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第14話 私が意識し始めた日

 私が目を覚ましたのは、いつもより早い6時30分だった。

 昨日のゲームセンターでの光景が夢にも出て来て、目が覚めてしまった。


 まだ昨日の恥ずかしさが残ってる私は、そんな光景を夢にまで見て、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。

 数分悶えてた私は、なんとか気持ちを落ち着かせることができた。


 気持ちを落ち着かせた私は、とりあえずスマホをいじり始めた。

 まだちょっとだけ顔が赤い気がするのは多分気のせい…


 最近読めてなかった、雫ちゃんがオススメしてくれた小説を読み始めると、お母さんが私を呼びに来てくれる頃には、すっかり顔が真っ赤になってしまっていた。


 この間、朝はこの小説を読まないほうがいいと決めたばっかりなのに、すっかり忘れて読んでしまった…

 女の子同士の恋愛小説は、昨日のことがあった私にとっていつも以上の破壊力があった。


 しかも、ちょうどお話の中でもお食事会が開かれてて、最近出て来た子と主人公の女の子が手を繋いで歩いているって光景が書かれてて、なんか既視感を覚えてしまった。


 ちょうど…昨日の私たちみたい…


 お母さんが部屋で悶えてる私を見て、発した一言で私は完全に思考が止まってしまった。


「どうしたの?好きな人でもできた?」


「ふぁい!?」


 思わず変な声が出てしまった…

 好きな人ができたって…


「あ〜うん。分かったから早く降りて来なさいね」


 なんかお母さんがニヤつきながら私の部屋を出て行ってしまった。

 しばらく私は、何も考えることができなくなってしまって放心状態になっていた。


 数分経って思い出したようにリビングに降りた私は、お母さんの顔を見るなり、ちょっとだけ顔が赤くなっていくのを感じた。

 お母さんが変なこと言うから…


「昨日何かあったんでしょ?何があったの?」


 席について朝ごはんを食べようとした私に、更に追い討ちをかけて来るお母さん…

 なんでちょっと笑ってるのか…


「べ…別に?何もなかったもん…」


「じゃあなんで顔が赤いのよ…。好きな子ができたんでしょ?」


 うちのお母さんは何故か私に好きな人ができたとわかるとガツガツ来る…


 中学校の時も告白された事を相談するとこんなふうにガツガツこられてちょっとビックリした記憶がある……


 しかも昨日のカフェでの皐月ちゃんみたいにすっごいニヤついてるし…


「そんなんじゃないって…ほんとに…」


「ふーん。まぁあんたがそれでいいならいいんだけど〜。相談したかったらいつでも歓迎するからね」


 違うって言ってるのに…

 相変わらずすっごいニヤつきながらもそれ以上お母さんが聞いて来ることはなかったけど、私の顔は多分、これまでにないくらい真っ赤になってしまってる。


 朝ごはんを食べ終えるまでお母さんは私の方を向いてニヤついてたし、私は顔がすごい赤くなりながら朝ごはんを食べてたし…今まででこんなに恥ずかしい思いはしたことがない…

 なんなら昨日の帰り道より恥ずかしかった。


 ご飯を食べ終えた私は、まだ落ち着かないまま自分の部屋に戻って学校に行く用意を始める。

 そんな時、手元にあったスマホが鳴った。


 電源をつけて見ると、そこには、雫ちゃんからのメッセージが表示されていた。

 さっきまでのことがあって、私はまた顔が赤くなっていく。


「昨日はお疲れ様。今日私寝坊しちゃったから一緒に行かない?」


 昨日のことがあって、雫ちゃんに会うのがなんとなく恥ずかしくて一瞬断ろうかとも思ったけど、せっかく誘ってくれたのに断るなんてできなくて、結局オッケーしてしまった。


 急いで準備を終わらせた私は、急いで家を出た。

 玄関で見送ってくれたお母さんは、相変わらずニヤついてたけど…


 玄関を出ると、少しだけ肌寒い空気が私を襲って来た。

 昨日までは暖かかったのに、急に寒くなったみたい…


 玄関を出たところには、少しだけ寒そうにしながらもほんのり頬を染めた雫ちゃんが待ってくれていた。


「お待たせ〜。ごめんちょっと遅れちゃって…」


 雫ちゃんは何も言わずに首を振るだけだったけど、その仕草がちょっと可愛かった。

 しかも、なんでだか頬を染めているから私までちょっと顔が赤くなって来てしまう。


 そのまま学校に向かう私達は、昨日の事とか、雫ちゃんがオススメしてくれた小説の事を話しながら歩いてたんだけど、あと少しで学校に着くと言うところで、校門の前にいた男の子が私達の方を見て、走って来た。


