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第99話 likeとLoveの違い

久しぶりに後半の方には美月ちゃん視点でのお話があります。



大事な話があると部室に呼び出した雫ちゃんは、2分もしないうちに部室まで来てくれた。

中にいるのは私だけだと分かっているはずだけど、一応ノックをしてから入ってくるのは雫ちゃんらしい。


どうぞの声を聞かず、形だけのノックをして部屋に入って来た雫ちゃんは、なんだか見たことないような複雑な表情をしていた。


そりゃ、訳も分からず突然避けられたりしたら、私だってそんな顔になると思う。


私の場合、毎日のように理由が分からず泣いていたけども。

だけど、今日ここで誤解を解いておかないと、もっとややこしいことになりかねないし!


「大事な話って?どうしたの急に」


「あのね?えっと…最近その…私があれしてる件で…」


やっぱり、雫ちゃんを前にすると、どうしても恥ずかしくなってしまう。

ここ数日、ずっとお母さんと鈴音先輩に変なことを吹き込まれ続けたせいだ。


学校と家でのダブルパンチ?で私がさらに雫ちゃんに対して変な感情を抱いてしまっている。


でも、朱音先輩にも嫌いなんじゃなくて、むしろ好きだってちゃんと伝えなさいって言われし。

大丈夫。別に恋愛的な好きって意味じゃないから…多分雫ちゃんも許してくれる。


「あ…ごめんね?私が何かしちゃった?全く心当たりがないんだけど…」


「違うの!雫ちゃんが何かしちゃったとかじゃないの!というか、雫ちゃんになら…何をされても大丈夫って言うか!いや別にそんな意味じゃなくて!違うの!変な意味じゃないんだけど!」


「待って待って?紅葉ちゃんテンパりすぎだって。とりあえず深呼吸。ほら。吸って〜?」


雫ちゃんの言う通り、緊張しすぎて変な方向に話が逸れてしまった…。

とりあえず深呼吸して気持ちを落ち着ける。最後にもう一度だけ息を吐いてから続きを話し始める。


「あのね?雫ちゃんをここ最近避けてたのって、別に雫ちゃんが何かしたとかじゃないの。主に鈴音先輩と私のお母さんのせいで、色々あって…雫ちゃんの顔がまともに見れなくなってるだけなのね?だから…あの…」


「ねぇ紅葉ちゃん。私はその話、どんな顔して聞けば良いの?凄い恥ずかしいんだけど!」


「いやあの違うの!そう!likeじゃなくて、loveの方の好きなの!だから別に変な意味じゃなくて!いや、そもそもlikeとloveの違いがあんまり分かんないけど、とりあえずloveの方なの!だから!」


そこまで言って、雫ちゃんが突然私に「ストップ!」と言って来た。

やけに必死だったから、思わず雫ちゃんの方を見てみると、耳まで真っ赤になって下を向いていた。


どうしたんだろう…。別に変なことは何も言ってないんだけど…。

まぁlikeとloveの違いなんて、朱音先輩の前では分かってるようなフリしたけど、実のところ全く分かんない。


likeが恋愛的な好きで、loveが友情的な好きって、どっちも同じじゃないの?状態なんだけど…。


だって、どっちも言いたいことは好きってことでしょ?

分ける必要あるの?


「いや落ち着け私…。紅葉ちゃんだから勘違いしてる可能性も…」


「雫ちゃん…?大丈夫?」


そう聞いた私に、突然席を立った雫ちゃんは、私の真ん前まで歩いて来て、私の肩を掴んで再び確認して来た。


本当にlikeじゃなくて、loveの方で好きなのか!と…。


「うん。違いがあんまり分かんないけど、朱音先輩も言ってし。likeじゃなくてloveって言ったら大丈夫!って」


「朱音先輩…。ちょっと待ってね!?本当に1分くらい待ってね!?」


そう言うと、まだ耳まで赤い雫ちゃんは、私に背を向けて誰かに電話をし始めた。

雫ちゃんの受け答えから察するに、多分朱音先輩に電話してるんだと思う。


そして、1分ほど言い合いが続いた後、なぜか覚悟を決めたような顔をした雫ちゃんが、私に最後の確認と前置きをして、聞いて来た。


「良い?一応確認するけど、likeっていうのが簡単に言えば好きって意味ね?これは分かる?」


「うん。朱音先輩もそう言ってたよ?likeよりloveの方が軽い?みたいなこと言ってた!」


「…。はぁ〜!だよね!ビックリしたぁぁ!」


「ど…どうしたの!?」


急に大きな声で安心したように息を吐いた雫ちゃんは、そのままの勢いで床に座り込んでしまった。


だけど、安心してるように見えてどこか残念そうなのは、なんでだろう。

というより、なんで安心してるのかが全くわからないんだけど。


誤解させちゃってたし、それで安心したのかな…?

