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第101話 協力者作り

今回のお話は、雫ちゃん視点でのお話になります。


今回から文化祭のお話になります〜

待ちに待った文化祭を翌日に控えた今日、最終調整をする予定だったところを休んでまで、私は気持ちを整えていた。


1週間くらい前に紅葉ちゃんとの間にあった誤解はすっかり解けて、今は今までと同じように接することが出来ている。


その事態を引き起こした張本人である鈴音先輩には、しっかりと…春奈先輩を通して文句を言ってもらった。

あの人には、私から言うよりも春奈先輩から言ってもらった方が良いと踏んでだ。


まぁそれは良いとして、なんで今日私が学校を休んでいるのか。

その理由は簡単で、明日からの3日間行われる文化祭。その最終日で紅葉ちゃんに告白する予定だからだ。


ただ、まだその覚悟が決まっていないから、今日1日を使って、必死に気持ちを整理しようとしているんだ。


告白の時に言うセリフも、どこで告白するかももう決めているけれど、いざとなると…少し怖い。


紅葉ちゃんがこの間、部室で勘違いだったとしても私のことを好きだと言ってくれた日、私はひっそりと告白を決意した。


「もう!経験が無いからこんな時どうしたら良いか分からないんだけど!」


実際、自分が書いている小説の中では、こんな状況何度か書いたことはあるけれど、自分が経験したことなんて、これが初めて。

そう。初恋なんだ。


幼い頃から男の人には興味のカケラも湧かなかったけれど、なぜか紅葉ちゃんを始めて見たあの日から、彼女の顔がいつも頭の中にあるような気がする。


実際、最近になって鈴音先輩のせいで私が紅葉ちゃんを好きだって自覚した。


こんな、自分では解決できない問題が出来た時は、いつもSNSで助けを求めるけれど…鈴音先輩が必ず嗅ぎつけるから…なんだかなぁ。


いや、待てよ…?


名案を思いついた私は、何も考えずにとりあえずある人に電話をかけた。

ちょうど修学旅行から帰ってきて、文化祭の準備に一番時間をかけられていないはずの2年生の先輩に。


「もしもし?ごめんね〜今ちょっと忙しくてさ〜!」


「あ、いえすぐ終わるので5分ほど時間をいただけませんか?鈴音先輩のことです」


「...はぁ〜。分かった。ねぇ恵〜私ちょっと席外すね〜」


そう。鈴音先輩のことで迷ったなら、その彼女の春奈先輩に相談するに限るのだ。

朱音先輩は…この前の件で信用ならないと私の中で決定づけられてしまったので却下だ。


恵先輩と結奈先輩は、春奈先輩と比べるとどうしても…威力?が足りない。

完全に鈴音先輩を抑えるには、現状はこの人しかいないだろう。


「それで?この前の件なら、ちゃんと先輩に言っておいたよ?」


「あいえ、その件とは別です…」


「また先輩が何かしたの?もう…」


「いえそれも違くて…。簡単に言うと、私が文化祭中に何をしても、一切干渉しないで欲しいんです。ただ、私の口から言っても絶対に聞かないので、春奈先輩から言ってもらえればと…」


もちろん、この先輩に相談しても100%安全というわけでは無い。

それこそ、無理やり私のすることに干渉してくる可能性だって拭えない。一応他の人にも協力を要請して、なんとかしてもらう予定だけど。


春奈先輩は、少しだけ唸った後、困ったような笑顔を浮かべているのが通話越しでも容易に伝わってくるような声で答えた。


「う〜ん。大体何をするつもりなのか予想は出来るんだけど、完全に抑えられるかって言われると、多分無理だよ?私も自分のお店があるし、2・3日目は先輩と一緒に文化祭回るけど…多分自分のことで精一杯になるだろうし」


