第24話 勉強会当日
私は部屋に鳴り響くうるさい音で目が覚めた。
ちょっとムカッときながら自分の携帯から鳴ってるアラームを止めた。
時間を確認してみるとまだ朝の6時30分だった。
昨日の私は何を思ってこんな時間にアラームを設定したのか……せっかくの日曜なんだから10時くらいまで寝てもバチなんてあたらな……
「……って今日日曜!?紅葉ちゃんがうちに来る日じゃんか!」
今日の予定を思い出した瞬間、寝かけていた意識が急速に覚醒し始めて、途端に目が覚めてしまった。
そうだよ。この前紅葉ちゃんが料理を教えて欲しいって言ってきてくれて、勝手に皐月がオッケーしちゃったんだった……。
後からなんで勝手にって問い詰めたら自分じゃ無理でしょ?なんて尤もなこと言って逃げられちゃったし……
でも……昨日の私ありがと〜!こんな大事な日に寝坊なんてしたら明日からどうやって紅葉ちゃんと顔を合わせたらいいか分かんないし……。
というか、そもそも私がお母さんに料理教えてって言ったのは少しでも紅葉ちゃんに凄いねって言って欲しくて……。
その紅葉ちゃんに私が料理を教えるなんて……。皐月も何教えたらいいかなんて分かんないって言ってたし。
「私これからどうすればいいのよ……。」
とりあえず……紅葉ちゃんが来るのはお昼って言ってたし……それまでに色々準備しないと……。
えっと...まず、今着てるパジャマのままだと流石にあれだし着替えないと……。でも、何を着たらいいんだろ……。
家の中なのにお出かけ用の格好はおかしいだろうし……かと言って部屋着なんて……いやこんなの着れない。
あ……これ良いかも……。弟のだけどまぁいいや……。
萩の青のパーカーって私が着ても不自然じゃないから多分大丈夫だよね……。
あの子は……まぁ怒るかもしれないけど……。
紅葉ちゃん……似合ってるって言ってくれるかな……。
リビングに降りるとまだ7時過ぎなのに既に萩がテレビの前でアニメを見ていた。
こんな早くからテレビって……部活の朝練はどうしたの……
「おはよ。なんで僕のパーカーを着てるかはいいとして、なんでこんなに早く起きてきたん?」
「お姉ちゃんにも色々あるの。後、今日1日あんたのパーカー貸してもらうけど良いよね?」
「そういう事は前もって言ってくんない?まぁいいけどさ……」
「ありがと。それはそうと朝練は?」
「今日は無いから1日見てなかったアニメ消化する」
一日中ここでアニメ見るって事?普段なら良いけど……今日はこの子がいるとちょっとまずい……。
この子、妙に鋭いところあるし私が紅葉ちゃんの事をどう思ってるか気付かれるかもしれない……。
自分の事だと鈍いくせに……
あそうだ……。皐月に頼んで葉月ちゃん呼んで貰おっかな……。
葉月ちゃんが言えば萩も外に行くだろうし……。
私は自分の部屋に戻って、まだ寝てるだろう友達に電話をかけた。
すると、割とすぐに楽しそうな声で電話に出てくれた。
「おう。どうした?」
「ちょっと頼みがあってさ……。今日の紅葉ちゃんとのアレの関係で……」
「なんだ?やっぱり私にも来て欲しいのか?」
「いやそれは無い。ただ萩が今日1日溜まったアニメ消化するとか言ってて……」
「あ〜わかった。葉月に頼んで外に連れ出して欲しいと。なら〜10時頃にそっち連れてくわ〜」
「ありがと〜」
とりあえず、これで萩の方は大丈夫……。
あの子葉月ちゃんには弱いし……。というか葉月ちゃんの方は萩の事どう思ってるか分かんないけど……。
下に降りてみると、さっきまでのんびりアニメを見てた萩がテレビの前ですごい慌てていた。
多分葉月ちゃんが早速誘ってくれたんだろうけど……葉月ちゃんもよくこんな時間から起きてるよね……。
普段日曜日なら10時近くまで寝てる私とは大違い……。
「どうしたの?そんなに慌てて……」
「え!?あ〜いや。友達が今日一緒に遊ぼうって言って来たからさ〜!ちょっと準備してくるわ!」
それだけ言って萩は自分の部屋に戻っていった。皐月も初めて会った時は女の子って思ったらしい両性的?な顔立ちを気にしてる弟があんなに嬉しそうに……。まぁ私も紅葉ちゃんに誘われたらああいう風になると思うけど……
っていうか、多分だけど萩が皐月の妹の葉月ちゃんを好きになったのって、私以外で初めて女の子と間違われなかったって理由だと思うんだけど……片思いしてからもう何年だろう……。2年くらい?男ならさっさと告白しちゃえって思うのに……
