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第138話 攻略法

今回は皐月ちゃん視点でのお話になります。


というか、この件が片付くまでは皐月ちゃん視点でのお話になります...


葉月に納得してもらった翌日、案の定美月は学校に来ていなかった。

逆に、来られてたらどんな顔で会えばいいか分からなかったからちょうどいい。


対策もないもないまま美月と対峙すると、ほぼ確実に勘付かれてしまう。

その上、私は押しに弱いところがある。

今の状態の美月が泣きついて来たら、それは葉月以上に破壊力がある。

耐えられるかどうか分からないのだ。


凛は相変わらず学校に来てないし、多分向こうではゲームに専念するとか言って学校には行かないだろう。


いや、今はあんな奴のことはいい。

問題は、美月にどう説明するかだ。


葉月の時みたいに海外に行く本当の理由を話すわけにはいかない。

ただでさえ1人残されるのに、それが自分のせいだとか誤解するといけない。


美月のせいではなく、単純に私の心の弱さが原因なんだから…。


(ていうか、こういう時相談できる相手いないんじゃ…)


相談するときはいつも美月か凛に相談していた。

つまり、今の私には頼れる相手がいないのだ。


紅葉は論外だとして、緑川は…紅葉と現在進行形でいちゃついているから却下。


「ていうか、なんで緑川はそんなに顔赤いんだよ…」


「は!皐月さんいいところに!紅葉ちゃんを止めてよ!もう私無理!」


「は?いや、何やったんだよ紅葉…」


「え!?別に何もしてないってば!」


教室の隅の方でいちゃついていた2人に声をかけると、案の定緑川には助けを求められる。


それにしても…この2人、鈴音先輩たちみたくなるかもな…。

さっさとどうにかしないと今後の美月が大変だ…。


自分の好きな人が他の人とイチャついているのを止める苦しさは、私が一番よく知っている。

そんな思い、美月にはさせたくない。


「とりあえず、緑川は何があったか話してくれないか?」


「いや、紅葉ちゃんが今度お泊まり会しようって!」


「2人で…?」


「いつものメンバーで!」


「…何か問題があるのか?」


「は〜!?」


2人きりならまだしも、いつものメンバーならさほど問題にはならないだろう。

そう思っての私のツッコミだったけれど、緑川には十分問題だったみたいだ。


そもそも、なんでそんなことでいちいち照れているのか…。

鈴音先輩たちもそうだけど、照れる基準が全然分からん…。


「いい!?そもそも、私は友達とどこかに泊まったこととかが無いの!それがいきなりお泊まり会とかハードル高すぎるんだって!」


「しらねぇよ…。そもそも、2人きりじゃないなら良いじゃん。私たちも誘ってくれるんだろ?」


「うん!予定が合えばだけど!」


「ほら〜。別にいつも通りの遊びだろ?」


「だけどさぁ〜!」


「それとも、緑川は紅葉と泊まるのが嫌だって言いたいのか?」


私がニヤつきながらそう言うと、緑川は慌てた様子でそれを否定した。

それを良いことに、流れで承諾させる。


紅葉が一緒に泊まるのが嫌だと言われた瞬間泣きそうになったのも大きいだろう。

私にとってはこんな会話どうでも良いんだが…まぁ一応くっつけたのは私だし責任は取ろう。

少なくともこの国にいる間は…。


まだいつやるのかが未定らしいから私と凛が誘われるなら参加できるかは怪しいけれど、まぁそこら辺はなるようになるだろう。


私たちが参加できないとなれば、多分美月も参加しにくいだろうから…緑川には頑張ってもらうしかないが…。


いや、それはそれで面白いか…。

恥ずかしがる緑川なんてレアだし、紅葉は変に純粋だから手を出したりはしないだろう。

それでヤキモキする緑川もまた面白いかも…。


「皐月さん…。あなた、何か良くないこと考えてるでしょ…」


「ん?なんのことだ?身に覚えがないけどなぁ〜?」


「あなた、絶対来なさいよ!?来なかったら許さないから!」


「まぁ〜できればな」


緑川にも紅葉にも、海外行きの件は話していない。

確かに話さないといけないことかもしれないけど、この2人にもどう切り出したら良いのか分からないのだ。


2人とも高校に入ってからの付き合いだから、どう説明したら良いのか分からないし…。

そもそも、私と凛が海外に行くなんてどうでも良いと思ってるかもしれないしな…。


結局その日、1日の授業を真面目に受けず、美月にどう説明するかを考えるだけで終わってしまった。


まぁ、いくつか案は出たが、その前に凛本人はどう考えているのかが知りたかった。

あいつが元々海外に行くと言い出したんだ。となれば、当然美月にも説明しなければならないだろう。


しかし、この時の私は忘れていたのだ。

凛がただのゲーム馬鹿ではなく、世界レベルのゲーマーだと言うことを…。


「私?前々から美月には話してるよ?もちろん理由はちょっと違うけど」


凛のゲーム部屋を訪ねて考えを聞いたところ、帰って来た返事がそれだった。

なんでも一年以上前から海外に移住したいと思っていた凛は、私に内緒で美月に相談していたらしい。


なんで私ではなく美月なのか。それは「私に相談したら猛反対されると思ったから」だそうだ。

まぁ実際、猛反対していただろうけども!


