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第100話 唯一の理由

やっとブックマーク100件突破出来ました!

ありがとうございます!


今回は皐月ちゃん視点でのお話になります。

美月が紅葉に自分の正体を明かして数日経った日曜日、私は今日の予定を全て昨日のうちにキャンセルして部屋であることをしていた。


今日は本当な文化祭でやるお店の最終確認をする日だった。


結果的に私がいなくてもなんとかなると霜月さんが言ってくれたことで、なんとかことなきを得たけど、私は今文化祭なんかのことを考える余裕がない。


美月の紅葉に対するあんな態度を見てしまったら…いくら私でもげんなりする。


ただいま、絶賛私の部屋で葉月の膝枕に体を預けて癒され中だ。

慰めて欲しいって泣きついたら、意外とすんなり受け入れてくれた。


「でもどうしたの?急に…」


「日頃お姉ちゃんは色々と頑張ってるの〜。たまの休みに可愛い妹に癒してもらおうかなって〜」


「お姉ちゃんがお父さんみたいになった…」


葉月に頭を撫で撫でしてもらいながら、この前の美月のことを考える。

紅葉に怒られている時も、怒られた後も終始幸せそうで、久しぶりにあんなに笑っている美月を見た。


私が思い切り美月に好きという気持ちをぶつけていても、全くなびいてくれないのは分かっていた。


だけど、私がどう頑張っても振り向いてもらえない美月を、いとも簡単に虜にする紅葉に…少しだけ嫉妬する。


私と2人でいる時は、絶対に見せないような笑顔も、美月は紅葉の前なら簡単に見せる。

反対に、私がどれだけ一生懸命やっても引き出せないような笑顔は、紅葉がなにかするだけで引き出せてしまう。


「悔しいな…」


「ん?どうしたのお姉ちゃん?」


「なぁ葉月〜。萩君とはどうなんだ?なにか美月のこと話したりしてないか〜?」


「ん〜。萩君からお姉さんの話が出てくることってあんまりないよ?なんで?」


美月が紅葉に振られても諦めないつもりだっていうのは分かっていた。

だから、その時私はどうすればいいのか、最近は寝る前に必ずそのことを考える。


萩君からなにか私の知らない美月の情報が引き出せればと思ったけど…やっぱリ無理か。

はっきり言って、私がこれ以上美月にアタックしても、実る可能性は低いだろう。


それこそ、次にチャンスがあるとすれば、緑川と紅葉が付き合って1年経っても別れないってところだ。


そうすれば美月は諦めてフリーになる可能性がある。

本当に諦めるかどうかは定かでは無いけれど、今はそこにしか希望が見えない。


「葉月〜これからもお姉ちゃんが頼んだら膝枕してくれる〜?」


「うん!お姉ちゃんならいつでも良いよ!その代わり、その日は一緒に寝てね!」


「ありがとぉ…」


今の私の唯一の救いは、この可愛すぎる妹がいつでも慰めてくれることだけだ。

例え高校生になって萩君と付き合うことになったとしても、私を慰めてくれると信じたい…。


でも…確証もないまま1年、ただ可能性の薄い線の上を歩くなんて、そんな気の遠くなるような真似はできない。

なにか対策を考えないと。


一番簡単なのは、美月を裏切る形になるけれど、影で緑川と紅葉をくっつける手伝いをして、付き合い始めたら別れないように上手いこと誘導するってことだ。

だけどこの案は、できれば取りたくない。


理由は簡単で、この案は美月を裏切る行為に等しい。

自分の為だけに美月の恋を諦めさせるなんてことは…そんな非情な人間には私は慣れない。


使い方が違うかもしれないけど『友情を取るか恋を取るか』ってことなんだろう。


「なぁ葉月〜?聞いても良いか?」


「ん〜?なに〜?」


「葉月はもし仮に、友達が萩君を好きだって言ってきたら身を引くか?」


「え〜?なにそれ。急にどうしたのお姉ちゃん…」


「ふと考えて見たんだよ〜。葉月は友情と恋、どっちを取るんだろうって」


葉月を下から見る体制の私は、可愛く悩んでいる葉月を眺めながらある程度の予想を立てていた。

おそらく葉月は…


