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第107話 文化祭2日目 第2部

後半の方に、ある人視点でのお話がちょこっとあります。



凛のお兄さんがステージに上がってすぐ、体育館の女の子達から凄い歓声が上がった。

なるほど。凛が、お兄ちゃんがやたらモテてるって言ってたのは本当らしい。


どうりで周りに女の子が多いと思った…。

体育館に来ている人の、7割近くが女の人って…こんなものなのかと思ってたけど、やっぱり皆響さん目的なのね…。


でも、響さんがバンドって、あんまりイメージないかも。

いつも凛の面倒を見てて、響さんは3年生だから、そんな暇ないくらい色々忙しい時期だろうに…。


あれ、でも響さんって進学しないんだっけ…。あんまりそこら辺は凛に聞いてないんだよね…。


「ねぇ美月ちゃん。凛ちゃんのお兄さんってそんなに歌上手いの?」


「ん〜どうだったかな…。歌ってたイメージなんて無いんだけど…。どっちかって言うと、何気無い顔でベースとか引いてるイメージ…」


「うんうん!なんかわかる気がする!」


そもそも、私も皐月も、凛のお兄さんとはそこまで仲が良いわけじゃない。

もちろん凛関連で色々頼まれたりはするけれど、それ以上の関係。

分かりやすく言うなら、お兄さん個人とはあまり関わりがない。


親友のお兄さんって、結構そんな立ち位置だったりするよね。

色々相談相手にはなってくれるけど、それ以上の関係にはならない。みたいな。


私達と響さんもそう言う関係だ。

どっちかって言うと、響さん側から少し距離を感じてたんだけども…。


まぁ、この人気ぶりを見たらわかる気もする。私達に余計な迷惑をかけたくなかったのかもしれない。


「でも…凛が歌上手かったはずだし…確かに響さんも上手いって言う可能性は…」


「え!?凛ちゃん歌上手いの!?」


「あ〜そういえば紅葉ちゃんは聞いたことなかったね。そうなの。あの子、アニソン限定だけど、なぜかすっごい上手いのよ…」


「へ〜!知らなかった!今度聞いて見たい!」


「ん〜今度凛に言ってみるけど…あんまり期待しないでね?」


あの子、約束するのは良いけど、当日起きれずにドタキャンするなんて当たり前だから、あんまり紅葉ちゃんと遊ぶのは…って感じがする。


しかも、本当にアニソンしか歌えないから、アニメを見ない私達は、無駄に上手い凛の歌を、ただポカーンと聴いてるだけになるんだよね。


しかも、平気で95点以上取るから、なんか少しイラっとするし!

どうだ!みたいな顔してくるのが更にね!


