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第128話 唐突

私の髪色が変わって数日が経ち、部活もそろそろ再開しようかと言う話が出ていた時だった。

鈴音先輩の入試の合否が分かったのは。


そして、その結果を今日の部活動で報告するとのことで急遽、部員全員が集められることになった。

いつもの4人で放課後部室に向かっている時、だいぶ久しぶりに沙織ちゃんの顔を見た。


誰か分からないけれど2年の先輩と話してて、その横にはなぜかソワソワしている春奈先輩の姿もあった。

少しだけ顔が赤い気もするけど…大丈夫かな?


「意外だな。また先に部室でイチャついてると思った」


「あの人たちの場合、四六時中イチャついてるからなんとも言えないんじゃない?それよりも…なんであなたは紅葉ちゃんと手を繋いでるの?4人なんだから自重しなさいよ…」


「良いでしょ別に〜。それに、私と紅葉ちゃんは約束したもんね〜!」


「…はぁ。なんの約束したのか知らないけど、余計なこと吹き込まないでね?」


「当たり前でしょ。紅葉ちゃんは純粋なのが可愛いんだし!」


なんだか私の知らないところで物凄く恥ずかしい事を言われているような気がするけど必死に我慢する。


こんなのを気にしていたら私の気がおかしくなるもん!

だってさ、ここ最近美月ちゃんと雫ちゃんがずっとこんな感じなんだもん!


