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第67話 メイドの給料


「あ!領主さま。お目覚めですか?」


 気づくと、部屋の窓際でメイドが花瓶の水を変えていた。


 午後の陽が、ベッドのシーツやメイド服の紺と白をパリっと規律めかしている。


「ん、んん……今何時?」


「ええと、今は1時ほどです」


 どうやらあれからまた午前中まるまる眠ってしまっていたらしい。


「んんー。もう起きねーとな」


「うふふ」


 俺がベッドの上で半身を起こすと、メイドは少しだけ窓を開けてくれた。


 吹き込む、冬晴れの雪の香り。


 日だまりのなかで、白いレエスのカーテンが花嫁のベールのごとくふわりと膨らんでそよいでいる。


「っ……しょ」


 俺はなかなかベッドから出る決心がつかなかったが、しばらくすると頭をブンブン振りながら居間へ降りていく。


「「「おはようございます! ご主人様」」」


 すると、メイド3人娘がすぐにあたたかそうなご飯を用意してくれたのだった。


 ほかほか~


 ちなみにメイドといってメイド服をひらひらさせてはいるものの、彼女らは純然たる遠雲の娘であるから、作るご飯などは極東文化圏のものになる。


 白いお米に、味噌汁、漬物、焼き魚……


 まあ、これまでも五十嵐さんがお嫁さんスキルで作ってくれたご飯はこれに類する献立であったから、今や舌もだいぶこちらの方に慣れてんだけどね。


 でも、このはしってヤツを使うのは、やっぱり難しいけどな。


「あっ、旦那!やっと起きたんスか?」


 こうしてメシを喰っていると、ガルシアがそろばんで自分の肩を叩きながらやって来る。


「ああ、おはよ」


「あっはっは、ちっとも早くねーッスけどね」


「うっせえ」


 モグモグモグ……


「ところで五十嵐さんは?」


「さっき実家に用があるって出ていったッスよ」


「ふーん」


 あれ、実家?


 五十嵐さんは実家を避けてたんじゃなかったっけ。


「何時ごろに帰ってくるとか言ってた?」


「さあ。実家から来た話が話ッスからねぇ」


 実家から来た話ってなんだ?……と聞き返そうとした時、


「ご主人さま。紅茶はいかがですか?」


 とメイドのスイカが尋ねてきたので話がれた。


「そうだな……って、ん? お前ら、紅茶()れられるの?」


「はい!」


「ご主人様さまがお好きだと聞きおよびましたので!」


「私たち3人で勉強しているんです」


 ふーん。


 そんなふうに言われると紅茶を頼んでやりたくなるが、「物には食べ合わせというものがあるから紅茶はあとで頼むよ」と言うと、彼女らみんなせっせとメモを取りだした。


「若いのに熱心な娘たちだな」


 と、俺はガルシアへ向かってつぶやく。


 それを横で聞いた3人娘たちはみな「デヘヘ♪」っとメイド服のエプロンをモジモジとさせるので、さすがに可愛らしく思われた。


「ところで旦那」


「ん?」


「彼女らの給料についてッスけど」


 うっ……。


 ほんわかしていたところで現実的な話をするヤツである。


「なんスか?」


「いや……」


 これまでは給料とかそこらへん、なんとなくでやってきた。


 例えば150人部隊は、『クエストをこなしている』ということが領内で知れ渡っているし、スター性もあるので、引き続きそれぞれの村で分配にあずかれるという前提の下、遠征など外へ行った場合においてはその都度に装備や小遣いを配ったりする。


 それくらいの感じでやってきたのだった。


 しかし最近は、こうしてメイドを雇ったり、鍛冶工房で弟子を受け入れたり、アキラの掘削の手伝いを募集したりという具合に、内政においても直接的に人を使いだしている。


 それも各村の既存産業とは別の、新産業で。


 ここまでくると、次第に各村の慣習だけに頼っているわけにもいかないだろうとは思っていた。


 でも……


 正直カネの話を考えるのって、面倒くせーんだよなぁ。


「そこらへんは、よきにはからってくれよ。お前、商人だろ? 給料とか財務とか、そーゆうカネの話はお前に任せることにしたんだから」


「基本的にはそうさせてもらうッスけど、最低限知っておいてもらわなきゃいけないこともあるんス」


 まあ、確かに。


 直接雇った領民たちがちゃんと生活していけるかどうかとか、そこらへんは領主としても気になる。


 特に、この遠雲の人々はどこか『のほほ~ん』としていてナチュラルに勤勉なので、こちらが『うっかりコキ使ってた』みたいな場合でも黙って働き続けるような感じがある。


 これじゃイケないので、そこは俺も気を付けて見張ってなきゃいけない。


 別にこれは『従順だからといってコキ使ったら可哀想』とかそういうことだけじゃなくて、それぞれの産業や職種ポジションの領民たちへバランス良くとみ的なものが分配されていかなきゃ、領地全体を長期的に強国にしていくこともできないはず……というふうに、素人領主なりに思うからだ。


「でも、カネはねーぞ。ぜんぶ遠征用で手一杯なんだからな」


()()っつーのが『ボンド』って意味なら、そんなの必要ねーんスよ。ここはハーフェン・フェルトじゃなくて、旦那の領地なんスから」


テールもないぜ」


 テールは鬼ヶ島クエストをこなしているナオへ預けてあるので、残してあるのは今度の議会への出張費くらいなものである。


「給料支払いにテールもいらねーっス。たしかに極東で一番流通しているカネはテールッスけど、遠雲でテールなんて使ってんのはごく一部ッスから」


 たしかに。領民たちがカネ使ってるとこなんか見たことねーもんな。


「じゃあ穀物コメか?」


「つっても自分ら、まだ年貢を徴収してねーじゃねえッスか」


「じゃあどーすんだよ!?」


「ええ。なんで彼女らマナカ、スイカ、イコカの3人には、月ごとに【2000pt】を発行チャージしていこうと思うんス」


 ……は?


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