とかじゃ無いでしょうね……」


「あ……バレた?」


「本当にバカなんだから……。」


「しょうがねえじゃんか!思ったより難しかったんだから……」


 なんでその才能をこんな所で使っちゃうかなぁ……。

 まぁ皐月のおかげで私の写真フォルダに高校生の紅葉ちゃんが入ってきてくれたからこれ以上は言わないけど……。


 私の写真フォルダにはちょっとだけ中学生時代の私達2人が入ってるだけで、高校生の紅葉ちゃんは入ってなかった。

 紅葉ちゃんの写真フォルダに残ってるかはわかんないけど……。


「姉さん。このキーホルダー何?部屋で葉月と話してたら見つけてさ〜。姉さんこう言うの集める趣味ないだろ?」


「あ〜それは美月の命の次に大切な物だぞ。それより葉月は?」


「部屋にいますけど……」


「そう。なら早く戻ってやりな〜。寂しがってるぞ〜?」


「あ……。分かりました!」


「私には素直じゃないのになんで皐月には素直なのよ……」


 姉としては複雑なんだけど……皐月は葉月ちゃんのお姉さんだしまぁ分からんでもないけど……。

 多分皐月はあんたの気持ち分かってると思うよ……。あんたは隠してるつもりなんだろうけど……。


「萩君って本当分かりやすいよな〜。美月とそっくりじゃん」


「私とそっくりって言われても……。私ってそんなに分かりやすい?紅葉ちゃんには気付かれた事無いんだけど……」


「そりゃあの子が鈍感なだけ。緑川さんもなんとなく気付いてんじゃない?」


「あの人は良いもん!あの人は紅葉ちゃんなんて……見ない……と思うし……」


「じゃあなんで食事会した後2日も休んだんだよ……」


 それを言われるとちょっと弱いと言うか……。

 だって夢にもあの光景が出てきたんだもん……。本当に辛かったんだから……


「でも、緑川さん最近平川君と話してるし……。あの人が好きなんじゃないの……?」


「あ〜。それは紅葉も気にしてたな〜。でも違うんじゃないか?あの子の性格的に彼氏とか興味無いでしょ」


「それはそれで問題……」


 それからたっぷり1時間くらい皐月と話してたけど、結局皐月には敵わないって結論しか出なくて……。

 途中で紅葉ちゃんから電車乗り間違えた!ってメッセージが来てちょっと笑っちゃったけど……。

 なんであの人はこんなに可愛いのか……


「じゃあ。今日はお邪魔しましたっと。葉月〜帰るぞ〜。」


「は〜い。待って〜」


 皐月と葉月ちゃんは5時近くに帰って行っちゃったけどその後も私の苦労は終わらずに……。

 というか、萩がすっごい嬉しそう……。


「何かあったの?」


「いや〜別に。そんな姉さんこそ何があったんだよ。今日駅前で見た女子と関係あんの?」


「駅前?なんのこと?」


「自分の姉を見間違える弟がどこにいるんだよ……。駅前で楽しそうに話してた女子。んー。あぁ、今日家に来てた人」


「あ〜今日は萩の好きなオムライス作ってあげるね。ちょっと待ってて。材料買ってくるから」


「ちょっと!それで誤魔化せると思ってるなら姉さんちょっとヤバイよ……」


 いつもは比較的大人しめの萩が珍しく玄関を出ようとしてた私の手を掴んだ。

 このまま大人しく買い物に行かせる気は無いみたい...。


 誤魔化せると思ったのに……。でも、この子になんて言えば良いのよ……。

 私の中学時代の事はこの子には話してないし……。


「うーんとね。お友達が来てちょっとテンションが高いだけだよ?」


「それであんな風に誤魔化そうとはしないでしょ……。凛さんとか皐月さんが始めて来た時はそんな風になってなかったじゃん」


「あ……私大事な用思い出したからちょっと出掛けてくるね!うん!」


 まだ萩は納得いってないみたいだったけど、これ以上聞かれるとボロが出そうで怖い……。

 半ば無理やり玄関から出て、走って近くのスーパーに向かう。


 今日の事はお姉ちゃんのオムライスで忘れてもらわないと……。


 萩はどうせ今頃私がいなくなってやっとアニメが観れる〜とか思ってるんだろうけど……。

 そんな時、ポケットに入れてたスマホが振動した気がして取り出してみると、紅葉ちゃんからメッセージが来てた。


「心配かけちゃってごめんね〜。無事に帰れたよ〜!」


「良かった!またおんなじことしないように気をつけてね!」


 ちなみに、夜ご飯は萩のだけ大盛りで作りました……。頼まれたんだもん……。


 お父さんは毎回夜遅くに帰ってくるのに今日は早く帰ってくるし、私が今日の朝、準備してる時に出掛けて行ったお母さんも帰ってくるしで……なんで私がみんなの分の夜ご飯を作ってるのか……。


「私が作るより美月が作った方が美味しいんだから仕方ないじゃん」


「お父さんもそう思うの?」


「あ〜いや僕は……お母さんの料理も好きだよ……」


 相変わらず私のお父さんはお母さんに頭が上がらないみたいだけど……なんでそんなに……。

 お母さんは多分めんどくさいだけだろうし……。


 寝る直前に皐月から明日はちゃんと学校来いよってメッセージが来て……嬉しくて休もうと思ってた私の胸の内なんてお見通しだったらしい……。ちゃんと行きますよ……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 明日美月が学校を休みそうだと思った私は、寝る直前になってちゃんと来いよ。とだけメッセージを送ってベットに入った。

 もう寝ようと目を閉じた時、部屋のドアが開いて誰かが入って来た。


「ん?葉月か?どうした?」


「まだ起きてたの!?いや……一緒に寝たいなって思って……。ダメ?」


 廊下から漏れてる光でちょっとだけ見える寝間着姿の葉月は昼間より可愛かった。

 本当にこの子可愛いなぁ……。私の妹とは思えないくらい可愛い……。


「良いぞ〜。おいで〜」


「やった〜。お姉ちゃん。今日は本当にありがと...」


「良いって。それで?萩君とはどうなんだ?」


「えっとね〜。同じ高校に入るって所まで決めた?かな」


 どんだけ萩君のこと好きなんだよ……。いや……向こうが同じ高校に行きたがってるのかもしれないけど……。

 萩君は運動部だし推薦もらえそうなのにわざわざ葉月に合わせてくれるなんてねぇ……。

 去年の美月みたい……って本当にそっくりだなあの姉弟……。


 美月も紅葉と同じ高校に行きたいってわざわざちょっと遠い桜川高校に行くとか言ってたし……。


 私も色々心配だったから一緒に入ったんだけどさ……。


「そう。どこに行くのかも決まってるの?」


「私はお姉ちゃんと同じ高校に行きたい!」


「そうか〜。なら勉強手伝ってあげるから困ったらなんでも聞きな。」


「うん!ありがと!」


 私は葉月に抱き枕みたいに抱きしめられながら眠った。

 朝、葉月が横で寝ててちょっとビックリしたことはできる限り早く忘れたい……。

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