第10話 お食事会 第1部
その日の私は珍しく、目覚ましの音で目が覚めた。
いつもなら当然のようにアラームを止めて二度寝を始める私だけど、今日はちょっとだけ事情が違う。
今日はすっごく楽しみにしてたお食事会当日。
昨日はお母さんに何度もおかしくない?と確認するほど念入りに着ていくお洋服を決めたり、二度寝しても大丈夫なようにこれでもかってくらいのアラームをセットした。
今日が楽しみすぎてなかなか眠れなかったけど…
だって、お友達と出かけた経験があんまりないんだもん!仕方ないじゃんか…
スマホを確認すると今は9時ちょうどだった。
おかしいな…私8時30分から目覚ましかけてたのに…気づかなかったのかな…
そういえば、お食事会とは言っても近くのファミレスでみんなでご飯食べるだけって言ってたしそんなに気合い入れなくてよかったのでは…と朝ごはんを食べようとリビングに降りてる最中に思っちゃったけど、まぁもういいや…
下にいつもの格好で降りるとお母さんがテレビを見ながら下でくつろいでた。
私を見るとなんかすっごい深くため息をついてたけど…
すぐに朝ごはんのチョコパンを用意してくれたけど、深いため息の理由は教えてくれなかった。
私のいつもの格好ならもう見慣れてると思ってるんだけど違うのかな…
朝ごはんを食べ終わった私は、自分の部屋に戻って昨日奥田さんとやりとりした画面をもう1度確認する。
うん。やっぱり集合時間は11時30分。
私の家から集合場所までは昨日確認した限りだと電車で10分の所。
別に急ぐ必要はないんだろうけど、遅れるよりは早くついた方がいいしちょっと早めに出ることにした。
と言ってもまだ9時40分だし11時に家を出れば充分間に合う。
クローゼットの中から昨日お母さんと一緒に決めたお洋服を取り出して、ベットの上に置く。
昨日きっちり決めたはずなのに今になってやっぱり変かな?なんて気持ちがほんのちょっと湧いてきてしまう。
そんな事を思っているとベットの上に置いてあったスマホの画面が光った。
スマホを起動させると奥田さんからメッセージが入ってた。
「おはよ〜。今日はよろしくね!」
「おはよ!こちらこそよろしくね!楽しみであんまり寝れなかった笑」
「ほんと!?実は私もなんだ!気楽に楽しも〜!」
奥田さんって本当にコミュニケーション能力高いよね〜羨ましい…
お食事会企画したのも奥田さんらしいし…行動力あるなぁ…
まぁお食事会ってよりも女子会って言った方が正しいのかな…
どうせならオシャレなカフェとかにも行ってみたいけど…いきなりカフェはきついって考えたのかな?
まぁ奥田さんはクラス委員だしみんなの顔と名前は知ってるだろうけど…私達はほとんど初対面みたいな感じだし…
今度また機会があればみんなでカフェにでも…ってなんでまだ私は終わってもないのに終わった感じで次回行きたいお店の事なんか考えちゃってるんだろ…
クラスの女の子が何人か来るって行ってたけど、私もそんなにクラスの女の子に詳しい訳じゃないし…可愛い子が多いと嬉しいなぁ。くらいしか考えてなかった。
10時20分頃からお食事会の準備の為に色々と準備して、終わったのは家を出ようと決めてた11時にギリギリ間に合うくらいだった。
普段あんまり履かないからタイツを履くのに結構時間がかかっちゃった。
ちなみに私の今日のお洋服はお母さんがすっごく褒めてくれた紺色の長袖ワンピに黒タイツという格好だった。
普段つけない紺色のリボンも頭の後ろにつけて…ってこれはいらなかったかな…
でもお母さんが褒めてくれたし間違ってないはず…!
他にも色々候補があったけど、お母さんがこれが一番いいって言ってくれたし…
普段こういう格好をあんまりしない私は、ちょっとだけ顔を赤くしながら電車に乗って待ち合わせ場所に向かう。
電車に揺られてちょうど10分で目的の駅に着いた。
日曜のお昼ってこともあってか駅の中はすっごい人でいっぱいだった。
普段外に出ない私は、その人混みから抜け出せた時にはすっかり疲れきっていた。
結局待ち合わせ場所に着いたのは25分でかなり余裕を持って家を出たはずなのにギリギリになってしまった。
着いた頃にはもう何人か揃ってて、その中には雫ちゃんと奥田さんの姿もあった。
雫ちゃんは普段の制服姿とはまた全然違って、紺色のでっかいジャンパーにそんなに寒くないのに赤いマフラーをつけてて、その割には下は黒のミニスカだった。そして、音楽なんてあんまり興味なさそうなのにヘッドホンを首にかけていた。
正直言って…めっちゃ似合ってる!ヤバい!普段の学校でもちょっとかっこいいのに、クールさが際立ってるというか…可愛いというよりかっこいい感じなんだけど、それが普通に似合っててなんというか…ヤバい!
