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第133話 理由

約束の日、私は久しぶりにお母さんに起こされずに起きることができた。

というか、緊張しすぎてろくに眠れなかっただけなんだけども…。


待ち合わせはお昼すぎだけど、どのタイミングで自分の気持ちを伝えるかとか、そもそも伝えられるかなとかさ…。


だって、こういうのって初めての経験でどうすれば良いのか分からないし…。

妙に落ち着かなくて全然寝付けなかったんだよね…。


「で…なにその顔」


「いや〜?眠そうだなぁ〜って!」


「私が言ってるのはそうじゃなくて、なんでそんなに笑ってるのってこと!」


「え?面白そうだから?」


「なにそれ…」


朝ごはんを食べに下に降りた時、案の定お母さんがニヤついていたせいで、思わず出た言葉がそれだった。


絶対気付いてるし…。どうするのこれ…。

帰って来たらまた散々言われそうなんですけど!


私が出した結論に文句は言わないと思うけど…それでも子供みたいにからかってくるのは本当にやめてほしい。

鈴音先輩達みたいには多分なれないし、そもそもお母さんから色々言われるのは…。


「大丈夫だって〜!ちゃんと節度はわきまえてるから!お母さん、外面は良いのよ?」


「外面って…。それ子供の前で言うこと?」


「まぁまぁ!お母さん、今日はお仕事だから帰って来たら色々話してね!」


「絶対やだ!」


「え〜?じゃあ相手の子に聞こうかなぁ〜?」


「今節度はわきまえてるって言ったばかりだよね!?」


相変わらずのお母さんに呆れながらも運命の待ち合わせまで少しでも気持ちの準備をする。


だけどそういう時に限って時間が経つのは早くて…。

まだ朝ごはんを食べてから2時間も経過していないと思っていたら、いつの間にか4時間が過ぎていて…。


待ち合わせまで後30分しかない…。

待ち合わせ場所は相手の家だから少しだけ急いで準備する。


「お母さん!これ変じゃないかな!?って、今日はいないんだっけ…」


週末に仕事って、絶対この前休んだ時の埋め合わせじゃん…。

だって、休日出勤なんて死んでも嫌だとか言ってたことあるし…。


初めて相手の家に行くから、少しだけ気合を入れたかったのに…。

変だったらどうしよう。なんか自信が…。


結局ギリギリまで悩んだ末、白のセーターとロングスカートに決めた。

可愛いかどうかは…自信ないけど!

あんまりそっちのセンスはないんだもん!仕方ないよね!


とりあえず相手に今から行くとだけ伝えて家を出る。

どうせ5分くらいで着くと思うけど、迷うかもしれないから一応ね…。

最悪迷子になっても探しに来てもらえるし…。


そんな私の心配は杞憂に終わって、無事に相手の家に辿り着くことができた。

確か1回か2回家の前までは来たことあったかな…。いや正確には覚えてないけど!


それでも、家にお邪魔するのは初めてだったような…。

元々、いつもの公園で待ち合わせにしようってことになってたけど、私が迎えに行くと無理を通したんだよね…。


デートの終わりに言うんじゃ、多分逃げ帰っちゃうからと思って…。

先に伝えてからお出かけしようって勝手に計画してるんだけども…。


いざ目の前にするとさ…家にいた時とは比べ物にならないくらい緊張するよね。

なんかちょっと足が震えてきたんだけど…。


とりあえず、告白する時の言葉をまず最初に決めとこう…。

昨日考えるつもりだったけどそれどころじゃなかったし…。


「私も好き!違う。待って…私も、あなたと同じ気持ちです!…いや、なんかこれも違う。私でよければお付き合いしてください…?いや、これもなんか…」


どうしよう…。なんて言えば良いのかな…。

こう言う時、友達が少ないせいでいい言葉が思い浮かばないんだけど!

なんて言うのが正解?


短過ぎてもあれだし、なんかちょっと上からになっちゃうかもとか…色々考えちゃうんだけど!

これサラッと言える人すごくない!?尊敬するんだけど!


「よく分からないって言うのも、ちゃんと理由があるから違うでしょ…?でもちゃんと好きって事は伝えたいし…。好きだし、取られたくないから付き合ってください?」


結局自分の納得する答えが見つかるまで5分近く考えていた私は、ようやくチャイムを鳴らした。

しっかり付き合いたいって思った理由と、好きって気持ちを伝えて、それから…うん!そこからは気合いで!


そんな呑気なことを考えていた私は、中々応答が無い事に気がついて、もう一回チャイムを押した。


あれ…。今日は一日中いるって言ってなかったかな…。

まさか、入れ違いになっちゃったとかかな!?

だとしたら早く――


「あんた、そこで何やってんの?」


「…」


「邪魔なんだけど…。誰か来てるんだって」


急いで家まで戻ろうとしていたその時、ドアの前から女の人の声が聞こえて来た。

よかった、ちゃんと誰かいる…。

でも…何やってるんだろう。もう一回だけ押してみようかな…。


「ほら〜待ってるんだって。そこどいてくれる?」


「ちょ!お母さんは良いって!私が出るから!」


「なに急に…」


「良いから行って!?絶対私の友達だから!」


そんな会話が聞こえた後、すぐに目の前のドアが開いて耳まで真っ赤にした雫ちゃんが出て来た。

どうしたんだろう…。熱でもあるのかな…。


「いや…うん。大丈夫!ちょっと待ってて!?すぐ準備してくるから!」


「え?あ、うん…」


慌ててドアを開けっ放しで家の中に帰って行った雫ちゃんは、1分もしないうちに荷物を持って出て来た。

もしかして…私の独り言聞いてた…!?


「そりゃ聞こえるよ!遅いから迷ったと思って玄関行ったらさ〜!」


「え!?嘘!?」


「さすがに恥ずかしいって…」


「え〜!?ごめん!聞こえないと思って!」


手を繋ぎながらいつもの公園に行った後、私はそんな事を言われた。

私が玄関の前で色々言っていた時、向こう側では雫ちゃんが恥ずかしくて真っ赤になっちゃってたらしい…。


いや、私も結構恥ずかしいんだけども…。


「でも!雫ちゃんが好きって言うのは…本当だから!」


「うん…。それはもう…。はい…」


「雫ちゃんが他の誰かに取られるのは…絶対嫌だから!私と、付き合ってください!」


雫ちゃんと付き合うと決めた1番の理由は、あの先輩に言われた言葉だった。

『緑川が、3年の〜に狙われてるらしい』という、あの言葉。

名前までは思い出せないけど、それは絶対に嫌だった…。


美月ちゃんの気持ちには答えられなかったけれど、遠慮することが1番ダメだと言われた以上、遠慮するのは逆に失礼だろうし。


私は皐月ちゃんと付き合って欲しいと思ってたから、だったら私が選ぶべきは雫ちゃんかなって…。


そして肝心の雫ちゃんは…少しだけ泣きながらも頷いてくれた。

私は安心からか、自然ともらい泣きしてしまってしばらく2人で泣きあったり、その場で抱き合ったりしていた…。

次回のお話は2月9日の0時に更新します。


テストが終わったはいいけれど、小説の方の書きためが無くなりました。

頑張らないとですね...!

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