「違う理由ってのは?」


「私、大会の度に海外行くでしょ?それが面倒だから、いっそのこと海外に住みたいって。幸い英語は喋れるし、海外に知り合いもいるからね」


「それだけで海外に住みたいって言うのは違う気もするけどな…」


「だって〜、いちいち日本から手続きして海外に行くの面倒なんだもん!オンラインでの大会だとろくな賞金でないし!」


「金目当てかよ…。いや、それで美月はなんて?」


「『凛の将来に関わることだから、私には決められない』って言われた。そういう大事なことは人のアドバイスを聞くより自分で判断しないとダメって」


「美月らしいな…」


実際その通りだろう。

いくら小さい頃からの付き合いだと言っても、人の人生を大きく変えるかもしれない決断に口出しはしにくい。


そういう大事なことは本人が納得した結果ならそうするべきなのだ。私も同じ考えだし…。


だからと言って、今回の件美月が納得するかと言われれば微妙なのだ。

頭ではそう分かっていても、理解はできないということがあるように、今回もその類だろう。

美月は聖人ではないのだ。


「じゃあ、紅葉たちにはどう説明するんだ?」


「ん〜。適当かな。ぶっちゃけると、私はずっと家にいてあんまり関わりが無かったし、そこまで真剣に伝える必要はないかなって。そもそも、私が真剣になるのはゲームだけだからね。そういうのは性に合わない!」


「はぁ…。気楽で良いな…」


「皐月もそんなに重く考えなくて良いんじゃない?結局自分が納得してるなら、その旨を伝えればいいんだし。親御さんの許可を貰ってるのに友達の許可がもらえないから行かないとか、それはそれでおかしいでしょ?どれだけ友達に依存してるのって話」


「それは正論だけどさ…」


私は凛みたいに割り切って考えることはできない。

それなら、そもそも友達に海外に行くことになったっていう報告すらする意味がない。


いや、そこでいくら反対されても行くことは決定しているから…。う〜ん。頭がこんがらがって来た…。


「そういえば聞いてなかったけどさ」


「ん?」


「いつこの国を出るんだ?年末を向こうで過ごすってのは分かったけど、正確な時期は聞いてなかったなって」


「12月の中旬に向こうで大会があるから、それに合わせるかな。ちょうど〜後1週間弱!」


「そういう大事なことはもっと早く言え!」


私は思わず凛の頭を叩いた。

急に後1週間でこの国を出ると言われても…。

それまでに準備を済ませて、美月や紅葉たちに相談もしないといけない。


…ハッキリ言って無理では?

準備だけならなんとかなるだろう。

だけど、美月の攻略に1週間ではとても…。


「紅葉ちゃんが計画してるっていうお泊まり会を利用すれば良いんじゃないかな〜!?」


「…どういうことだよ」


「ちょ!叩くのやめてって!話す!話すから!」


涙目でお願いしてくる凛を見て、さすがに反省したと悟り叩くのを止める。

別に力を入れてたわけじゃ無かったから痛いはずないんだけど…なんで泣いてんだ凛のやつ…。


「心が痛いの〜!で、さっきの話!私もそのお泊まり会には参加するから、そこで話せば良いでしょ!?そしたら美月も納得するんじゃない?」


「…なんか、ズルい気がしないか?大事なことなのに、そんな軽い感じで話すのは…」


「重い話だから、あえて軽めに話すんじゃん!重い話なんて、重い雰囲気で話されたら余計重くなるよ!?」


「謎理論やめろよ…。なんとなくわかるのがまた嫌だわ…」


しかし結局、私が考えていたものにもその案は入っていた。

そんな急に紅葉がお泊まり会を実行できるかは知らないが、持ちかけてみる価値は充分あるだろう。


一応奥の手も用意しておいて、もしもの時に対処できるようにしておこう。

できればこの手だけは使いたくないが…。


そう決意した私は、早速紅葉に確認の電話をかけた。

次回のお話は2月24日の0時に更新します。



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