「そんなの萩君に決まってるじゃん!相手がお姉ちゃんとかならまた話は変わってくるけど、ただのお友達ならよく話して、最終的にライバルって形に落ち着くと思うよ?」


「ん〜。まぁ葉月ならそう言うよなぁ〜」


「最近のお姉ちゃん変じゃない?私が嫌って言ったのに髪型急に変えるし!髪色も凄いガラッと変えるし!」


「その件はごめんってば〜」


葉月は、私とお揃いのツインテールをよほど気に入っていたらしい。

もうそろそろ2週間が経つのに、まだこうやって可愛くふてくされている。


だけど、本当の理由は口が裂けても言えない。

私も葉月と同じで、萩君のお姉さんを好きになったなんて…。


まぁ美月本人には伝わっているから別にどうってことないかもしれないけどさ。


まぁそんなことより、今は美月をどうやれば紅葉からいい形で引き離せるかが問題だ。


美月の気持ちを無下にしての引き離すなんて論外。出来れば美月の気持ちを尊重しながらの幕引きにしたい。

誰かがアニメの中で言っていた気がする。


「誰かを助けると言うことは、誰かを助けないと言うこと」


確か萩君が見ていたアニメに出ていた人が言っていたセリフだけど、今ならその意味がよく分かる気がする。


この場合、美月を助けようとした場合は緑川と私が報われない形になり、反対に私や緑川を助けようとすると、今度は美月本人が報われない。


正義の味方がどうのとか言っていたけど、まさしくその通りかもしれない。

内容はあまり覚えていないけど、結局あのアニメの主人公も全ては救えていなかった気がする。


アニメに影響されるのは私らしくないけど、自分を犠牲にするか、美月の気持ちを犠牲にするか決めないといけないのかもしれない。


美月や凛が聞けば間違いなく怒られそうだけど、私的には美月の気持ちを無下にするくらいなら、私が犠牲になる。


だからあくまで、美月に協力しながら、今まで通り好意をぶつけるのは控えた方が良いかもしれない。


「ねぇお姉ちゃん?なんで泣いてるの…?」


「え…?いや…泣いてないし…」


「泣いてるもん。どうしたの?そんなに辛いことがあったの?」


「なんでもないって!大丈夫…」


自然と溢れてきていた涙を乱暴に拭って、改めて自分の不安定すぎる心と立場を自覚する。


表面上は今まで通り協力しながら、美月に対する思いはしばらく封印しよう。

この気持ちは…今は邪魔になるだけだ。


神様が、あのとき勇気が出なかった私に対して与えている試練だと思えば良い。

神様とか信じてないけど…そう考えないとやってられない。


私だってただの女子高生なんだ。小説のなんでもできるようなラブコメヒロインじゃないんだ。


この試練を超えた先には、美月の恋が叶っていると言う未来しか、あってはならないと思う。


私のこの気持ちの優先度は、美月はもちろん、緑川や紅葉の気持ちよりも下なんだ。

私にとって一番尊重しないといけないのは誰なのか、よく考えたら分かるはずだ。


私はそう決めると、葉月の太ももに顔を埋めて小さい声で泣き始めた。

自分の気持ちのために流す涙は、これを最後にすると覚悟を決めて…葉月になんと言われようとも、そのままの体勢を維持した。


当面の目標は、美月の恋を叶えつつ、円満な形?で紅葉と緑川を別れさせることだ。


あの2人はまだ付き合っていないけれど、美月の言う通り付き合うことはほぼ確実だろう。


ならば、美月の願いを叶えるには、あの2人が付き合った後、できるだけ円満な形で別れさせる他ない。


また意味がわからないほど頭を使う日々が待っているだろうけど、今回は葉月に好きな時、好きなだけ甘えられるというオプションが付いている。


自分の心をいくら犠牲にしようと、いくらこれが無理難題だろうと、私はやり遂げないといけない。


それが、私が今ここにいれる唯一の理由だから。

次回のお話は11月3日の0時に更新します。


毎度の事ながら、ハロウィンにちょうど100話を持ってこれたのは、単なる偶然です。


ですが、ここまで続けられているのも読んでくださる皆様のおかげです!

これからも是非よろしくお願いします!m(_ _)m


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