そして、2分も経たない内に演奏が始まった。

どこかで聴いたことがあるようなメロディーが奏でられる。


自分の頭の中から必死にその曲を思い出していると、お兄さんの普段の声からは想像もできないような綺麗な歌声で、その曲がなんなのかを思い出す。


普段は優しいけど、少しだけ重みのある声のお兄さんが、今この時だけは、透き通るような綺麗な声になった。

さっきまでうるさいくらいに騒いでいた女の子達は、皆静かに聞き入っていた。


「あれ…これ、聴いたことあるような…」


「あれでしょ?ちょうどこの間のドラマの主題歌になってた…」


「あ…あれね!でも響さん…上手いね…」


響さんが歌っているのは、つい数週間前までやっていた月9ドラマの主題歌だった。


曲名までは覚えていないけど、恋愛ソングで、歌詞が切なすぎると話題になっていたから、何回か聴いたことがある。


確かに、そのドラマ自体も面白くて、最終回は歌が流れて来たタイミングで泣いた記憶がある。


病気の女の子が、主人公の男に恋をして、最後は女の子が事故に巻き込まれて死んじゃうんだよね…。

最終回だけ、主人公の男の人が歌ってたから…それも印象に残っている。


響さんが歌い終わると、周りの女の子数人は涙を流して、凄い人はその場で泣き崩れていた。

紅葉ちゃんの目にも、少しだけ涙が溢れていて、ハンカチでそれを隠しているのが、少しだけ可愛かったりした。


でも、響さん、実体験でもあるような感情の込め方だったなぁ…。

なんかうまく言えないけど、これのオリジナルを歌っている人よりも感情がこもっているって言うか…。


「ありがとうございました…」


さっきの綺麗な歌声とは違い、いつものトーンで一言だけそう言った響さんは、後ろで楽器を演奏していた人たちとステージ脇に歩いて行ってしまった。


しばらく体育館内に拍手が続いたのは、言うまでもない。


「でも…これさ、次の人出にくく無い…?」


「紅葉ちゃん…。そういうのは、思ってても言わないほうがいいの。分かる?」


「…分かった!じゃあ、もう出る?」


「そうだね…。ちょうどあの件も話したいと思ってたから、どこか適当なところまで行こっか…」


「あ!ほんと?じゃあいこ〜!」


さっきの響さんの歌のおかげで、ようやく振られる決意が固まった。

振られる決意っていうのもおかしいけど、でも、ほぼ確実に振られるんだからそういうのが正しいんだろう。


変かもしれないけど、響さんの歌に、不思議と勇気を貰ったんだ。

多分、今日の夜も寝られないだろうけど…せめて、今日1日だけでも大丈夫なように振る舞うんだ。


もしもの時の皐月なんて、用意もしてないんだし、私の都合で紅葉ちゃんを1人にするわけにはいかない。


この学校には、いろんな意味で危険な人が多いんだから。

これから私は、茨の道に進むけれど…なんとか乗り切ってみせる…。


◇ ◇ ◇


「いや〜流石だな響!」


「…それは嫌味かい?僕としてはあんまりだったんだけど…」


体育館でのステージが終わった後、親友であり、僕をこのステージに無理やり立たせた張本人の、伊藤南(いとうみなみ)がそう言ってきた。

僕は元々、このバンドのメンバーでもなければ、今日ここで歌う予定でも無かった。


元はと言えば、南が原因で体調を崩したボーカルの人の代わりに出て欲しいと頼まれただけだ。


いくら文化祭でのステージのためとは言え、6時間以上ぶっ続けで練習させたら、どんな人でも喉が潰れるだろう。


南がリーダーのこのバンドは、メンバーが4人ほどいるのだけど、その内の2人がダウンして、今日ステージに立ったのは僕と南、そして僕とは初対面のこの…空さんだけだ。


南は、女にモテたいという不純な理由で最近金髪に染め、ベースを弾いていい気になってるお調子者だ。

空さんは、キーボードをしてくれていた、大人しそうな人だ。南と友達なんて、信じられない…。


大体、ドラムの人がいないから急遽僕が好きな曲に変えたっていうのに、よく2人とも弾けたよね…。


普通に凄いと思うんだけど…。だって、決まったの今日の朝だよ!?ほんとにわからない…。


「あんまりってお前、女子数人泣いてただろ…。てか、なんでお前が出るって聞いただけであんなに女子来るんだよ!ふざけすぎだろ!」


「そんなこと言われても知らないよ…。それに、僕が恋愛に興味ないの、知ってるだろ?」


「はぁ〜!お前は小学生の頃の失恋引きずりすぎなんだよ!そこら中に可愛い子いたんだからよ!適当に付き合っちゃえば?」


「南…。響さんはそこまでいい加減じゃないと思うよ…。でも、本当に僕も歌は感動した。急だったのにありがとうね…」


なんとなく外の空気を吸いたくなって、そのまま2人に適当に挨拶して、その場を去る。

別に、恋愛に興味が無いわけじゃない。正確に言えば、無くなった。と言ったほうが正しい。


南の言う通り、小学生の頃は確かに、好きな人はいた。

だけど、家の事情で離れることになった時の辛さは、もう味わいたくない。


そう思うようになってから、僕は恋愛をしないと心に誓った。

一時の気の迷いで、あんな思いをするくらいなら、最初からしないほうがいい。


「春香…。別に、君のことを忘れたわけじゃ無いんだけどね…」


立花春香。僕の初恋の人で、おそらく一番最後に好きになった人だ。

今どこにいるのか、何をしているのか、全く分からないけれど…例えもう一度会ったとしても、僕がどうこうなる可能性はないだろう。


まぁ、会えるわけな…


「やった〜!ゲーム機ゲットぉぉ!」


「ええ!?なんで!?これ囮の商品なんですけど!」


…。目の前の教室から、なんか聞き覚えのある声が聞こえて来るんだけど…。

せっかく、懐かしい気分に浸ってたのに…。


自分の妹の声にうんざりしながら、目の前の教室が射的をやっていると思い出し、なんとなくの状況を察した僕は、その教室に足を踏み入れた。


中では案の定、ゲーム機を取ったことではしゃいでいる妹と、まさか取られるとは思っていなかったであろう2年の女の子がオロオロしていた。


「凛。何してるんだ…」


「あーお兄ちゃん!見てこれ!1発で取ったんだよ!?凄くない!?」


「あ…お兄さん。申し訳ないです。私がついていながら…」


ドヤ顔で小さなゲーム機を見せびらかして来る凛と、なぜか謝って来る皐月ちゃんを見て、またため息をつく。


その横で悔しそうにしてるのは…緑川さんだっけ?凛が前に話していたような気がするけど…大分イメージが違うな…。


ていうか、なんでこの子はこんなに悔しそうなんだろう…。

この…いい意味でも悪い意味でもアホな妹に、何かされたんだろうか…。


「え!?響先輩!?」


「あ〜そう言うの面倒だから止めてくれると助かるよ。ごめんね。うちのアホな妹が…。ほら、行くぞ凛…」


「え〜!?まだ面白そうなやつが何個かあるんだけど!」


「どうせこの後もいくつか襲撃するんだろ…。皐月ちゃん。気にしなくていいから。良ければ僕も一緒について行っていいかな?」


「はい!むしろ助かります!」


まだやりたそうな凛を無理やり引っ張って、教室から出る。

緑川さんにもとりあえず挨拶をして、4人で文化祭を回ることにした。


凛が体育館で開催されるって言う、ゲーム大会に出るとか言い出した時には、本気で怒ったけど…。


それ以外は、特に何事も起こさせず、その日を終えた。

終始、皐月ちゃんがなにか考え込んでたけれど、凛を抑えるのでそれどころじゃ無かった…。


何か悩みでもあるなら、普段凛が迷惑をかけている分、なにか力になってあげたいんだけど…。

今度何があったのか聞いてみるか…。

次回のお話は11月24日の0時に更新します。


全くの偶然ですけど、私も凛ちゃんと同じで、お祭りの射的とかは得意なんですよね!(聞いてない)


さすがにゲームなんかは落とせませんけど...

小さいお菓子なら沢山取れたことありますよ!


ごめんなさい自慢したかったんです(´・ω・`)

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