何があったの?って聞いても2人は何も答えてくれないし、皐月ちゃんも何も言わないし…。


何か知らない?って聞いても返ってくるのは「近いうちにわかる」という言葉だけ。

怖いんですけど…。いつももうちょっとで喧嘩になりそうってところまで行くんだもん…。


「え?春奈も――」


「もしそうだったら私、どうす――」


「もしそうでも――して、ついでにそこで――ればいいんじゃない?」


「馬鹿なの!?――に決まってる――!」


向こうで3人の会話が激しくなって、ちょっと遠くにいる私たちにもチラチラと内容が聞こえてくる。


別に何を話しているかは気にならないけど…メッセージで教えてくれれば早いのに、なんでわざわざ集めるんだろうとか言ってるのかな。

春奈先輩は事前に結果知ってそうだけどね…。


とりあえず私達はその場を後にして部室へと一足先に向かう。

部室にはすでに朱音先輩と不安げな結奈先輩の姿があった。


「あ…お久しぶりです朱音先輩。その後、どうですか?」


「ん?ああ〜ネットの方は完結させたよ。勉強の方は〜ギリギリって感じ〜」


「そう…ですか。もう書かないんですか?」


「あなたの方がどうかは知らないけど、私はもういいかな〜。半分趣味って感じだったからね。まぁ、そっちの道に進むとは思うけど」


朱音先輩と雫ちゃんが短くそんな会話を交わした後、部室に春奈先輩と沙織ちゃんが入ってきた。


これで後は当の本人が来るの待ちになった。

恵先輩は、どうしても外せない用事で途中から来ると連絡をもらっているからね。


でも、朱音先輩って結局どこの大学受けるんだろう…。

そこら辺知らないんだよね。まぁ知ってるのは多分鈴音先輩だけだろうけど…。


「私は就きたい仕事があるから、結構いい大学目指すよ。それでもなれるかどうかはわかんないけどね」


「就きたい仕事っていうのは…?」


「ん〜。内緒。秘密にしておいた方が後々面白いでしょ?それに、なれなかった時誤魔化し効くからね」


冗談っぽく笑った朱音先輩は、直後に入ってきた鈴音先輩を見て真剣な顔に戻った。

鈴音先輩は肩を落としながら、今までに見た事ないくらいどんよりとした感じで部室の中に入ってきた。


なんだか酷く落ち込んでるけど、どうしたんだろう…。

こんな姿を見ると、いやでも悪い想像をしてしまう。


だけどそんな事を正直にいう人なんて1人もいなく、皆席に座って鈴音先輩が何かいうのを待つ。


「はぁ…。朱音、ごめんな…」


「なによ急に…。あんなに自信満々だったくせに、まさか落ちたんじゃないでしょうね?」


「自信はあったよ…。でも…」


「せん…ぱい?」


春奈先輩が泣きそうな声でそういうと、結奈先輩が少しだけ涙を浮かべ始めた。

鈴音先輩はなにも言わず、持っていたカバンの中から封筒を取りだして朱音先輩に手渡す。


封筒にはどこかの専門学校の名前が書いてある。

多分、合否の紙が入っているやつだと思うんだけど…この反応的に…。


「なによ…」


「見てみな…?」


「なんで私なの?春奈にやらせれば…」


「良いから…」


封筒の中から紙を取り出した朱音先輩は、私たちに見せるわけでもなくしばらく固まっていた。

それから呆れたようにため息をつくと、勢いよくテーブルの上に叩きつけた。


「合格してんじゃないの!紛らわしいことしないでよ!」


『...え?』


「なんて慰めようか必死で考えてた私の苦労返してくんない!?」


そう言い放った朱音先輩は、目の前で必死に笑いを堪えている鈴音先輩を睨みながらそう言った。

そして、この部室にいる鈴音先輩以外の全員がもう一度合否の紙を覗き込んだ。


すると、朱音先輩の言う通り、しっかりと『合格』の文字が書いてあった。

1番安堵したのは春奈先輩だ。さっきまで泣きそうだったこともあって少しだけ涙が出ている。


結奈先輩もちょっと目が赤いけれど、ほっと胸をなでおろしていた。

反対に私たち一年生組はどう反応して良いのかわからず、皆ポカーンとしていた。


そしてとうとう耐えられなくなったのか、鈴音先輩は大爆笑を始めた。

ここ一年付き合ってきた中で1番豪快に笑い、簡単に謝罪をする。


「いや〜どうせならビックリさせたいなって思ってさ〜!いや〜面白かった」


「あんたねぇ…なにがごめんよ!心配して損したわ!」


「いやいや、先に受かっちゃってゴメンね〜って!」


「あんた…推薦で入っておきながらよく言うよね!素直におめでとうって言えないんだけど!」


その後のことは…正直よく覚えてない。

恵先輩が入ってきて状況の説明をしている時に春奈先輩が怒っちゃって…夫婦喧嘩みたいにイチャつきながら揉めるし!


先輩たちはみんな泣いたり笑ったりしてて…正直カオスだったね!うん!


「それにしてもさ〜鈴音先輩も悪趣味だよね〜。私もなんかちょっと泣きそうだったし!」


「私は…なんとなくそんな気はしてたんだよね正直…。入ってきた時ちょっと笑ってたし…」


「え〜!?気付かなかった!凄いね雫ちゃん!」


「そんなことない…と思うよ」


少し頬を染めながらそんなことを言う雫ちゃんが可愛くて、さっき夫婦喧嘩を見ちゃったから…多分あんなことが言えたんだと思う。


「どうしたの?私の顔になにかついてる?」


「え…いや。ただ…雫ちゃんが可愛いなって…」


「ふぇ!?」


ついそんな言葉が出て、気が付いたら顔がものすごく真っ赤になった雫ちゃんが横に立っていた。

私も、自分が何を言ったのか少し後に理解して耳まで真っ赤になったけど!


アレだよ!本当につい口から出たんだよ!

いや、雫ちゃんが可愛かったのは本当だけど、それでも!なんかちょっと恥ずかしい…。


そんな時、不意に足を止めた雫ちゃんは、なんでもない事のように、本当に軽くこう言った。


「ねぇ紅葉ちゃん…」


「ん?ど、どうしたの?」


「私ね?紅葉ちゃんのこと、好きみたい」


「…え?」


「友達としてじゃなくて、1人の女の子として、紅葉ちゃんのことが好きみたい…」


突然そう言われ、私の思考は完全に止まってしまった。

もう少しで家にたどり着くと言うところで、急にそんな爆弾発言をされて…戸惑わない人がいると思う!?


え…ちょっと待って?好きって…?

雫ちゃんが私のことを?そんなことってある?冗談とかじゃなく!?


「本気だよ。私、紅葉ちゃんが好き。大好き…」


「え、いやあの…」


「紅葉ちゃんが美月さんと付き合うのは良いけれど、私が紅葉ちゃんの事を好きだってことは...伝えておきたくて...」


そう言うと、雫ちゃんは私をおいて走り去ってしまった。

後ろ姿だけでも耳まで真っ赤にしていることがわかって、今にも頭から何か出そうなほどだった。


残された私は、そのまま数分間その場に立ち尽くしてしまった。


雫ちゃんが何を言っているのか理解が追いつかなかったのもあるけれど、唐突すぎて…まるで夢みたいだった…。

次回のお話は1月25日の0時に更新します。


取り返しのつかないミスをしてしまい、物凄く病んでおります。

今年のテストは本当にヤバいので...はい。


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