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第151話 誤解

先輩が私を抱き枕みたいに抱きしめるせいでほとんど眠れず夜を過ごした翌日、私は先輩が起きてやっと解放された。


先輩は可愛く、そして幸せそうに寝息をかいていたけれど、ちょっどだけ恨めしい…。

私は照れて、なんで先輩は大丈夫なのか…。


「おはよ〜春奈。よく眠れた?」


「…眠れましたよ。先輩は随分と幸せそうでしたね!」


「うん!なんか、すっごいいい夢を見た気がする!」


「元気に『うん』じゃないんですよ…」


誰のせいで私は一晩中可愛い彼女の寝顔を見て過ごしたと思っているのか…。

私が寝ている間に襲うとか、この人は考えないのか…。いや、絶対無理ってわかってるだけかも知れないけど…。


そういえば、付き合ってもう半年以上経過しているのに、手を出されていないような気がする…。


相場がどのくらいなのか知らないけど、こういうのって結婚してから初めてっていうのが普通なのかな…。そんなことないよね?

もしかして…私ってそんなに魅力ないかな…。


「ん〜?どした春奈。顔洗わないのか?」


「え…?あ、ああ。ちょっと考え事を…」


まぁ確かに、私はそこまで胸が大きいわけでも無いし、女の子としての魅力がない可能性も否定できないけどさ…。

いや、そんなネガティブなことを考えるのはやめよう。


最近先輩は受験とか色々あったから、そんな暇なかったって考えておこう…。

ていうか!私が先輩としたいみたいじゃん!いや、違うけど!いや…違くないけど!?

そもそも、私からそんな事言えないしさ!


「ほんとどした?私のことそんなに見つめて〜」


「なっ、なんでもないですよ!」


とっさに耳まで赤くなって顔をそらしてしまう。

朝からそんなことを考えているなんてバレたらなんて言われるかわからないし…。

しかも昨日のお風呂でもなんか色々言われたし!


その後朝ごはんを食べてそのまま旅館を出た。

当たり前のように手を繋いで島の中をブラブラしているだけなのに、なぜだか妙に先輩を意識してしまう。


先輩も特段どこかが大きいわけじゃ無いけど、私と違って見た目がすっごい可愛いし…。

昨日結婚の話とかになったけど…私に魅力が無かったら他の子に取られちゃうかもしれない…。


「なぁ春奈〜。朝からなんで私をガン見してるんだ?どこか変か?」


「あ、いえそんなことないです!先輩はか…どこも変なところは…」


「私はか…?」


「…いいでしょもう!行きましょうよ!」


「良いじゃん!言ってよ〜」


キラキラした目で私を見てくる先輩に、なんとかはぐらかして先を急ごうと急かす。


今私たちが向かっているのは、この島の頂上にある縁結びの神社だ。

この島は特に何があるってわけでも無いけれど、先輩が小さな頃に一度きてなぜかまた行きたいと言っていたので来たって感じ。


今日の予定はお昼前に神社によって、そこからフェリーで移動。

お昼ご飯を食べて、商店街でお買い物をするって感じ。

この島、本当に縁結びの神社と温泉旅館しかないからさ…。


「あ、ねぇ春奈。今日の夜大事な話があるからさ、ちょっと覚えといて!」


「大事な話…ですか?」


「うん。大事な話」


「いつものことながら、話が急すぎませんか?今話すとかじゃダメなんですか?」


「今…は、ダメ。あれが〜あれだから…」


頬をかきながらそう言う先輩は、なんだかいつもより可愛く見えた。

だけど、大事な話があるって言った時の先輩はかなり深刻そうで…まるで別れ話をされる時みたいな…。


いや、昨日の今日でさすがにそんなことはないと思うけど!…無いよね?


い、いや冷静に考えたら、別れようと思っている相手と縁結びの神社になんか行かないでしょ。

まだ別れてないのに次の相手を探しに行くほど、先輩は酷い人じゃ無いし…。


ただ、その考えが一度湧いてしまうと、大丈夫と思っていても、心のどこかでもしかしたらって思ってしまう。

私、先輩に別れたいとか言われたら…どうすれば良いかわからなくなるんだけど…。

いや、昨日一緒に寝たし絶対大丈夫だと思うけどね!?


