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第80話 結・ゲーテブルク城


 あれから食堂でクロスたちとはいろいろと話した。


 お互いの冒険のこと。


 領地や極東のこと。


 世界のいろいろな場所やモンスターのこと。


 そして、全然意味はない、バカみたいにくだらないこと。


 わはははは……


 途中でモリエが眠ってしまったのでこの子は俺の膝の上にちょこんと乗せ、抱っこしてあげていると、エマが「モリエのやつ、まるっきり赤ちゃんですねーw」と言ってケタケタ笑ってた。


「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」


 気づくとずいぶん時間がたってしまっている。


「あわてないで一晩くらい城に泊ってけって」


 とクロス。


「そうもいかないんだ。今は議会の会期中でさ。文字通りスっ飛んで帰らなきゃ」


 議会という『難しワード』に、その場のみんなが顔を見合わせた。


「エイガお前、本当に本当に本当に本当に領主なんだな」


 ライオンみたいに言うなよ。


「まあな……。おい、モリエ。一回起きろ。部屋で寝ろって」


「うーん、お師匠。ボクの一大決心を……zzZZ」


 ?


「仕方ないですねー。赤ちゃん(笑)はアタシが連れてきますからーww」


 あ、エマ。イタズラする気だな。


「あー、起きた起きた!……あれ、師匠? もう帰っちゃうの?」


「チッ……」


 こうしてモリエが天才のカンかなにかで目を覚ましたので、いよいよお別れである。


「じゃあばいばい。みんな魔王戦、頑張れよ」


 そう別れを告げると、クロスは笑い、モリエは手を振り、エマは嘲笑し、デリーは黙って、それぞれ部屋へ戻っていった。



 ◇



 その後、俺はみんなと別れてひとり南棟の食堂を出ると、メイドに案内された暗い廊下をたどっていった。


「うっ……」


 だが、静かになるとすぐにドッと疲れが押し寄せるのを感じる。


 興奮してしゃべっていたから気づかなかったけれど、そういえばここへ来るまでほぼ寝ずに飛んできて、すぐさま戦闘だったのだ。


 やっぱさすがにキツい……。


 でも、今さら戻って『やっぱりキツイから泊めて』と言うのはカッコ悪すぎだよなぁ。


 そう悩んでいた時。


 あのメイドに待機させられた連絡通路前のソファーが見えてくる。


 ちょっとだけ、ちょっとだけここで横になってから行こう。


 ドサ……


 そう思ってソファーへ倒れ込むと、急速にまぶたが溶けてゆく。


 最後に目に映った花瓶のバラは、深夜の月のかたむきでたくみに色合いを変えていた。



 ……zz

 …………zzzz



 チュン……チュンチュン……


 で、次に目を覚ますとすでに朝陽あさひがキラキラとしていたのである。


 やっちまった!


 そう思った時、


「起きたのかしら」


 と、上から女の声がする。


 気づくと身体にはあたたかな毛布がかけられていて、そして、ほおの下では若い女の太ももがぷりぷりとまくら代わりになっていた。


「ティアナお前……なにしてんの?」


 俺は顔を仰向あおむけにして女へたずねる。


「それはこっちのセリフよ」


 伸びやかで正しい姿勢に、乳房のぷっくりした膨らみがお行儀よく並び、その丘の向こうで赤い眼鏡がキラリと光った。


「王さまへの説明が終わって帰ってきたらここであなたが眠っていたの。とてもビックリしたわ」


「ちょっと横になってただけだよ……。つーかお前、それで一晩中そうしてたのか?」


「そうよ」


 ティアナはくてんっと首をかしげて三つ編みを揺らし、『それが?』というふうに目をぱちくりさせた。


「なんで? なんでそんな(異常な)ことするんだよ!」


「おれいよ」


「あ?」


「昨日、助けに来てくれたでしょう? そのおれい


「べ、別に」


 俺はスカートの上でごろんと寝返りを打ち、そっぽを向く。


「そんなんじゃねーよ。けっきょく迷惑かけたし……」


 いや、たとえそうだとしても、そのおれいに一晩中ひざまくらするやつがあるか!


 コイツ、待ちぶせへきっつーか、基本発想がストーカーなんだよな(汗)


 でも、まあ……


 太ももは気持ちいいけど。


「つーかお前、これから魔王戦だろ? ちゃんと寝なきゃダメじゃん」


「問題ないわ。魔王との戦いは夕方からよ。まだまだ時間はあるの」


「そうなのか」


 とつぶやくと、俺たちはしばらく黙った。


 早朝そうちょうの小鳥のさえずり。


 石造りの窓枠まどわくで青空が区切られ、雲は白く、赤いバラは明瞭に赤い。女はやさしくて、太陽の光が(さん)(さん)とあふれ、肌にふれる毛布はあたたかかった。


 ガヤガヤ……


 しかし、やがて城の朝がやって来たようで、そこかしこから兵士の起き抜けの雄叫びや、寝具の片づけや、食事の準備など生活の音が聞こえてくる。


 ここへもすぐに人が来るだろう。


 俺は太ももからむくりと身を起こした。


「どっか隠れようか」


 赤いメガネがうなずく。


 俺は彼女の手をやさしく引いてソファから立ちあがった。



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