第11話 お食事会 第2部
何も考えずに皐月ちゃんの後ろを歩いてた私に、凛ちゃんが突然謝って来た。
「ごめんね。遅れちゃって。ゲームの大会が近くてさ…」
「別にそんなに遅れちゃた訳じゃないし。私もついさっき来たところだったよ。」
「そう言ってもらえると嬉しいよぉ。」
泣きそうな顔をしてそう言った凛ちゃんはちょっぴり可愛かった。
「凛。言い訳するな。ゲームの大会で学校休めるからって…頑張る方向間違ってるんじゃないの?」
凛ちゃんと皐月ちゃんってさっきも思ったけど仲良しなんだ…
ていうか!さっきから雫ちゃんも奥田さんも全く目を合わせてくれないのはなんでだろ…
寂しいんだけど…
「凛ちゃんってゲームの大会に出てるような凄い人なんですか?」
「全然すごくない。ゲームの大会に出たらたまたま学校を休めたから頑張ってるだけ」
「皐月〜そんな言い方ないじゃん。せっかく私が凄いってなってたのに。でも…恥ずかしいからこれ以上はやめてくれるとありがたいなぁ……」
凛ちゃんがちょっと顔を赤くしながら下を向いてしまった。
「お。ここだ。」
そうこうしてるうちに目的地に着いたみたい。
それは、どこにでもあるような普通のファミレスだった。
私の家の近くにも確かあったような…
「なぁ。やっぱりここじゃなくてカフェかどっかに行かないか?水無月さんもカフェがいいだろ?」
急に話を振られた私は、思わず変な声を出してしまった。
「私は…どっちでもいいよ?」
私の馬鹿!雫ちゃんや奥田さんと一緒にカフェに行けるチャンスだったのに!なんでこんな曖昧な返事しか出来ないんだよぉ。
内心ではすっごく行きたい!って思ってるのに、それを言葉にできない自分にちょっとだけ泣きたくなってしまった。
「よっし。ならこの近くにいいお店があるからそっちに行こ!」
私は、内心ですっごく喜んだ。良かった…
別にファミレスが嫌なわけじゃないけど、やっぱり行くならカフェがいいもんね!
また皐月ちゃんが先導して後に続く形でみんなテコテコ歩き始めた。
「ここら辺詳しいんだね。皐月ちゃん。この辺に家があるの?」
「ん〜?いや、私の家は美月の家の近くだからここら辺じゃないよ。そういえば!今日美月と一緒に来ようと思ったらさ、この子もう家出たって言ってて!それが何時だ…」
そこまで言った皐月ちゃんは、顔を真っ赤にした奥田さんに口を塞がれた。
「ダメ!それ以上言わないで!」
顔を真っ赤にして、泣きそうになりながら必死に皐月ちゃんの口を抑えてた。
なんでそんなに恥ずかしがってるんだろ…
「みなちゃん…今の話、聞かなかった事にして…」
「分かった。分かったから落ち着こ?ね?」
奥田さんはその言葉を聞くと、皐月ちゃんの口から手を離した。
「私も悪かったけどさ、そこまでかね…」
そう言った皐月ちゃんは深いため息をついていた。
奥田さんは相変わらず顔を赤くして、泣きそうな顔をしながら下を向いて歩いてた。
道行く人が凄い怪訝そうな顔をしてこっちを見てくるから、私もなんだか恥ずかしくなってしまった。
そんな空気に耐えきれなかったのか、凛ちゃんがこんなことを聞いてた。
「ねぇ皐月〜あんたなんでここら辺のカフェなんて知ってたの?」
「今回のした…じゃなくて、前にお母さんとここら辺にきた事があるんだよ。」
なんか今ちょっと不自然だったような気が…きのせいか…
さっきのやりとりの最中も雫ちゃんは話に入って来ようとしなかった。
というか、私が雫ちゃんに話しかけようとすると、絶妙に皐月ちゃんが話しかけてきてくれて、お喋りするタイミングがない。
そんな感じで歩いてたら、目的の場所に着いたみたい。
「着いたゾ。ここのスフレがすっごい美味しいんだよ〜」
「ここにも入ったことあるんだ皐月。」
「うん。お母さんと来た時にね〜。凛が好きなチョコパフェもあったゾ。」
「ほんと!?楽しみ!」
凛ちゃんが心底嬉しそうに笑っていた。
可愛いなぁ……
そのままお店の中に入ると、お店の中は黒を主体とした内装で、すっごくオシャレだった。店内で流れてるBGMもいい雰囲気だったし。
しかも結構な数のお客さんが既にいて、人気店なのが分かる。
普段カフェなんて行かない私でも分かる、いいお店だった。
いいお店なのに、こんな表現しかできない私のボキャブラリーの少なさにすっごく落ち込む。