9時30分頃になった頃から萩が更にそわそわし始めて……なんだか面白くなって来た。
私が作った朝ごはんも、いつもならすぐに食べ終わっちゃうのに今日はいつもの3倍くらいの時間をかけて食べていた。
葉月ちゃんと遊びに行くなんて初めてじゃ無いでしょ……
10時ちょうどになると、家のインターホンが鳴り、萩が勢いよく玄関を開けると、ピンクのツインテールでピンクのワンピースを着た可愛らしい女の子が立っていた。彼女が皐月の妹の葉月ちゃん。なんだかこの前会った時より可愛いくなってるがする。
「萩君おはよ〜。今日の朝お姉ちゃんに映画のタダ券貰っちゃってさ……ごめんね急に」
「いや、ちょうど暇だったし……。よっし。行こ!行ってきます〜」
「2人とも気をつけてね〜」
「葉月?頑張るんだぞ〜」
「あ……皐月さんおはようございます。」
「弟君久しぶり〜。葉月よろしくな〜」
なんでちゃっかり皐月もいるのよ……。
葉月ちゃんだけくれば良いのに……
「よ〜し行ったな〜。じゃ。お邪魔するぞ〜」
「ちょっと……お邪魔するじゃ無いでしょ……。帰りなさいよ……」
「本当に1人で紅葉を相手にできるのか?本当に?」
「そ……それは……その……」
「はいはい。お邪魔するぞ〜」
結局皐月は何が何でも今日の料理の勉強会?に参加するつもりらしい。
正直にいうと心強いけど……なんだか嫌な予感がする……。
とっても嫌な予感が……。
「弟君連れ出してあげたんだから良いだろ〜?こんな面白そう……じゃなくて...うん。面白そうなイベント逃したく無いもんな」
「面白そうって……皐月……あんた私の友達よね?」
嫌な予感がするけど、紅葉ちゃんがくるまでもう2時間ちょっとしか無い……。
とりあえず部屋片付けないと……。
「なら私は台所の方やる。」
「うん……。お願い……」
なんで片付けるだけなのにニヤニヤしてるの……怖いんですけど……。
皐月には私が紅葉ちゃんを好きな理由とかも全部話してるし協力もしてくれてるのに……なんとも言えない気持ち。
皐月が何もしないで今日が終わりますように……。
「お。掃除してたら時間経つの早いな〜。そろそろ12時じゃん。
「そう……だね。」
今更緊張してきたなんて言えない……。
というか、実の所11時になったあたりから、ずっと心臓が激しく動いてる。
こんな調子で1日もつかな……
「そういや、あの子最近ここら辺で迷子になってたんだろ?迎えに行ってあげたら?」
「え……え!?」
「駅まで。ほら駅に迎えに行って……そこからウチまで2人きりだぞ?遠回りとかしたら更に……」
「しないってば!!皐月は来ないの?」
「私は〜いいや。2人の時間を邪魔なんてしませんよ」
そんなことを言われて、私はちょっとだけ遠回りしながら2人で楽しく話してるところを想像してしまった。
あ……なんか……良いなぁ……。
「そんな顔で紅葉に会うなよ?引かれるぞ?」
私今どんな顔してるのよ……
嬉しいんだけどさ……ちょっと顔が赤くてニヤついちゃってるだけ……。多分……
「ほら。早く早く!」
「え……本当に行くの?」
そのまま皐月に流されて紅葉ちゃんを駅まで迎えに行く事になった。
でもまぁ……この前みたいに2人きりで歩けるんだし……良いか……。
家から駅までは歩いても10分くらいだし……遠回りなんてそんなこと……多分しない……。
あ。紅葉ちゃんももう少しで駅に着くって。
はぁ。もうすぐで紅葉ちゃんと会うんだ……。やば……ドキドキしてきた……。
ちょっとデカめの最寄駅に着いた私は、紅葉ちゃんからのメッセージを頼りに彼女を探していた。
本当なら先に駅に着いてビックリさせたかったのに色んなことを考えすぎてくるのがちょっと遅くなってしまった。
あ……いた!って待って……何あの可愛い女の子……。ヤバイんですけど……
服装も赤いパーカーと黒いスカートをいい感じに履いてて……可愛さがより際立ってるというか……
私はその場に5分ほど立ち尽くして、紅葉ちゃんの姿をしっかりと目に焼き付けてから合流した。
これから私にとっての戦いが始まってしまう……。
皐月が言うには、ここでもう少し距離を縮めたい...らしい。かっこいい所を見せて興味を持ってもらう?みたいな事を言ってたような……。かっこいい所なんて見せられるかな……。頑張らないと……!
ちなみに、合流した時、紅葉ちゃんは私の服装を可愛いと言ってくれたよ!




