第58話 地質調査
そういえば。
獲得した経験値を転送する育成スキル【レシーバー】をマークしていたのは以下の3人だった。
掘削者のアキラ、
霊能力者の吉岡将平、
生産者の五十嵐イサオさん、
である。
ということは……あの遠征の150人体勢で獲得していった経験値が、すべて彼らへも転送されていたことになるわけだ。
で、【地質調査】というのは、その獲得経験値で掘削者アキラが会得したスキルなのだった。
「アキラが言うには……」
と、無事に『磯村』で会えた吉岡将平が解説してくれる。
「あれは魔鉱石の鉱脈を調べるために覚えた能力らしいんです」
「鉱脈を?」
と聞き返しながら、俺はアキラの地質調査の作業を眺める。
アキラは手の平から細長い柱状の魔力光を発して、それを地面へ差し入れるように挿入していった。
ヴイーン……ヴぃヴぃヴぃ……
光の柱はまっすぐ土へ入っていく。
「ええ。これまではアイツ自身がわざわざ試しに掘り進めて鉱脈を探っていたでしょう?でも、あの光る棒を覚えてからはいちいち掘り進めなくても地層の成分を調べることができるようになったんです」
ようするに、地中に何が埋まってるのか、掘らずに知ることができるってことか。
「だからこれは他の場所もいろいろ調べてみたらいいんじゃないかと思いついたんですよ」
「なるほどな」
そして、今日の調査のねらいは「地下水を探す」というものらしい。
近くに川のない『磯村』は、産業こそ漁業が中心であるものの、生活用水にすらけっこう不便があるらしいのだ。
「お、おい将平、あったど。こ、ここ、この下に、み、水がある……」
そう言って、アキラは魔力光を閉じた。
どうやら地中に水の成分を発見したようだ。
さて。
作業が一段落ついたようなので、彼らからこれまで行った地質調査をさらに詳しく聞いてみる。
すると、すでにいくつかの新たな素材が見つかっているとのこと。
特筆すべきは【レア魔石】の発見である。
レア魔石とは、それ自体には魔力エネルギーが含まれているわけではないが、外から来る魔力エネルギーに対して一定の法則で反応を示す石である。
反応の法則ごとにいろいろな種類があって、今のところ領内の地層で確認されているのは以下の2種類。
レア魔石・青玉: 魔力を風エネルギーへ変換する
レア魔石・赤玉: 魔力を熱エネルギーへ変換する
もっとも、これら【レア魔石】はあの魔鉱石ほどはインパクトある資源ではない。
だが、こうしてあらかじめ領内で調達可能な素材をあきらかにできるのはスゲー貴重な能力だと思った。
当然だけど、領内で採れる素材、採れない素材がわかってくれば、冒険で獲得したアイテムで何を持ち帰るべきなのかもより絞れるのだから。
「これからも地質調査は続けた方がいいな。頼むぜ、アキラ」
「は、はは……はい!」
で、そのあと。
磯村に地下水が見つかった以上、もう井戸を掘ってしまった方がみんな喜ぶだろうと言い出し、アキラはシャベルを持ち地面を掘り始めた。
それで霊能力者の将平はお祓いを始めるが、それはすぐに終わったので、
「なあ、将平」
と、俺は横目でまた話しかける。
と言うのも、俺が将平に会いに来たそもそもの用事は別にあったからだ。
その用事とは、これからやろうとしている領内の『交通インフラ整備』についてである。
領民部隊をーーとりわけチヨを中心とした『木村』の輸送能力をクエストへ連れ出してしまっているから、そこらへんは交通インフラを整備することでカバーしなきゃいけない……という考えは最初からあった。
以前はその能力がなかったので手付かずだったけれど、今は領民部隊の物理的な力があるし、それにアイディアもある。
「具体的には何を?」
「うん。まずは、木材運搬用の水路を作ろうと思うんだ。『木村』→『中村』間のな」
「ほう」
そもそも、将平をリーダーにして作っていた堤防や田んぼの灌漑施設には、『木村』からの材木供給が不可欠なはずだった。
以前はチヨの輸送能力で車輪を使い運搬していた材木であったが、ここはクエストでの移動とは違っていつも往復することが確定している区間なのだ。
先に手間をかけて輸送経路を整備しておくほうが長期的に見れば効率的に決まっている。
「それができれば助かりますがね。でも、大変な仕事量になると思いますよ?今年は今年でまた堤防や灌漑の修繕があるんです。そこまで手が回るかどうか……」
「そのへんは心配ないよ。遠征組のうち50名を連れてきたから、水路は部隊の物理能力で作る。だから、お前さえ手伝ってくれればいいんだよ」
こうして、水路計画について将平と詰めていったのだが……
「おおおお!」
その時、井戸を掘っていた穴からアキラの叫び声が響いてきた。
「おい!どうしたアキラ!?」
と覗き込んでみると、穴の底からぶくぶく噴き出す水に、モクモクと湯気があがっている。
「うっひょっひょー!!」
こ、これはただの地下水じゃなくて……
「温泉!?」
飲み水にはならなかったが、このことがまた『磯村』の産業に変化をもたらすことにもなるのだった。