「ここ…来たことある。」
席に案内されてる最中に、それまで一切口を開かなかった雫ちゃんが喋ってくれた。
なんだかちょっとだけ嬉しくなりながら席に着いた私は続きを聞いた。
なんでも、考え事をしながら歩いてたら偶然見つけて入ったことがあるみたい。
ちなみに席順は、私の隣に奥田さんと雫ちゃん。
向かいの席に皐月ちゃん、藤崎さん、凛ちゃんが座った。
なんでだか私が席に座った瞬間、急いで雫ちゃんが私の隣に座って、続くみたいに奥田さんが座った。
嬉しいけど、緊張しすぎて顔が赤くなっていくのを感じる。
横を見てみると、雫ちゃんも奥田さんもお互い顔を真っ赤にしていた。
向かいの席では皐月ちゃんがニヤニヤしてるし…
席に着くと、奥田さんが来ていたコートを脱いで背もたれにかけた。
一方の雫ちゃんは何故かコートを脱ごうとしなかったけど……
「なぁ。顔真っ赤にしてないで注文決めようぜ。私はスフレにするけどどうする?」
ニヤつきながらそう聞いて来た皐月ちゃんにさらに私は顔を赤くしてしまった。
「わ…私は…チョコスフレにする…」
相変わらず顔を赤くしながらなんとか答えた雫ちゃん。
とっさに私もおんなじものをお願いした。
「分かった。美月も同じのでいいだろ?」
勝手に決められちゃってるけど良いのかな…
横の奥田さんをみると、コクコクとうなづいてた。
今日の奥田さんはなんかいつもより可愛い。
いつもより小動物感がある…
「私は〜パンケーキにする。このチョコのやつ。」
藤崎さんはパンケーキ…好きなのかな…
「私はねぇ〜チョコパフェ!あとこのクリームソーダも!」
「はいはい。分かったからはしゃがない。」
皐月ちゃんが店員さんを呼んで、みんなの注文を伝えてくれた。
頼んだものが来るまでの10数分の間、みんなと楽しくお喋りしてたけど、恥ずかしそうに奥田さんが、私にも美月って呼んで欲しいって言ってくれた。
相変わらず皐月ちゃんはニヤついてたけど…
何がそんなにおかしいのか…
私は恥ずかしさと緊張でおかしくなりそうなのに…
雫ちゃんも相変わらず顔が真っ赤だし…
頼んだものを運んでくれた店員さんが可愛くて思わず二度見してしまった…
皐月ちゃんが言ってたように、スフレはすっごく美味しかった。
凛ちゃんにパフェもちょっと分けてもらったけど、すっごく美味しかった。
パンケーキも食べたかったけど、すっごく美味しそうに藤崎さんが食べてたからなんか分けてもらうのが申し訳なく感じちゃって言い出せなかった……。
楽しくおしゃべりしながら女子会を楽しんだけど…雫ちゃんとはあんまり話せなかった。
それがちょっと心残りだった。
もうちょっと話したいなぁ…って思いながらカフェを出た。
お会計はもちろん自分たちの分は自分たちで払ったよ?凛ちゃんは皐月ちゃんに奢って欲しいって泣きついてたけど……
皐月ちゃんはかるくあしらってたけど。
カフェを出てすぐ、美月ちゃんがコートを忘れた……って言って慌てて取りに行ってたのを見てまた可愛いなぁ……って思ってしまった。
皐月ちゃんはお店の中からニヤついてるし、お店を出てからは美月ちゃんも積極的に話しかけてくれた。
しばらく歩いたあと、今の時間を確認すると14時24分になっていた。
「なぁ。予定ではこの後解散ってなってたけど、もうちょい一緒に遊ばないか?」
ちょっと笑いながら言った皐月ちゃんに、藤崎さんは申し訳なさそうに笑いながら、バイトがあるって言ってた。
凛ちゃんもゲームの練習がしたいって言ってた。
私はもちろん遊びたいって言った。
美月ちゃんと雫ちゃんは一緒にコクコクとうなづいてただけだったけど、遊びたいって事みたい。
良かった…もっと遊べる…
「今日はありがとね。楽しかった。また誘ってね」
藤崎さんはそのまま駅の方に向かっていってしまった。
「私も帰るね〜。今日はありがと〜」
凛ちゃんが帰る直前にLINEを交換できたのは、良かった。
雫ちゃんも交換してたし…
藤崎さんとはあんまり喋れなかったし、サッと帰っちゃったからLINEすら聞けなかった……
「よ〜し。近くに大きめのモールがあるからそこに行こ〜」
私と雫ちゃん、そして美月ちゃんは心底楽しそうに前を歩いてる皐月ちゃんの後ろをトコトコ歩いて着いていく。