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第120話 反省会

今回のお話は凛ちゃん視点でのお話です。

「で〜?緑川から何を貰ったって〜?」


「えへへぇ〜。前から欲しかったブルーライトカットの眼鏡を〜」


「正直に言わないでよろしい〜!!」


文化祭の全日程が終了した翌日、私の普段部屋の方に集合したいつものメンバー2人は、部屋に入ってくるなりこんなテンションだ。


皐月はずっと私を睨んで怒ってくるし、美月は呆れてフォローもしてくれない。

部屋の中には、文化祭の射的で手に入れた新しいゲーム機やぬいぐるみ、その他諸々が散らかっている。


片付けるのも面倒だし、ゲーム部屋の方に持っていく訳にもいかずこんな状態になっているのだ。


そして現在、私は目の前に座っている皐月に頬をつねられて緑川さんに協力した件で事情聴取を受けている。

昨日、複雑そうな顔をした緑川さんから約束の品を渡された時は凄く嬉しかったなぁ〜!


「だってさ〜!長時間ゲームやってると眼鏡かけないといけなくなるじゃん!それは嫌なの〜!」


「そんな事聞いてるんじゃないでしょうが〜!なんで簡単に物で釣られるのかを聞いてるんだよ!」


「ほら!魚も釣りの餌には勝てないじゃん?それと同じだってば!」


「私相手に謎理論で逃げられると思ってるのか?舐められたもんだなぁ〜!?」


「ねぇ〜!?結果的には何もなかったんでしょ!?ほんといじめは良くないと思うなぁ!?」


そう。私がここまで取り乱している理由は、目の前の皐月が単純に怖いせいだけじゃない。


美月から話を聞いた限り、昨日は特質すべき事は何も起こらなかったらしい。

だから、私が緑川さんに協力したのも全て無駄という事でチャラにして欲しいんだけど…。


「なる訳ないだろ!美月の起点でどうにかなったようなものなんだから!」


「そうなの?私大雑把な説明しか受けてないんだけど!?」


「美月が緑川にそれとなく圧をかけて、緑川の頭が想像以上に良かったから逆に助かってるんだよ!昨日何かあってたらお兄さんに言って1週間勉強漬けにしてたからな!?」


「皐月は私を殺す気なの?そんなの、1日で私限界来るんだけど?」


震える声でそういうと、皐月は目がものすごく怖い笑顔を向けて来た。

これ…本気だったわ…。私、下手したら死んでたわこれ…。


これまでほとんど勉強なんてしてこなかった私が1週間勉強漬けになんてなったら…もう無理!

ていうか、1週間もゲームが出来ないなんて、禁断症状が出るって!


「とりあえず、皐月はそこらへんで勘弁してあげて?とりあえず今は現状の整理と、今後の作戦会議が最優先」


「…はぁ。そうだな。凛もちゃんとアイデア出せよ?」


「ふぁい…」


「とりあえず当初予想していた展開は、文化祭で私が振られて緑川さんと紅葉ちゃんが付き合う展開だった。ただそれは、緑川さんが慎重過ぎた事で回避されて、私の方もほぼダメージ0。ここまで大丈夫?」


美月が現状をわかりやすく報告し、私と皐月は頷く。


確かに、当初想定していた展開よりはだいぶマシだし、なんなら理想的だ。

私が変に「安定行動を取れ!」みたいな事言ったのも影響してるのかな…。


あの場の思いつきで適当に言っただけだし、格ゲーの世界はそんなに甘くない。

いやこの話は今はいいとして!


緑川さんがかなり慎重な人で命拾いしたんだから、素直に感謝しておこう。


「美月のダメージが0って言うよりは、そもそも振られたのか怪しいって言う問題もあるよな。理由を聞く限り、脈アリの可能性も十分あり得るし、その反対もしかりって感じだ」


「まぁね。ただ、振られてそこから好きになってもらう展開に持っていかないで済むって言うだけで、大分今後の展開は楽だと思うの」


「でも〜これからどうするの?」


「まぁ、紅葉が言ってた理由まで合わせて考えるなら、まず紅葉に恋愛感情ってものがなんなのか教える必要があるよな。まぁ…かなり危険だけど」


「え?危険ってなんで?」


私がそう言うと、2人とも「マジかこいつ…」みたいな顔で見て来た。

なに?私そんなに変なこと言った!?


「現状、紅葉が恋愛感情というものを分からないって理由から美月の告白を断っている。ただそれは、緑川のことも好きかどうか分からないとも言える。実際、緑川が告白を辞めた理由はそういうところにあるんだろ」


「あのさ、もっと分かりやすく言ってくれない?」


「つまりね?紅葉ちゃん視点だと、私と緑川さん。どっちが好きなのか。そもそも好きってなんなのかが分かってないの。ここまでいい?」


「うん」


「で、好きって気持ちがどうなのか教えるってことは、緑川さんのことが好きだと自覚してしまう恐れがあるってこと。わかる?」


「あ〜そういうことね!分かった!」


でも、その場合当初のプランを実行すればいいだけであって、別に何も変わらないのでは?と思うのは私だけかな。


せっかくかなり良い状況で来てるんだから、このまま有利な状況をキープしたいのはわかるけど…。


さっき皐月がチラッと言ってたけど緑川さんも頭がいいみたいだし、変に慎重になりすぎると…って可能性はある。

実際、そのせいで緑川さんは絶好のチャンスを逃したみたいだし。


「最悪紅葉ちゃんが緑川さんを好きだと自覚した場合は、当初のプランに切り替えればいいけど、そこまでしっかり認識されると、こっちが厳しくなるのよね…」


「まぁ、ただ大前提として紅葉に恋愛感情を教えないと私らの計画も前に進まないんだよな〜」


「ねぇ〜気になったんだけどさ、緑川さんはどうするんだろうね?」


「...は?今それ関係あるのか?」


「だってそうでしょ〜!?私が緑川さんの立場だったら、こっちにダメージがほとんどないのって分かりきってるし、すぐにでも行動を起こしたい。だって、下手に手をこまねいてると自分が負けるかもなんだから!」