それにしても…なんだか大袈裟なような気もする。


「いい?紅葉ちゃん。likeって言うのは、平たく言えば好ましいとか、優しい意味の好きなのね?大体友達とかに向ける好きはこっちを使うの。大好物の好きも、likeなのね?それは分かる?」


「え?でも朱音先輩が言ってたのは逆だと思うんだけど…」


「まぁそれは…気にしないで。で、loveの方が…その…。愛してるとか、愛っていう意味があるのね…?彼氏彼女に使うのはこっちなのね…?だからその…」


「え!?嘘!じゃあ待って?私さっきまで…」


自分がしてしまったことの重大さに気付いた時には、もう遅かった。

私の顔はさっきの雫ちゃんと同じように耳まで真っ赤になって、机に突っ伏してしまった。


朱音先輩がlikeの方がそうだって言うから…信じたのに…。


私は、ずっと雫ちゃんに愛してるって言っちゃってたってこと!?嘘!

凄い恥ずかしいんですけど!どんな顔で雫ちゃんとこれから話せばいいの!?


「まぁこの件に関しては、朱音先輩が全面的に悪いから、私は気にしないよ?ただ、高校生にもなってlikeとloveの違いが分からないのは…問題があると思うのね?」


「だってぇ…」


「だってじゃなくて。紅葉ちゃんさ、純粋なのは良いことだけど、先輩たちみたいに悪い人もいるんだから、信じる人は決めときな?」


「うん…。じゃあ本当に…気にしてない?」


「気にしてない…から。はぁ…ビックリした…」


「ごめんね…。でも、雫ちゃんのこと、好きなのは本当だよ?loveとかlikeとか、まだあんまりよく分かんないけど、でも、雫ちゃんのことは好きだよ!」


恥ずかしい気持ちをなんとか抑えながら、精一杯そういうと、雫ちゃんも笑顔で答えてくれた。


雫ちゃんから「私も好きだよ!」なんて言われたら…どうにかなちゃいそうだ…。

それこそ、変な想像が現実になったみたいで…イケナイ方向に思考が移ってしまいそうになる。


雫ちゃんがいうところのlikeの方だって分かってるのに、どうしてもなんだか恥ずかしくなってくる。

しかも、満面の笑みでそう言われると…もう耐えられない。


私は変な声を出しながら、また机に突っ伏してしまった。

これ…大丈夫かな?前より顔が見れなくなる気がするんだけど…。


とりあえず昼休みが終わるまで体調?が治らなかった私は、雫ちゃんに肩を貸してもらいながら教室へと戻った。


いつもならそこまで気にならない雫ちゃんの良い匂いが、この時はやけに気になって、密着してる間、ずっと心臓が高鳴っていた。


放課後、朱音先輩にことの真相を確かめてみると、案の定私は嘘を教えられたらしい。


先輩に言い訳を聞くと「そんな中学生でも分かるレベルなのに、まさか信じるとは〜」って笑いながら言われた。


先輩のせいで私は余計に雫ちゃんをみると恥ずかしくなる現象に陥りました!って不満気味に言っても、良かったね〜としか言わないし!

何が良いの!?全然良くないんですけど!


家に帰っても、お母さんはお母さんで興奮しながらいろいろ聞いてくるし!


なんか…この環境が嫌になってくるんですけど!