「はい。それは想定済みです。なので、先輩には鈴音先輩に何も言わず、ただ3日目の終了間際、ある場所に先輩を寄せ付けないで欲しいんです」


「ある場所っていうのは?」


「それは――」


それから詳しいことを話した私は、先輩の返事を待った。

春奈先輩にお願いしたいのは、3日目の終了間際、私が紅葉ちゃんに告白しようと思っている場所に近付かないようにして欲しいということだけだ。


もう1人の協力者にも同じように頼むつもりだけど、今回は自分1人で考えた作戦だから、穴だらけかもしれないし、どこかで綻びが出るかもしれない。


だけど、協力者の人に頼むのは、別段難しくもないことだ。

その場所に近付かせないようにすれば良いだけなんだから。


それだけなら、いくら自分のことで精一杯になるかもしれない春奈先輩にも、ギリギリ頼めるだろう。


「うん。分かった。当日の先輩次第ってところが大きいけど、行けそうならやってみるね」


「ありがとうございます。助かります」


「ただ、あんまり先輩がアレだと…色々と私は無理になるかもしれないから、あんまり期待はしないでね?」


「…。了解です」


そう言って電話を切った後、思わずため息が出てしまった。

どれだけあの先輩たちはお互いのことが好きなのか…。


鈴音先輩のことを話しているときの春奈先輩の声のトーン、完全にニヤけてたでしょ…。

嫌とか言いながら、実際は嬉しくてしょうがないタイプの人だあれ…。


濃厚すぎて私には無理だあの2人…。

少しだけ憂鬱な気分になりながらも、残りの1人に電話をかける。


この人はまず、協力してもらえるように頼むところから始めないと行けない。

この人は私サイド?の人間じゃないからね。


「もしもし〜?」


「あ、今大丈夫?」


「うん。少しなら。ちょうど休憩してたから」


「良かった。実は協力して欲しいことがあってね?」


この人は、あんまり私達の前には顔を出さないし、いつも皐月さんに良いようにされてる。


だけど、実はあの3人の中だと一番手強くて、一番頭が回る人物だと、私は思っている。


それなのに、普段の行いや言動。簡単に物で釣られるところがあって、単純にアホな子だと思われているだけだと思う。


そうじゃなきゃ、いくら海外によく行くとはいっても、英語をほぼ完璧に話せるわけがない。


そう。私が協力を頼んでいるもう1人の人とは、砥綿凛さんだ。


「ん〜?なに協力して欲しいことって〜」


「実は、文化祭で紅葉ちゃんにサプライズをしたいのね?内容は言えないけど、とにかくビックリさせたいの。で、その時に美月さんと皐月さんが、ある場所にこないようにして欲しいの。良い?」


「え〜?私、文化祭は2日目しか行かない予定だったんだけど!ていうか、そんなこと私にはできないってば〜」


「ねぇ凛さん?今度好きなものなんでも買ってあげるわよ?お兄さんがお金に厳しいって聞いたし、案外自由にならないんじゃない?」


「え!?ほんと!?」


ほら。一番手強いとは言ったけど、こういう面では紅葉ちゃんよりもちょろいだろう。


ただ、紅葉ちゃんはシュークリームとかで折れてくれるのに対して、凛さんは平気でパソコンが欲しいだの、ゲーム機が欲しいだの言い出しかねないから少し不安だ。


まぁ、だいぶ貯金はあるからある程度のものならなんとかなる。

これぞいわゆる、賄賂作戦。


凛さんなら、滅多に学校に来ないから、物で釣れていれば、文化祭においてこれ以上心強い味方などいない。


美月さんとは2日目に一緒に回ると聞いた時から嫌な予感はしていたけど、まさか2日目で告白するなんてことはないだろう。


振られたとしたら、3日目をどうするつもりなのか説明がつかないし、そこまで順調のようにも見えない。


もちろん私も万全では無いけれど、美月さんよりは成功確率が高い気がする。

邪魔さえ入らなければ、少なくとも美月さんより優位な立場には立てるだろう。


「なんでもって、パソコンとかゲームソフト、その他諸々でも頼んじゃっても良いの!?」


「私はあなたみたいにお金があるわけじゃ無いんだから、あんまり高いものだと無理よ?予算は2万円以内で…」


「うっそ!やる!やるから絶対買ってね!?」


「なら、詳しい話をするけど、もちろん誰にも内緒よ?後、約束のものは成功報酬だから。失敗したら無しだからね?」


これは当然だ。こうすることで、裏切り…もとい皐月さんたちに勘付かれても簡単に口を割ることはないと思う。


それに、私たちは2日目も一緒に回る。もっと詳しいことや、当日の段取りはそこで決めたら良い。


2万円近い出費は痛いけれど、紅葉ちゃんを彼女にできる可能性が少しでも上がるのなら、いくらでも投資するべきだ。


あんな可愛い紅葉ちゃんを、美月さんに取られたくはない。

皐月さんを仲間に引き入れることも考えたけれど、美月さんの気持ちを裏切ることだから、凛さんのように物で釣られるとは思えない。


第1、あの人は美月さん優先!みたいな考え方だから、私の作戦には絶対に乗って来ないだろう。


とりあえず、凛さんと春奈先輩を協力者にできたのは上々だ。

後は私の気持ちだけだ。


「オッケー!じゃあ2日目もちょっとだけその件話したら、後は全部緑川さんの奢りで文化祭まわろ〜!」


「はい!?ちょっと待って?なんで私の奢り!?」


「だって、2万円分なら良いんでしょ?文化祭で色々使うのを、緑川さんのお金で〜ってしたら、多分1万円も行かないだろうし…。さすがに同級生にゲームソフト買ってなんて言えないもんね〜」


「はぁ…。失敗したらお題は返してもらうからね?」


「え!?なんで!?」


「なんでって...。成功報酬って意味わかってないでしょ!」


その後、10分ほどひたすら成功報酬について説明した私は、電話を終える頃にはクタクタになっていた。

こんな人の相手をしているなんて…ある意味皐月さんが一番強いのでは…?


いや、でもあの3人の中なら、一番力?を持っているのは間違いなく凛さんだから、仲間に引き入れておいて損はない…。

私の女の勘がどこまで当てになるかはわからないけど…。


少しだけ休憩したら、改めて心の準備をしよう。

そう思いながら私は、疲れた体をベッドに預けた。

次回のお話は11月6日の0時に更新します。


かなり長くなっちゃいましたが、次回から文化祭が始まります( *´ `*)

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