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第129話 後悔

今回のお話は雫ちゃん視点でのお話になります。

やってしまった…。

紅葉ちゃんに思わず告白してしまってダッシュで帰ってきた私は、そのまま自分の部屋のベッドで悶絶していた。


そもそもなんでこんなことになったのか…。

鈴音先輩があんなバカな夫婦喧嘩を見せつけてきて気がおかしくなったのか、それとも可愛いと言われて有頂天になってしまったからなのか…。


どちらにせよ、もう取り返しがつかなくなってしまった…。

返事を聞かずに逃げ帰ってきちゃったから、振られるにしてもまだ時間はあるだろうけど…それにしてもあれはないわ…。


なにクールぶって


「私、紅葉ちゃんの事が好きみたい」


とか言っちゃってるの!?バカなの!?

好きみたいって何!?今時小説にもそんな事言う人出てこないんですけど!?


「私のばかぁぁぁ!」


もうどうしたらいいか分からないんですけど!凛さんや皐月さんと言った予想外の助っ人ができて、さぁこれからどうするかって時に!


せっかく作戦なんかもここ数日で考えてて…それが全部…!

と、とりあえず今やってしまった件について協力者の凛さんには知らせておいた方が…。


いや待って、どうせゲームで碌に連絡取れないから…冷静に行くなら皐月さんか…。

鈴音先輩はダメだ。もう少しで冬休みだけど3年はもう自由登校だし、今日あたり春奈先輩を攫う可能性がある。


皐月さんに私がやってしまった事について連絡を入れると、数分後には私の携帯がけたたましく鳴り始めた。

ベッドで顔を真っ赤にしながら悶絶していた私でも相手は分かるのでそのまま出る。


「おい!どう言うことか詳しく!」


予想通り、電話の向こうから怒鳴りつけてくるこの声は皐月さんだ。

私は震える声で、さっきまでの状況を事細かに話し、これからどうするべきなのかの相談を始める。


「紅葉がどう出るかでかなり変わるぞ…。仮に付き合う事になったとしても、多分美月は諦めない。その事に関しては…どうすれば良いのか私じゃ分からない…」


「そもそも、振られる可能性についても考えないといけないし…答えも聞いてなくて逃げ帰っちゃったから…」


「答えをもらえるか…。最悪の場合、避けられる可能性すらあるな。なんで予定外で告白しちゃうかなぁ〜!」


「うっ…。ごめん…」


「いや、告白する事自体は別に悪い事じゃないから良い。ただ、これから紅葉がどう出るか。それが全てなんだよな。今ここで色々考えても仕方ない。とりあえず、明日の放課後凛の家に集合だ。紅葉の性格から考えて、明日は休むだろ」


「…そうね。分かった」


そこで電話を切った私は、夕飯も食べずに即刻眠りについた。


部室での朱音先輩の様子が変だったとか、結奈先輩の雰囲気がいつもと違ったところとか、色々気になるところはあったけれど、そんな事どうでも良いほど、今は自分の精神を安定させたい。


関係ないけど、部室で1番驚いたのは、春奈先輩と鈴音先輩が着けているネックレスがお揃いだった事だったなぁ…。

あれは…ちょっと羨ましいと思った…。


◇ ◇ ◇


そして翌日、皐月さんの予想通り紅葉ちゃんは学校を休んだ。

授業中、何回も横の席の美月さんと目があったから、自体をなんとなく察しているであろう彼女も怖い。


だけど、私は全く別の理由で1日の授業が身に入らなかった。

その理由とは、もちろん告白してしまった事に対しての後悔だ。


遅かれ早かれ告白はしていたんだろうけれど、絶対にあのタイミングではなかったよね!

あのタイミングだけは無かったよね本当に!その場のノリで告白したみたいじゃん!


告白祭とか言う意味のわからない催しで告白する人達と同じくらいヤバイ気がする…。

しかも、成功した2組は噂によるともう別れたとか聞いたし…。どうなってるのホント…。


「そこに関しては、勢い任せで告白した奴らの末路って感じだろうな。あんな大勢の中で告白されて、断る方が怖いだろ。表面上だけ受け入れて、そのあと適当な理由つけて別れればいい。それだけだ」