明日からどんな顔して雫ちゃんに会えば良いのか…。


◇ ◇ ◇


「で?どうするんだこの先。案の定好き避けだったわけだけど」


最高の席順になった日の昼休み、私と皐月は、お互いの新しい席でお弁当を食べていた。


紅葉ちゃんも緑川さんも、昼休みになるなり何処かに行っちゃったから、この話をするなら今しかない。


もちろん放課後凛の家でも話せるけど、今日は予定が入ってるから話しておきたいことは今話しておきたい。


とりあえず、皐月のおかげで紅葉ちゃんとの対面はうまく行った。

好き避けだったこと以外は、今の所理想通りだ。


「何も変わらないよ。予定通り、文化祭2日目に決行する。もう場所も決めてるから、後は邪魔が入らなければ大丈夫!」


「ふ〜ん。私としては微妙な気分だけど、応援してるよ。でも、仮に降られたとしても当然諦めないんだろ?」


「もちろん!ていうか、好き避けだったんだから、振られるのは分かってるよ?むしろ、告白のその先に私は可能性を見出してるの」


「どういうこと?」


好き避けだった場合、当然だけれど私の恋が文化祭までの短い期間だけで叶うようになる訳がない。


そんなに私は紅葉ちゃんのことを甘く考えてないし、緑川さんのことも甘くは見てない。


多分、緑川さんも早くて文化祭3日目。遅くても冬休みまでには紅葉ちゃんに告白すると睨んでる。


最悪の場合、文化祭3日目に告白されて、そのまま付き合うという形だと思う。

だけど、何もそこですべてが終わりじゃない。


文芸部に入ることになって、私もかなりの本を読んで勉強してるんだ。

大体の恋愛小説のヒロインの子達って、主人公の人に好きな人がいても諦めない場合が多い。


その作品は男女の恋愛モノだったけれど、この際男女だろうが女子と女子だろうが、あんまり関係はないと思う。


「そんな物語の中の話を理由にドヤ顔されてもなぁ…」


「いい?高校生で付き合って半年以内に別れる確率って、半分以上らしいのね?昨日ネットで見たんだけど!だから、もし緑川さんと紅葉ちゃんが付き合っても、半年待てば別れてる可能性があるのね?」


「ならそれは、美月と紅葉が付き合った場合でも同じことが言えるんじゃないのか?っていうか、よく知らないネットの記事をよくそんなに信頼できるな…」


「私と紅葉ちゃんが付き合った場合、上手く立ち回れば多分別れることは回避できると思うのね?で、仮にあの2人が付き合ったとしても、紅葉ちゃんと緑川さんに勘付かれない程度にアタックを続行するの!」


そしたら、卑怯な手かもしれないけど、緑川さんと別れて悲しんでる紅葉ちゃんに「私はまだ好きだから…付き合って?」と言えば、今のこの状況よりは成功確率が上がると思う。


ちょっと…というかだいぶ卑怯だと感じるけど、これが今のところ一番付き合える可能性が高い案なんだ。


少なくとも、文化祭まで1ヶ月もないのに、その間全力でアタックして微妙な関係になるより、少し引いて構えてた方が、ダメージが少なくてリターンが高い。


気持ちが固まってる人の心を動かすのは難しくても、気持ちが揺らいでる人の心を動かすのはそう難しいことじゃない。


「そんなに上手くいくか?そもそも、その作戦は緑川と紅葉が別れる前提だろ?別れなかった時は?そもそも、自分の好きな人が別れたところにつけこむって、私的にはどうかと思うけどな…」


「私も別に、本気で奪おうとは思わないよ?仮に一年待っても関係が続くとかなら、きっぱり諦めるし、緑川さんが紅葉ちゃんを不幸にしないんだったら、私は別に…良いから」


「明らかに良いって顔じゃないけどな。まぁ、そこのところはまた追々考えていけば良いか。何かいい案を思いついたらまた相談するから」


「ありがと!皐月」


教室での私達の短い会議は、そこで解散になった。

だけど、私は振られる前提で紅葉ちゃんに告白して、その後の展開に全てをかけるっていう方針を変える気がないことは、皐月も分かっていると思う。


私にとっての本当の勝負は、告白が終わってから。

もちろん成功するのが一番いいけど、好きな相手がいるのに私と付き合うなんて…残念だけど紅葉ちゃんは言わない。


分かってても、好きな相手に振られるっていうのは辛い。だけど、紅葉ちゃんに私の気持ちを知ってもらわないと、そもそもこの作戦は始まらないから仕方ない。


文化祭までに、私も色々と心の準備をしておかないと…。

次回のお話は10月31の0時に更新します。


次のお話は自分で言うのもあれですけど、100話にしてはちょっと心にくるお話になりました。


お楽しみに?お待ちくださいm(_ _)m

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