(結局全然楽しめなかった…)


先輩と別れないといけないかもしれない。それだけの理由で、私は今日1日のデートを楽しめなかった…。

先輩は終始ニコニコしてたからさ、いや、うん…。


「はぁ〜楽しかったな〜」


「そ、そうですね…」


旅館に帰ってきた私達は、そのまま各々買ってきた物を置いて、寛いでいた。

夜に大事な話があるって言ってたけど、いつ話してくれるんだろう…。


気になって食欲とか諸々湧いてこないんだけど…。


「春奈〜。温泉行く?」


「いや、私はまだ…」


「そう?じゃあ先に入ってくるな〜」


「ど、どうぞ…」


先輩が温泉に行ってしまい、残された私は思わずメグへと電話をかけた。

こんな状態で1人でいるなんて絶対無理だし!


「なに〜?」


「どうしようメグ!私、先輩と別れちゃうかも!」


「…はい?いや待って待って!?なんで急にそんな話になるわけ?」


「だ、だって…今ね?先輩と2人で旅行来てるの。でも、今日の夜大事な話があるって言われて…」


「はぁ…。それでだけで泣いてんの?」


「だって!別れるとか言われたら…私もう…」


不思議と先輩の前では耐えれていた涙が溢れてくる。

メグが慰めてくれるけれど、その声も段々と遠くなっていく気がする…。


「前さ、私先輩に手を出されないって言ったじゃん?それもあってさ…」


「…あんた大好きな先輩が、別れるとか言ってこないと思うよ?もう少し相手のこと信じても良いんじゃない?」


「…いや分かってるけど!でもさ--」


「絶対大丈夫だって!考えてもみな?別れる人と旅行なんて行かないでしょ?それこそ、旅行行く前に別れるって切り出すよ!」


「…そうなのかな…?」


「あんたね?一々そんなことで心配してたら身がもたないよ?先輩はあんたが思ってる以上にあんたのこと好きなんだから!」


「でもさ、メグ--」


その時、10分前に出て言ったはずの先輩が帰って来た。

昨日2人で入った時は30分近く入ってたから大丈夫だと思ってたのに…!


「春奈...?なんで泣いてるんだ?」


「せ、先輩…。いや、これは別に--」


「この子〜!先輩から振られるかもって心配してたらしいですよ〜!」


私が慌てて否定しようとしたその時、スピーカーにしてないにも関わらず大音量でメグの声が聞こえて来た。

そんなハッキリ言わないでよ!恥ずかしい!


「…本当なのか?」


「…だって、大事な話があるって…」


「…はぁ〜!大丈夫だって。私がどんだけ春奈のこと好きだと思ってるんだよ!も〜!」


そう言って優しく抱きしめてくれる先輩からは、シャンプーのいい匂いがした。

昨日私も使ったものと同じものだ…。


「ちょっとメグ…。恥ずかしいから電話切ってくれる?」


「…大事な話ってそっちですか!?なんかごめんなさい!」


そう言うと、メグは速攻で電話を切った。

この反応、なんか誠也もおんなじようなことしてた気がする…。


「春奈がなんでそう思っちゃったのか、色々心当たりあるんだけどさ…。私も恥ずかしかったからさ…ゴメンね?」


「ど、どういう意味ですか?」


「なんて言ったらいいかな…。本当は夕飯食べてからいうつもりだったんだけどさ…。春奈がどう考えてるかわかんないけど、私は春奈と…その…したいの!」


「し、したい…とは?」


「…も〜!察して欲しかった!私だって、春奈に色々したいってこと!」


なんでそんなに顔を赤くしてるんだろう…。

私に色々したいって、普段から結構なんでもされてる気がするんだけど…。


「…どう言えばいいかな。いいや!今日、寝かせないって言えばわかる?」


「寝かせない…ですか?」


「紅葉並みの天然か!?とにかく、寝かせないから!分かった!?」


「は、はい!」


なんだかよく分からないけど、とりあえず先輩はかなり必死なので返事はしておく。

見たこともないくらい顔を真っ赤にしている先輩が可愛くて、別れるとか思ってたことがバカらしくなる。


そう考えると、途端に今日のデートを楽しめなかったのが悔やまれる…。


そしてその夜、昨日と同じように1つの布団で寝ようとした私達--私は、その時になってようやく全てのことが分かった。


先輩が恥ずかしがっていた理由も、メグや誠也が照れてた理由も、諸々全て…。

そして、本当に私はその日寝かせてもらえなかった…。

次回のお話は4月4日の0時に更新します。

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