緑川さんも、今考えていることは私たちとほぼ同じだろう。

美月が自分の正体を明かすまで、紅葉ちゃんとの距離感は緑川さんの方が圧倒的に近かった。


だけど今そのアドバンテージはほとんど差がないと言っていい。

なら、緑川さん自身が取る行動は、やっぱり紅葉ちゃんに恋愛感情とは何かを教えることだと思うんだよね。


だから、それをうまく利用すればいいんじゃないかとも思う。


「なるほど。詳しく説明して?」


「つまりね?変に攻めて墓穴を掘るより、少し危険でも相手に攻めさせてその穴を突く方がいいと思うの。向こうも様子見をしてくるんだったら、余計にこっちは紅葉ちゃんとの距離を詰めればいいわけだし!」


「なるほどな?ただ、穴を突くって具台的になにをどうするんだ?」


「自分が攻めてる時って、余程の人じゃない限り防御のことは考えないのね?だから、紅葉ちゃんを攻めるんじゃなくて、緑川さん自身を攻めるっていうのどう?」


『...は?』


2人して顔を見合せたあと、仲良くハモってそんな声を出した。

いや、そんな顔されるのはわかるけどさ...あからさまにバカを見る目で見るのやめてくれる?


まぁつまり、紅葉ちゃんを攻略する前に緑川さんを攻撃して、あわよくば手を引いてもらおうって魂胆だ。


そりゃ簡単じゃないだろうし、かなりキツイだろうけど相手側が紅葉ちゃんに恋愛感情を教えてくれるんだし、こっちの仕事はほぼない。


同時に攻めてもいい事なんてほとんど無いし、友達と好きな人が被れば身を引く女の子は多くはない。だけど、一定数は必ずいるからその可能性に賭けてみるのも手だと思うんだよね!


諦めなくても、緑川さんが紅葉ちゃんと付き合い始めてしまった後の展開も少しは楽になるはずだ。


だって友達なんだし、さりげなく紅葉ちゃんとの仲を探ったりすることも可能だろうし!

それこそ、自分たち独自で調べるより本人たちから聞いた方が早いし正確だろう。


「でも、そうなった時は紅葉ちゃん本人から聞けば良くない?」


「いや、紅葉ちゃんってどっちかというと、人に相談するってよりは1人で抱え込んじゃうタイプでしょ?なら、いくら美月でも全部話すとは思えないよ。その点、緑川さんはズバズバ相談するタイプだと思う!」


「それは...あるな。確かに悪くはないかもな。その場合、緑川の友達になって色々聞いてもらうのに適任なのは〜凛だな」


「え!?私!?」


「他にいないだろ!ちょうど文化祭の時の協力者なんだし、仲良くなる土台は十分じゃないか?」


自分で提案しておいてなんだけど、こういう裏があって友達になったりするのはちょっとはばかられる…。


あくまで理論上の話であって、考えてる時はゲームみたいで楽しかったけど、いざ自分がやるとなると…。


緑川さんは自分の計画が失敗しても、ちゃんと報酬を払ってくれるようないい人だし…。

ていうか、また何か買ってあげるとか言われたら全部話しちゃいそうで怖いんだけど…。


「なら、単純に相談されるような友達になればいい。私たちに情報を流すかは、凛が決めればいい。流したくないのならそれでも最悪いい。ただ、私たちの邪魔をしないのであれば、私は容認する」


「そうね。あくまで凛任せにしようか。凛が本気で緑川さんと友達になりたいならもちろん止めないし、相談の内容を私たちに話すかは任せる。その件で皐月が何もしないっていうのは私が保証してあげる」


「まぁ…それなら…」


「じゃあ当分はそれでいいだろ。状況が変わればまた考えればいい。とりあえず、緑川がどう出るのか見て私達は今後の作戦を考えようか」


『賛成〜』


◇ ◇ ◇


その後2人が帰った後、私は珍しくゲーム部屋に行かず、そのまま部屋のベッドでどうするべきなのかを考えていた。


緑川さんは多分いい人だし、私を信頼して相談してくれた内容を、そのまま皐月たちに流すのは、いくらなんでも違う気がする。


それは、友達云々の前に人としてどうなのかって問題になるし。

とりあえず、ほとんど話した事なんてなかったし、友達になれるかどうかは分からないけど、少し頑張ってみよう。


そう決意して、珍しく徹夜でゲームをせずに眠りについた。

関係ないけれど、私が徹夜でゲームをしなかったのは数ヶ月ぶりだったりする...。

次回のお話は1月1日の0時に更新します。


皆様、今年は大変お世話になりました。

来年もよろしくお願いします。


良いお年を( *´ `*)

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