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第116話 慰め

前回の最後に書きましたが、日付を勘違いしたせいで明日出す予定だったお話です。


時系列等に問題は無いですが、少し短めなんです。

ポンコツなので許してくださいm(_ _)m

文化祭2日目の昼13時過ぎ。私は中庭のベンチで春奈に膝枕をされていた。

道行く人や、紅葉のクラスのクレープ屋に並んでいる人達から変な目で見られても、私はこの体制のまま動こうとはしない。


その理由は、20分ほど前に入ったオカルト研究部のお化け屋敷が原因だ。

クレープ屋に異常なほど人が並んでいたせいで、かなり時間を取られたけれど、なぜかクレープは昨日食べた時よりも美味しかった。


そして、さりげなく一年の方のお化け屋敷に向かおうとした私を、春奈が手を引いて無理やりオカ研のお化け屋敷に連れ込んだのだ。


その中で起こったことは、もう思い出したくもない。

子供のように泣き喚いて、お化け屋敷から生きては出られないと本気で思ったほどだ。


そして、春奈が気を利かせて私が落ち着くまでこうしてくれているわけで…。


「先輩。落ち着きましたか…?」


「もうやだ…。あんなとこ二度と行かない…」


「あそこから出てからずっとそれしか言いませんよね…。まさかあんなに怖がるって思ってなくて…。ごめんなさい」


「今日はもう一日こうしてるもん…」


「いや、それはちょっと…」


周りからどれだけ奇異の目で見られようが、私は春奈の腕の中と膝の上が1番落ち着く。

あんな、トラウマになるレベルのお化け屋敷なんて文化祭で出すものじゃない!


受付の人が出て来た私を見て、少し申し訳なさそうにしてたもん!

そりゃお化け役の人は楽しいだろうけどさ!ちょっとは手加減とかそういうもの知らないわけ!?


「先輩…子供じゃないんですから、そろそろ泣き止んでくださいよ…」


「いやだ…。今日も一緒に寝てくれないと、私夜眠れないから…」


「分かりましたって…。今日の夜はなんでも言うこと聞いてあげるので、とりあえず泣き止んでもらっていいですか…?」


「なんでも…?今なんでもって言った…」


「いかがわしい事以外ですよ!?そういうの…嫌じゃないですけどまだ早いっていうか…。その…」


「なんでもって言ったもん!私をいじめた仕返しするから!」


涙を乱暴に拭った私は、頬を染めながら慌てている春奈の膝から抜け出した。

家に弟君がいるって言っても、もう知らない。


私にこんな怖い目に合わせた春奈に、色々仕返しするから…。


「何を考えているのか知りませんけど、本当にいかがわしい事以外ですよ?」


「…やだ」


「やだってなんですか!?何するつもりですか!?」


「知らないもん!春奈が悪いんだもん!」


別に、本気でそう言うことをするつもりじゃない。

ただ、一緒に寝てもらわないと私が寝られないのは事実なので、とりあえずその時に色々言うつもりではある。


私だって一応は女の子なんだし、恥ずかしさとかも諸々持っている。

とりあえず、春奈を抱き枕みたいにして寝るのは私の中で確定したけど!


「早く行くよ…。今からは全部春奈の奢りね…」


「機嫌が直ったと思ったらそれですか…?いや、今回に関しては私が全面的に悪いので良いですけど…」


「とりあえず、わたあめ買って!」


「あの...おねだりの仕方が小学生レベルなのもどうにかしてもらって良いですか…?高校生でわたあめって…」


「良いじゃん別に!ほら行くよ!」


多分だけどこの時の私は、お化け屋敷で完全に参っていて、いつもの精神状態じゃなかったんだろう。


ずっと春奈の腕に抱きついていて、肝心の獅子神に注意されても目力で追いやったと後日聞いた時は驚いた。


だけどこの時の私は、せっかくの春奈との文化祭デートだったにも関わらず、お化け屋敷に入って泣き出したところから春奈の家に帰るまでの記憶が一切ない。


時々急にビクッと震えたり、トイレに行くのにも春奈に着いてきてもらったりと散々だったらしい。


オカ研のお化け屋敷が、私の人生で1番怖くて、トラウマになったとはいえ…後から考えるとすごく恥ずかしい。


いつも偉そうに先輩っぽく振舞って、緑川にアドバイスという名のからかいを散々しているとは思えない。


そう言えば、今年の文化祭では怪奇現象が起こったらしい。それも、私が大変なことになった文化祭2日目にだ。


射的の屋台をやっていたクラスの出し物から、囮用のゲーム機やら特大のぬいぐるみが全部消えたらしい。

それも、1人の1年生徒によって…。


春奈と私もこの一部始終を見ていたらしいけれど、残念ながら私には、一切の記憶がない。


「本当に覚えてないんですか!?緑川と一緒にいた女の子が、1発でクマのぬいぐるみを落としてて、先輩目を丸くしてたじゃないですか…」


「だって…。覚えてないものは覚えてないんだもん…」


家に帰ってもう寝るだけとなった私達が、ベッドの中で交わした会話の中で、その女の子の存在を知った。


ちなみに春奈には、私の命令でベッドに入ってからずっと手を握ってもらっている。

お風呂上がりですごく温かい手が、私の震えをしっかりと止めてくれる。


目の前に好きな人の顔があり、少し近づけば色々触れそうな距離だ。

こんなに近づいているのも私の命令で、怖いという名目の元、かなり春奈に甘えている。


「お化け屋敷の内容も一緒に忘れてるなら、なんでこんなに怖がってるんですか…?」


「分かんないけど、なんだかすごく怖い思いをした気がするの!」


「せめて約束のことは忘れておいて欲しかったですよ…」


「それは、過去の私が有能だったからだね!」


そう。文化祭中にあった内容のほとんどを覚えていない私が、なんで春奈に色々命令できているのか。

それは、約束を交わした直後に私が携帯のメモ帳にメモを取っていたからだった。


『今日の夜はなんでも春奈が言うことを聞いてくれる。一緒に寝てもらうのと、抱き枕みたいにして寝ることは確定!!』


今日ほど自分のメモ癖に感謝したことはない。

普段は全然メモなんて取らないくせに、春奈に関することだけは几帳面なほどメモ帳にメモする。


その習慣が初めて生きた瞬間だったと言っても過言ではないだろう。


「あの先輩…。こんなにくっつかれてると…私が眠れないんですけど…」


「こうしてないと、怖くて私が眠れないんだもん…。我慢して…」


「小学生の子供じゃないんですから…」


「良いから!ほら。私に抱かれなさい!」


「その言い方やめてもらって良いですか…!?」


まだ抵抗しようとする春奈をぎゅっと抱きしめて、照れる春奈を無視して、私はそのまま眠りに落ちる。


抱きしめた春奈の体はポカポカと温かくて、気付いた時には震えは止まっていて、深い夢の中へと落ちていた…。

次回のお話は12月19日の0時に更新します。



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