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第112話 春奈のメイド服

今回からしばらく、鈴音先輩視点でのお話になります

いつもの3人と別れた後、私は結奈の放送が流れたのを合図に、真っ先に春奈の教室に向かった。

少しだけ変装してくるのもありかなと迷ったけど、気付かれなかったら泣く自信があるのでやめた。


まぁ大体、変装っていうものは気付かれたくなくてするものだけど、気付かれなかったらなんだか悲しいし…矛盾してるじゃん?


この前、春奈には


「初日は絶対にこないでください!」


って言われたけど…メイド姿の春奈とか、絶対可愛いじゃん!?


「目に焼き付けとかないと一生後悔しそうだもんね〜」


鼻歌交じりでスキップしていると、他の教室から様子を伺っている下級生の子達に変な目で見られるけれど、そんなこと気にならない。


写真オッケーだったらどうしようかな〜。何枚も撮って破産しそう…。

一応お小遣いをかなり持って来たけど、文化祭は後2日間もある。


春奈にかっこいい所を見せたいし、お金はそれなりに残しておきたい…。

写真は取れたとしても、お金を払って撮るのは数枚にして、後でいっぱい撮らせてもらおう。


そんな名案を考えついたところで、春奈の教室の前に着いた。

そこには可愛い字で『メイド喫茶』と書かれた看板が建ててあった。


「ねぇ。これって、そのまま中に入っていいの?」


「はい問題無いですよ。中にメニュー表が置いてありますので、注文が決まったらお呼びください!」


「そう。ありがと」


こういうお店は私も去年やったけど、予め受付で何を頼むか聞くシステムだったから、念の為外で呼び込みをしていた子に確認をとった。


その子も、春奈には負けるけど可愛らしい女の子で、白を基調にしたメイド服がよくにあっていた。


私は、春奈がこんな可愛い服を着ていると想像し、ウキウキしながらお店の中に足を踏み入れた。


教室の中は、まるで別世界のように綺麗に装飾されていて、とても数日前まで修学旅行でいなかったとは思えない出来だった。

お店の中に男子の姿が見えないのは、まぁ当然だろうけど…可愛い子が多い…。


「おかえりなさいませ。ご主人様!」


教室に入った瞬間、数人のメイドの子からそんなことを言われて、経験が無かった私は少しビクッとなった。

しかも、こういうところは基本男子が来るところだし…なんか恥ずかしい。


可愛らしい女の子が何人もメイド服を着てこっちを見ている光景なんて、頭が悪いこの学校の男子を更におかしくするには十分だろう。


なんか…春奈もここにいるって分かってるから来たのに、男子の目には触れさせたくなくなる…。


「あれ?鈴音先輩じゃないですか。今日は来ないって春奈から聞いてたんですけど…」


「あ〜メグじゃん!可愛いなぁ〜!」


「私にはそういうの良いですよ。とりあえず、適当な席に座ってください」


私がオロオロしながらお店の中を見ていると、見兼ねたメグが話しかけてきてくれた。

多分、私が春奈目当てで来たことも、ある程度察してくれているだろう。

ほんと、後輩ながら凄く助かる。


だけど…照れながらもちゃんとメイド服を着てるメグって、なんだか新鮮だ。

いつも落ち着いた雰囲気があって、こういうのだと迷わず裏方を選びそうなのに。


「友達に無理やり言われて仕方なくですよ…。可愛くない私がこんな格好しても、誰も幸せになりませんって…」


「そんなことないと思うぞ?よく似合ってる!」


「…春奈に言いつけますよ?はぁ。とりあえず、チェキは1人2枚までです。いくら先輩でも、そこは守ってくださいね?後、春奈とイチャつくのは極力控えてください!」


「は〜い!」


「ほんとに分かってるんですか…?もう…」


呆れた様子で入口の方に歩いて行ったメグは、そんまま新しく入って来た男のお客さんを嫌そうなのを隠そうともせずに接客していた。


それはさすがにどうかと思うよメグ…。あの人達、名前は知らないけど、同情してしまう。


お店の中には、ちょっと小さいけど『盗撮禁止』の文字もあり、少し苦笑してしまう。

大体、文化祭でチェキが撮れるって時点でだいぶ攻めてる気がするんだけど…大丈夫なの…?


よくオッケーでたね。こう言ったらなんだけど、危ない人もいるんじゃないの…?

そう思ってメニュー表のところを見てみると、注意書きのところにちゃんと書いてあった。


『生徒の安全を守る為、チェキはこの学校の生徒のみとさせてもらっています。チェキを撮る際は、学生証の提示をお願いします』


「なるほどね〜。まぁ、同じ学校の人だけなら、わざわざチェキ撮る人なんて少ないと思うけど…」


しかも、チェキだけで割と良い値段するなぁ〜。

まぁ、私はそれでも迷わず撮るけどね!


でもこれ、お一人様2枚までって書いてあるけど、何回も出入りしたら、その分撮らせてくれるのかな…。


だったら、適当に安い料理と春奈とのチェキを貰うためだけに何回も出入りしますけど!

日頃から、お財布に学生証を入れておいてよかった!