「そんな悲しい裏話あるの!?」


「裏話っていうか…普通だと思うぞ?大勢の前だと断れないっていう女子は多いしな。割とみんなこういう手法使ってるんじゃないか?」


「世の中、知らない方がいいこともあるって今初めて実感した...」


そんな会話で噂の真相を知ったのは、放課後凛さんの家に向かっている時だった。


皐月さんって、こうやって遠慮せずに本心を言ってくれるから好意が持てる。

変に取り繕ってボカされるの嫌いだし…。


「そういや、これは言って良いのかちょっと迷ったんだが…」


「なに?」


「昨日、あの電話の後な。紅葉から電話がきた」


「はい!?」


「さすがに内容までは言わない約束だから言えないけど…だいぶ混乱してたぞ」


「…だろうね」


あの後、当然私も紅葉ちゃんにメッセージを送ったけれど初めて返信が返ってこなかった。


朝起きた時携帯を見ても、やっぱり返信は無かったし…。

本当に、私はこれからどうすれば良いんだろう。

紅葉ちゃんに振られた場合、もう立ち直れないんだけど…。


「ていうか、昨日紅葉ちゃんと電話で話したなら、紅葉ちゃんがどう思ってるのか分かってるの?」


「そりゃ告白の返事がどうのって意味か?仮に答えが出てたとしたら、適当な理由でドタキャンするだろ。でもまぁ…数日は休みそうだな」


「そう…」


「まぁ、過ぎた事をどうこう言っても仕方ない。これから出来ることを精一杯すれば良い。後、美月も多分何か起きたってことは気付いてるぞ」


「うん…。それは、なんとなく分かってた…」


そうじゃなきゃ、授業中にあんなに睨んでこないよね…。

仮にも告白してきている美月さんに相談するほど、紅葉ちゃんは残酷?じゃないだろうし、1人で察したんだろう。


どこまで察しがいいのか…。本当に、このいつもの3人は…頭がちょっとおかしい。

もちろんいい意味で。


そうこうしているうちに凛さんの家に着き、なぜかゲーム部屋と呼ばれる部屋に通された。

中は…ゴミ屋敷というか、足の踏み場もないというか…。


「おい。この前泊まりに来た時、私と美月でこの部屋片付けたよな?なんだこれ…」


「そんな事はいいから、とりあえず2人はベッドの上で待ってて。あ、カセットとかコントローラーは踏まないでね」


「あのなぁ…」


「ちょっと話しかけないで。集中してるから。この試合終わったら色々話そ…」


それから1時間、複数のモニターで繰り広げられている格闘ゲームの様子を淡々と見せられた。


あんまりこっちの道には詳しくないから全然分からないけど…凛さんは連戦連勝で、見ているだけでもなんだか気持ちいい。


それにしても…私たちが来ているって忘れてない?時々大声であ〜!とか(わめ)くし、誰かと話してるみたいに会話始めるし…。


「よっしゃ〜!優勝じゃぁぁぁ!」


「おい。大概にしないとそろそろ怒るぞ…」


「え!?あ皐月〜!見て見て!オンラインの大会で優勝――」


「私、昨日のうちにこの時間にくるからそのつもりでいろって言ったよな?」


「…ごめんなさい!」


私があげた眼鏡をかけながら涙目で謝るその姿は、まるで子供のようでなんだか微笑ましかった。

それにしても…なんで私達は1時間近く待たされたんだろうか…。


「ほら、説明しろ。今自分が何をしたのか」


「ねぇ皐月…?私、結構すごい事し――」


「なんか言ったか?」


「ねぇ〜!だからごめんってば!最近できた友達から参加しようって言われてさぁ〜!」


それから涙目で状況を説明してくれた凛さんは、すべての説明を終えると皐月さんにチョップをされて泣いてしまった。


でも…飛び込みで参加した大会で優勝するって…どうなの。

凄いように聞こえるし、凄くないようにも聞こえる。


凄かったとしても、この姿を見ている限り…全然凄みが分からないのも納得してほしい。

ほんと、なんで私はあの時この子に協力をお願いしたんだろう…。本当に分からない。


「それで…紅葉ちゃんの件がどうしたって言ったっけ〜」


「本気で言ってるなら凛にはもう少し教育が…」


「待って!?暴力反対!」


「うるさい。私たちを1時間も待たせた罪だ。これ以上時間をとらせるな」


「虐待だよぉ…」


「私は凛の親じゃないんだ。虐待じゃない」


その後、怒られた猫のように萎縮した凛さんは、皐月さんに怯えながらも状況の整理と今後どうするかを一緒に考えてくれた。


意外だったのは、凛さんにも紅葉ちゃんから相談の電話があったらしい。

その時の紅葉ちゃんも、もの凄く慌てていたらしく、皐月さん同様内容は話せないらしい。


そして結局紅葉ちゃんがどう出るか分からない以上対策の立てようがないとの結論に至ってしまった。

強いて言えば、美月さんの牽制をすることしか出来なくなってしまった。


分かりやすくいうと、美月さん1人でお見舞いに行かせるような事は出来ないって事だ。

私が行ってしまうと…悔しいけど余計に混乱させてしまうので私はいけない。


せめて皐月さんには美月さんとできるだけ行動してもらう。


「紅葉ちゃんの次は皐月と美月だもんね。頑張ろぉ〜!」


「私に、美月がなびいてくれれば良いけどな…」


消え入りそうにそう言った皐月さんは、そのまま諦めたように笑った。

次回のお話は1月28日の0時に更新します。


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