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第61話 融合魔法


 150人部隊のうち、先に帰還して水路を作成していた50名。


 これに対してケルムト文化圏に残った100名は引き続きクエスト区域で戦っていたワケだけれど、そのうち50名が領地に帰って来た。


 2隻目の船で、である。


 彼らは板東義太郎へ命じていたとおり、その後の戦いで獲得した鋼鉄系のアイテムを船へ積んで持ち帰って来てくれたのだった。




 カチャ、カチャカチャ……


 銀光りするはがねつるぎたてよろいやり


 俺はこれらを、「他に置いておく場所がないから」とやかたにゴチャゴチャと並べておいたのだったが、


「ちょっと旦那だんな


 と、ガルシアが眉をひそめて言う。


「この武器の山、なんとかならないッスか?」


「なんとかって?」


「今やこのやかたにはいろいろな人が面接に来るし、村の有力者が訪ねてもくるんス。その時にこんなゴツゴツした武器が転がってたらどう思うと思うッス?」


「え?『カッコイイ』って思うんじゃねーか」


「ビビるんスよ。昨日なんてメイドの面接に来た娘さんたちが怖がって帰っちまったんッス」


「マジで!?」


「……飾りにしても統一感がないので、ただらかっているだけにも見えます」


 と、五十嵐さんまで言う。


 うーん。


 最近はガルシアと五十嵐さんにやかたのことを任せっきりだったからな。


 やかたでの内政的な人事、広報、財政、産業施策……みたいな俺の手の回らない細かいところを本格的に運営し始めてくれている。


 面接やお客さんも確かに多い。


 そこに支障をきたすと言われると、さすがに訴えを無下にするわけにもいかなかった。




「というワケなんだけど、もうこっちへ運び入れてもだいじょうぶか?」


 そこで、建設中の【鍛冶工房】へ行き、大工の棟梁とうりょうに尋ねてみる。


「ああ領主さま。ええと……お荷物なら、あちらのもう出来上がってる方へやっちまってくだせえ。しかし、こっちのかまの方は作業中なんで勘弁を」


 鍛冶工房は、建物そのものはすでに出来上がっていた。造りはランティスの鍛冶屋をマネして倉庫ふうにしてもらっている。


 あとはいろいろな設備をリヴと相談しながら整えてもらっている段階とのこと。



「ふー……。やれやれ。ん?」


 こうしてアイテムを運び終えると、かま作成の横でタバコをくわえているリヴが目に入る。


 俺はポンっと彼女の肩を叩いた。


「よぉ、リヴ。これで設備が調えば武器を作れそうか?」


「エイガ。うーん、できるはできるけれどね……。これだけじゃ大したものはできないよ。そこらで売っている普通の武器ができるだけさ」


 そう言って、ちょっと不良っぽいしぐさで髪をかきあげてから続ける。


「つまりは、いい素材がなきゃ、特別な仕事はできないってことだよ」


 それはもちろんそうだ。


 鉄はあくまでベースとなる素材というだけのこと。


 でも、必要な素材は、俺が冒険で世界中から集めてきてやる。


「具体的にはどんな素材が必要なんだ?」


「そりゃあ、あんたが今どんな武器を必要とするかによるさ」



 ……どんな武器を必要とするか、か。


 これはもう決まっている。


 それは、領民たちの力を集めて一撃の攻撃力へと昇華する【魔法融合】を可能にする武器だ。



 これまでは一人一人の攻撃力や魔力の小ささを、集中攻撃による『数』でカバーしてきた。


 初級から中級の攻撃魔法を【矢じり】に込めて射程を伸ばし、前衛が敵を追い込んで、大量に攻撃を当てる……これによって、先の遠征ではB級クエスト区域のボスまでは倒すことができたのだ。



 しかし、魔法において『数』を多く当てるということが『足し算的』であるのに対して、一つレベルが上ということは『累乗るいじょう的』である。


 たとえば、レベル3の魔法に比較して、レベル4は約100倍、最高レベル5は1000倍の威力があると言われているのだ。


 そして、【女神の瞳】で見る限り、領民たちが覚える魔法はレベル3で限界なのだった。



 でも、魔王級のクエストをこなすには、上級のレベル4や5の魔法に匹敵するような超威力を持った『火力』が必要である。


 そこで、攻撃『数』ではなく、複数の魔法を掛け合わせて『一発』と成す【魔法融合】を戦略的に取り入れていこうと考えているのであった。



「うーん。魔法融合を発動させる武器には、いろいろと素材が必要になってくるよ」


「そうなのか?」


「ああ。でも一番重要なのは【融合石】さ。これがなくっちゃ話にならない」


「その融合石はどこで手に入るんだ?」


「さあね。そこまではアタシもわからないよ」


「そうか……」


 その後もう少しリヴと他の武器や素材、設備の話などをしてから、俺は鍛冶工房を出て行った。




 ◇




 融合石がどこで手に入るか?


 それを聞き、次の戦闘を選択するために、俺はこの極東の港街【スカハマ】にある『冒険者ギルド出先機関』へと向かった。


 スカハマは回船で行けば3日ほどかかるが、一人での移動だからその必要はない。


 黒王丸で空を飛んで行けば4、5時間で着く。



 ヒヒーン!!


 キーーーーーン!…………



 なんかグリコみたいだな。


 と少し思ったが、まあ、あの世界1位の魔法戦士は移動だってもっと全然速いのだろう。


 黒王丸の飛行魔法もさらに育成して、あんなふうに世界中を飛び回れたらマジでいいよな。


 あれならきっと、遠く離れた友だちにだっていつでも会いに行ける……。




 さて、冒険者ギルドへ着き、俺はソファで受付の順番を待っていた。


 ガサ、ガサガサ……


「ん?」


 その間、新聞をめくっていると、一つの『みだし』が目に入る。



≪勇者パーティ VS 第6魔王 ついに開戦!≫



「っ……いよいよか」


 一瞬。さすがに少し心配に思う気持ちが湧いたが、すぐに思い直した。


 アイツらにはもうじゅうぶんに魔王級を討伐できるだけの実力はある。


 今や『奇跡』と呼ばれる天才5人の集団なのだ。


 解雇された俺が、エラソーに心配なんてする必要はない……。



「えー、『エイガの領地』さま」


 そんなふうに考えていると受付に呼ばれて、ハッとする。


 そう。俺は、俺自身のことを考えなきゃ。


 クロスたちは魔王を倒すだろう。


 でも、俺だって倒す!


 融合魔法をうまく使えば、俺と領民たちだって魔王を倒せるようになるはずだ。




 そして、またクロスと()()()()対等な間柄に……


 そう踏ん張り、俺はソファを立った。





いつも応援いただきありがとうございます。みなさまのおかげで『育成スキル~』も開始から半年となりました。


感想やレビュー、メッセージ、ツイッターなどでいただくお言葉は本当にいつも嬉しく拝見しております。感想には早い段階からお返事を書けておらず心苦しいのですが、すべて大切に読ませていただいております。


次回、挿話をはさみ、章を跨ぐ予定です。

引き続きお楽しみいただければ幸いです。


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