一方の奥田さんは白いコートの下にはグレーのモコモコしててあったかそうなセーター。後は雫ちゃんとおんなじようなスカートを履いてた。いつもよりちょっとだけお化粧に気合いが入ってる気がする…
普通に可愛い…
私が2人の姿に見惚れてると、2人の他に待っていた女の子が手を振ってくれた。
私はまだ集合時間じゃないけど遅れてしまったことを謝りながらみんなと合流した。
「ごめん。遅れちゃった。」
「遅れた?まだ5分あるぞ。それに、美月の話だと後1人来るらしい。」
手を振ってくれた女の子はまるで男の子みたいな感じの口調で教えてくれた。
かっこいい感じの服装と相待って雫ちゃんとはちょっと違うけど、妙なかっこよさがある。
その子は黒髪のツインテールでピンクのお洋服の上にデニムのジャケットを着こなして、赤いスカートに黒いポーチなんていう男の子のようでそうじゃないような感じの格好だった。
さっきも言ったけど、別に似合ってないわけじゃない。むしろ普通に似合ってる。
なんか気が強そうで私がちょっと苦手なタイプかもしれないけど。
ていうか、さっきから奥田さんも雫ちゃんも目を合わせてくれない。
なんでだろ…私の格好おかしいのかな…
私がちょっと不安な表情をしてると、男の子みたいな女の子がまた話しかけてくれた。
「その格好が変だと思ってるなら間違いだと思う。普通に似合ってる。言い忘れたけど私は山村皐月。皐月って呼んで。よろしく」
一番にこの子に感想を言われてなんか複雑だけど、似合ってるって言われたことがすっごい嬉しかった。
似合ってないとか言われたらどうしようって思ったもん…
「ありがと!私は水無月紅葉!よろしく!」
私は似合ってるって言われた瞬間から自信なさげな表情から一気に自信満々な表情に変わった。
ちなみに私と奥田さん、雫ちゃん、皐月ちゃんの3人の他にもう1人いたんだけど、その子は前に一回だけ一緒に登校した事がある藤崎さんだった。
一緒に登校した事があるって言っても別に話したわけじゃないし仲がいいってわけでもないんだけど…
ちなみに藤崎さんは白のお洋服に茶色のカーディガンを着て、黒のちょっと長めのスカートを履いてた。
なんかベレー帽でも被ったらよくテレビに出て来るような漫画家さんに大変身しそうだなぁ。なんて呑気なことを考えてたらやっと雫ちゃんが話しかけてくれた!
「おはよ。そっ……その格好…とっても似合ってる…」
そう言ってくれた雫ちゃんの顔をよーく見ると、顔は真っ赤になってて今にも爆発しちゃいそうな顔になってた。
その表情がたまらなく可愛くて、私まで顔が赤くなってしまった。
しかも、雫ちゃんが似合ってるって!めっちゃ嬉しい!
「ほんと!?ありがとぉ〜!雫ちゃんもとっても似合ってる!」
そう言った途端、また急に雫ちゃんが私とは違う方を向いてまた目を合わせてくれなくなってしまった。
なんでだろ…ちょっと寂しいんですけど…
待ち合わせの時間にちょうど間に合うように来た最後の1人は普通に可愛い子だった。
この女子会…ひょっとしたら私以外可愛い子しかいないのでは…
「私が最後?ごめんね〜。ゲームに…じゃなくて電車が遅れちゃってさ〜」
なんか一瞬不穏な単語が聞こえた気がしたけど、きっと触れないほうがいい気がする。
「遅いぞ。どうせ夜中までゲームしてて起きれなかったとかだろ。」
「違うよ〜。ちゃんと起きたけど終わるタイミング見失っちゃって…って、あ…」
心底やってしまった…。みたいな表情をしたその子は案の定皐月ちゃんに頭をグリグリされて涙目になって謝っていた。
仲良いみたい…この人達…
でも、あれ?この子クラスの自己紹介の時にいたっけ…記憶にない。
こんな可愛い子私が見逃すかなぁ。って皐月ちゃんも知らなかったし充分ありえるけど…
「ほら凛。皆にも謝りな。ゲームしてて遅くなりましたって。」
「えっと、砥綿凛です。皐月の言い方はなんか含みあるけど、大まかにはその通りなのです……。ごめんなさい。」
まだ涙目のまま謝って来た凛ちゃん?に私と藤崎さんが自己紹介をする。
ちなみに凛ちゃんは黒髪ロングで紫色の目を持ってた。
見た目だけでも普通に可愛いのに皐月ちゃんとのやりとりで好感度がめっちゃ上がったというか…なんか小動物感があるような…
そんな凛ちゃんだけど、黒のパーカーと水色のミニスカ、そんなに寒くないのに雫ちゃんとおんなじようにマフラーをしていた。
寒くないのにマフラー巻いてる理由って何かあるのかな…
そんなどうでもいいようなことを考えてると、さっきまで一切私の方を見てくれなかった奥田さんが私の方を向いて一言だけ言ってくれた。
「その格好……とっても似合ってるよ…」
なんかすっごい恥ずかしい…
そんな顔されて言われるとなんか…
そのあとは皐月ちゃんがみんなを先導する形で目的の場所へと足を進め始めた。
今の時間は11時35分。
なんかすっごい楽しくなりそうだなぁ。と期待をさらに大きくして私は皐月ちゃんの後をテコテコとついて行く。