「あの人…紅葉ちゃん。ごめんなさい。先に教室に行ってて…」


「え……うん……。また教室でね…」


 もう少しお話ししたかったけど、仕方ない。

 ちょっとだけ残念に思いながら向かって来る男の子をよく見て見ると、金曜日に雫ちゃんと中庭で話してた男の子だった。


 眼鏡をかけてるイケメンの人で、なんでだか少し複雑な気持ちになってしまった。

 同じクラスの人なのか、何処かで見たことがあるような感じがした…


 それでも、雫ちゃんに先に教室に行っててと言われてしまったから、2人が何を話すのかを聞くことはできなかった…


 私が教室に着いて数分したら雫ちゃんが教室に入って来たけど、酷く疲れたような顔をしてた。

 何があったのか聞きたかったけど、私は皐月ちゃんとお話ししてたから話しかけることはできなかった。


 雫ちゃんの後に少しだけ嬉しそうなさっきの男の子が入って来た。

 ほんとに何かあったのかな…


「どうしたんだ?何かあったのか?」


 私が教室の入り口を気にしてたからか、お話ししてた皐月ちゃんが気にしてしまったみたい…


「ごめんね。別になんでもないよ。あんな男の子うちのクラスにいたっけ?って思ってさ。」


「ああ。あいつ影薄いからな。普段はやる気無さそうな顔してるし。確か名前は…平川翔真君じゃなかったかな」


「へ〜。そうなんだ…」


「なんだ?あいつが気になるのか?」


「別に……そんなんじゃないよ。ただちょっとね…。そういえば、美月ちゃんがまだ来てないね。珍しい…」


 ただその平川君と雫ちゃんが何を話してたのかすごく気になるだけなのに…

 というか、なんでこんなにモヤモヤしちゃうんだろ…

 別に私と雫ちゃんはなんでもないのに…今朝のお母さんのせいで余計に雫ちゃんを意識しちゃってる気がする…


 それを誤魔化すために珍しく来てなかった美月ちゃんの話題を出したんだけど、皐月ちゃんから返って来た答えは意外なものだった。


「美月は多分、今日は来ないゾ。昨日の夜になんか色々あったらしいからな。」


「色々って?」


「ん〜。そりゃ秘密〜。」


 皐月ちゃんは悪戯っぽく笑って誤魔化してたけど、重めの理由じゃなくてホッとした。

 体調が悪いとか、病気になっちゃったとか…


 皐月ちゃんの顔から見ても、思ったよりは軽い理由なのかもしれない…


 美月ちゃんが来ないままHRが始まってしまった。


 雫ちゃんは教室に入って来てからはいつも通り窓の方を眺めて過ごしてしまったし、オマケに酷く疲れてるみたいだった。


 今日は昨日とは違って何もないかも知れない…

 って何を期待してるんだろう私…


 今日の1時間目は数学の授業だったからもう当然のように私は眠りについた。

 いつもは授業が終わってから目が覚める私だけど、今日は何故か授業が終わる前に目が覚めた。


 でも相変わらず先生が何を言ってるか分かんない私は、起きてはいるけど薄目を開けて雫ちゃんの方を眺める事に決めた。

 雫ちゃんの方を向いてみると、偶然なのか雫ちゃんが私の方を見ててちょっとびっくりしちゃった…

 でも私の方も雫ちゃんを眺められるし、何とか我慢して声を上げなかった。


 授業が後何分で終わるのか、角度的に見えない私は、後何分雫ちゃんを見てられるのかちょっと楽しみにしながら雫ちゃんを眺めてたんだけど、すぐに黒板の方を向くと思ってた雫ちゃんが私から目を離さないからこっちが恥ずかしくなってしまった。


 私が今寝てると思ってるから私をこんなに見てるんだろうけど…恥ずかしすぎる…

 何だかだんだん体が熱くなって来た…


 1時間目の授業が終わってからも、私はさっきの事で頭がいっぱいで、皐月ちゃんが話しかけて来てくれてるのに、話半分で聞いてしまっていた。

 もしかしたら、今までも私が寝てる時、雫ちゃんは私の寝顔を眺めてたんじゃ…


 そう考えただけで、もう恥ずかしすぎてどうにかなってしまいそう…

 朝、お母さんのせいでいつもより雫ちゃんを意識してしまってるのに…


 もう2時間目以降、その事しか考えられなくて…お昼休みもずっとその事しか考えられなかった。

 雫ちゃんは2時間目からは疲れが取れた。みたいにイキイキしてるし…


 いつもなら一緒にご飯を食べてくれる美月ちゃんが今日はお休みだし、皐月ちゃんはお弁当じゃないみたいだし…

 1人でご飯を食べてる最中も、5・6・7時間目も、雫ちゃんのことで頭がいっぱいだった…


 今日は本当にずっと雫ちゃんのことを考えてる気がする…

 そんな事を思って帰ってたら、制服の内ポケットに入ってるスマホが震えた。

 取り出して見ると雫ちゃんからメッセージが入ってた。


「今日の朝の事はごめんね。あんまり気にしないで。それと、今日2時間目くらいから様子がおかしかったけど何かあった?」


 一瞬1時間目の件を聞こうとも思ったけど恥ずかしかったし、私の勘違いとかだったら…って考えると聞けなかった。


「別に大丈夫!ありがと!」


 心配してくれてたんだ…ちょっとだけ申し訳ない気持ちと、嬉しいっていう気持ちが湧いて来て、また雫ちゃんのことを考えてる私がいた。


 家に帰っても雫ちゃんのことが頭から離れなくて…それと同時に、朝見た男の子の事も頭から離れなくなっていた。


 雫ちゃんは気にしないでって言ってたけど無性に気になって来てしまった…

 男の子本人に聞くわけにもいかないし、雫ちゃんは教えてくれないだろうし…


「学校で何かあったの?」


 夜ごはんの時もそのことで頭がいっぱいだった私に、お母さんが異変を感じたのか聞いて来た。

 というか、 元々お母さんが変なこと言うから …


「私のせいにしないでよ…でも、好きな子ができたんでしょ?良かったじゃない 。」


「だからそんなんじゃないってば!」


 ちょっと怒りながら言ってみたのにお母さんは更に笑って、「分かった。分かった」って…

 ほんとに分かってるのかな…


 夜ご飯を食べ終わって、20時頃に急激に眠気が襲って来た。

 いつもは21時とかに寝るんだけど、今日は早めに寝る事にした。


 もう今日は色々あって疲れてしまった…

 昨日美月ちゃんに貰ったサメの抱き枕を抱きしめて、今日は眠った。


 私は、寝るまで、雫ちゃんのことが頭から離れなかった…

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