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【1章挿話】 回復系白魔道師エマ・ドレスラー

※挿話は視点が変わります。



 ザハルベルトへ向かう船。



 アタシは甲板デッキの船上カフェで、 カフェオレを注文したところだったんですけどぉ……



「あーあ、退屈ですねー。ねえ、ティアナ先輩」


「……」


「ティアナ先輩?」



 向かいの席に座るティアナ先輩ったら、アタシのことガン無視なんです。


 カワイイ後輩に対して、ありえなくないですかぁ?



「ねえ!ティアナ先輩たら!」


「へ?……あ、ゴメン。考えごとしてたわ。なぁに?エマ」



 ティアナ先輩はファッショナブルな赤い眼鏡めがねを正しながら、やっとこちらを向きました。



「もう……。エイガ先輩のことまだ気にしてるんですかー」


「そうじゃないのだけれど……」


「しょうがないじゃないですかぁ。弱い人がパーティをクビになるのは当然でしょ?エイガ先輩に関しては遅すぎたくらいですよぉ」


「はぁ……。だから、そうじゃないって言ってるじゃない。私たち、これからは魔王級のクエストもこなしてゆくことになるわ。あの人じゃ戦いについてこられないもの。本人にとっても、あれが一番よかったはずよ。暮らしてゆくのに困らないくらいの【退職金】は渡したつもりだし……」



 なーんて言いつつ、金髪三つ編みをションボリさせるティアナ先輩。



「だったら元気出してアタシと遊んでくださいよぉー。ツンデレ先輩」


「ツンデレ先輩とか言うなぁ!」



 なーんて、ティアナ先輩をイジメて遊んでたんですけどぉ、あんまり面白くないなーって思ってたとき、


「ねえキミ、せき一緒しない?」


「すげぇ美人さんだよね」


 と、後ろから男の人の声が聞こえてきました。


 いわゆるナンパですねー。


 まあ、アタシくらいの容姿端麗、品行方正、性格美人ともなるとぉ、ナンパなんてぜんぜん珍しくもなーんともないんですけどぉ、ちょうど退屈してたしー、相手のおにいさんたちちょっとイケメンだしー、お茶の相手くらいなら少しだけしてあげてもいいかなー……



「その眼鏡めがね似合ってるよね。すげえ知的」


「金髪の三つ編み自毛じげ?お人形さんみたいだね」



 って……。


 おーい、こっちにも美少女いますよー。


 栗毛のポニーテールがチャーム・ポイントで、ぴっちぴちの18歳、エマ・ドレスラーちゃんがここに!!


 ぴょーん、ぴょーん……


 アタシはとにかくおにいさんたちの視界に入ることが重要だと考えて、体を大きく動かしたりなどしていたのだけれど、それで獲得できたのはティアナ先輩からの怪訝けげんな視線だけでしたぁ……。


 しかし、そのティアナ先輩もすぐにおにいさんたちの方へ視線を戻します。


「ねえ」


「ん?なになに?」


「あなたたち。悪いけど、消えてくれる?3秒以内で」


 と、金髪へ手櫛てぐしを入れながら冷たく言い放つティアナ先輩。


「あ、その、えっと……」


「す、すいませんでした(汗)」


 それで、ちょっとイケメンなおにいさんたちも心折れたらしく、逃げるように去っていってしまいました。


 あーあ……。



「はぁ……鬱陶うっとうしいわね」



 ティアナ先輩は本当にお人形さんのような横顔でミルク・ティーをすすると、ため息をついてまた考え込んでしまいました。



 つーか、この女腹立つー!!


 ため息がアンニュイなのが余計に腹立たしいですよ!


 アタシの頼んだカフェオレはまだ来ないし!



 もう……こんな先輩放っておいて、やっぱり部屋でBL本読んでるのが一番ですねー。


 げへへへ♪



「エマ」



 そんなふうに決意して席をたったとき、誰かが後ろからポンっと肩を叩きました。



「デリー……いたんですか」



 振り返ると、ウチのパーティで前衛を担っているデリーが、いつもの無表情な顔で立っています。



「オ、オレは……エマ、き、綺麗だと思う」


「デリー……」


 コイツに言われてもなーんにも嬉しくないですけどぉ、


「はぁ……ありがと」


 アタシは一応そう答えておきました。



 ◇



 ボー……



 さて、ザハルベルトに到着です。


 アタシあれからリビドーの限りを尽くして船の部屋に籠りきりだったんでぇ、もう正直クタクタでしたけどぉ。



「あっ、『奇跡の5人』じゃないか?」


「おお!あれが勇者クロスか!!」



 アタシたちが船のタラップを降りると、待ち構えていた記者団らしき人々が声をあげます。



「きゃー!デリーくん♡」


「こっち向いてえ!!きゃーっ!」



 そして、どこにでもいるデリーのファン。


 小さなころから一緒に育ったアタシにはよくわかんないんですけどぉ、デリーにはこういう人気があるんですよねー。


「……」


 本人は迷惑そうですけどぉ。




 あっ。


 そうこうして上陸すると、記者団がワッと寄ってきました。



「クロスさん。今回こうして『奇跡の5人』がいよいよザハルベルト入りするワケですが、ご自信のほどはいかがでしょうか?」


「どこにいても、オレたちは一戦一戦、オレたちの戦いをするだけですね」


「このザハルベルトへ来たということは、魔王級のクエストにかかることにもなると思うのですが」


「ひとつだけ言えるのは……オレたちの戦いはこれからだ、ということです」



 クロス先輩はあいかわらず頭カラッポですねー。


 まあ、そこが薄っぺらなマスコミ受けするみたいなんですけどぉ。



「しかし、『奇跡の5人』と呼ばれる勇者パーティですが……ひとり足りないようですねぇ。内部でなにかトラブルでもあったのでは?」


「っ!……」



 ところが、スキャンダルきそうな顔をした記者がそんなふうに尋ねると、クロス先輩は言葉をつまらせてしまいます。



 っていうかー、本当は2人足りないんですけどぉ。


 気づかれてないエイガ先輩、ちょーウケる(笑)



「攻撃的ウィザードの【モリエ】なら、ただいま単独遠征中です。あとから合流の予定ですから、なにも問題はありません」



 あー。こういう受け答えはティアナ先輩じゃないとできないですねー。



 ざわざわ……


「さすが『天才モリエ』だ」


「あのとしで勇者パーティから単独遠征を任されるとは……」


 と記者団は別のノリで騒ぎ始めました。


 モリエは注目株ですからねー。




 でも、ティアナ先輩。


『なにも問題はない』


 ってゆーのはウソですよねー。


 モリエが帰って来て、『エイガ先輩が解雇された』って知ったら……




 まあ、アタシがクビにしたわけじゃないんでー。


 そこらへんはクロス先輩とティアナ先輩に任せることにします。


 てへっ♪


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