でも一応、メグに聞いてみよう。

春奈は、なぜだか分かんないけど目に見える位置にはいないし…。


「先輩。注文決まりましたか?」


「ちょっと質問があるんだけど、良い?」


「春奈とのチェキの為に周回するみたいなバカなこと言わないでくださいね?出禁にしますよ?」


ニコニコ顔でそう言われた私は、途端に何も言えなくなってしまった。

いつも優しくて大人しい人が、こんな怒りのオーラを撒き散らしながらニコニコしてるとこんなに怖いんだね…。


まるで、遊園地で私が嫌だと言ってるのに、無理やりお化け屋敷に連れて行った春奈みたい…。


「いや〜そんなこと言わないって。ただ、春奈の姿が見えないなって」


「…春奈は、恥ずかしがって準備に時間がかかったので、もうしばらくでて来ないと思いますよ。チェキで指名したら、嫌でも出てこないとですけど」


「そっか!ありがと!じゃあとりあえず、チェキ2枚お願い〜!」


「はぁ…。分かりました。春奈呼んできますね」


呆れたような顔でそう言ったメグは、一旦教室の外に出て、隣の教室に入って行った。

この教室の横は、確か家庭科室だったし、そこがバックヤード兼料理を作る場所なんだろう。


確か、緊急用の扉がこの教室と繋がってたはずだから、そこから料理を運んでくるんだろう。

いちいち廊下を経由して運んでくるわけないし。


それにしても…チェキとか当然初めて撮るし、どうすれば良いのか全くわからないんだけど。


全部春奈に任せたら良いのかな…。でも、私を見た瞬間すっごい怒ってきそうだなぁ…。

まぁ、どうせその顔も可愛いから良いんだけどさ!


「すいません。学生証の提示をお願いしても良いですか?」


「え?ああ〜はい」


春奈を待っている間、サクッと学生証の確認を終えて、適当に特製のクリームソーダでも頼んでおく。

確認に来た子が、私の名前を見た瞬間、なぜか苦笑いしたのは…なんでだか分からないけど。


そのまま3分程待っていると、春奈がくるより前に、意外な人物達が教室に入って来た。

それは、つい数分前に中庭であった、片思いコンビの紅葉と緑川だった。


ちゃっかり手なんか繋いじゃってさ〜どんだけお互い好きなんだか…。


「雫ちゃん…あれ…」


「鈴音先輩…」


「なんだその気まずそうな顔!別に良いだろ〜?ここにくるって言ってたじゃんか!」


「いえ…。別に。本当に来てるんだって思っただけです」


相変わらずクールぶってる緑川は、明らかに私を避けて、窓際で座っている私とは真反対の方向に座った。


普段クールぶってるのに、いざとなるとオドオドして可愛いっていうのはズルいよね〜。

紅葉があんなに好きな理由も、なんとなくわかる気がする。


さらに面白いのは、どっちもラノベ主人公並みに鈍感で、絶妙に噛み合ってないところにある。

ほっといたら、多分美月とかいう子に横取りされるだろう。


まぁ、それはそれで面白そうだけど…私的には、この2人をなんとかしてくっつけたい。

だって…なんか面白そうじゃない!?


どっちも鈍感で、好きあってるのは周囲からバレバレなのに、隠してるつもりなのがまたなんとも…。


「ほら春奈。指名入ったんだからビシッとして!」


「ねぇ〜ほんとに嫌なんだけど!大体、私を指名する人なんているわけ無いじゃんか!何もしないならそれが1番だと思って引きこもってたのに!」


「も〜!そんな子供みたいなこと言わないでさ〜…」


「私を指名するなんてどんな人なの!?この学校の人で私に興味持ってくれる人なんて、先輩しかいないんだけど!?」


廊下からそんな声が聞こえて来て、自然と頬が緩んでしまう。

さりげなく、恥ずかしいこと言ってる気がするけど…それでも、なんだか嬉しくなってくる。


もう少しで、春奈のメイド服姿が見える…。しかも、可愛く駄々をこねながら教室に入ってくる姿もオマケ付きで。


変に緊張して、心臓の音が、この教室全体に響き渡りそうなほどうるさく感じる。

そして、メグが無理やり教室のドアを開けて、教室に入って来た春奈と目が合った瞬間、私は言葉が出なくなってしまった。


目の前にいる自分の彼女が可愛すぎて…どうにかなりそうだ。


「ふぁい!?せっ…先輩!?」


「はい分かったでしょ!大人しくチェキ撮ってあげなさい!」


「ねぇ〜!やだも〜!来ないでって言ったのに〜!」


頬を染めながらも、私から目を離さしたその可愛すぎる姿に、私は見惚れてしまった。

ちょっと涙目で俯いてるのも…ほんとに可愛い!


この瞬間を、もう永遠と写真に残しておきたい…。


紫苑(しおん)ちゃん〜。春奈のこと頼める〜?チェキの指名入ってるの〜」


「ん〜?あぁ〜はいはい。任せて〜。メグちゃんはお料理の方よろしくね〜」


そう言い残して教室から去って行ったメグは、紫苑と言われた黒髪の背の高い子に春奈を任せて、家庭科室の方に戻って行った。


そして、私にとっておそらく人生で最高の瞬間は、これからだと思う。

次回のお話は12月9日の0時に更新します。


こんなお話が、後10話ほど続く予定です。

しばらくこの2人のお話が続きますが、お許しください。

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