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第32話 ドロップ・アイテム


 俺はAグループ25名を率いて【ル・モンドの森】の中へ入っていく。


「……灯りを」


 そう命じると3名の剣士が篝火かがりびいた。



 ボウッ!



 魔性を帯びた森は、昼も夜のように闇である。



 う、ううう……



 ほのおに照らされた領民たちのほほは恐怖に引きつっていた。


 その闇の向こうに、何かがひそんでいるように感じられるのだろう……。



 まあ、じっさいひそんでいるのだけれどね。


 モンスターが。



 でも、倒せるモンスターである。


 まずはコイツらにも、それをわかってもらうことが大切だ。



「ナオ。【サーチ】を使え」



 そこで俺は、支援系魔導士の少女にそう命じる。



 サーチは、いわば暗中での『索敵魔法』だ。


 暗がりに潜むモンスターへ向かってサーチ・ライトが伸びて行くというワケ。



「サーチ」


 ナオがそう唱えると、魔法の光がみにゅーんっと棒状に伸びて行った。


 で、その棒状の光は、木々の向こうでのっそりと歩くおどろおどろしいグリーンの塊を照らして止まる。


 モンスターだ。



「ひ、ひぃ……!!」


 誰かが怯える声をあげた。



「そういう声を出すな!恐怖が伝染うつる!!」


 俺はとっさに叱る。



 しーん……



 場は静まったが空気が落ちたので、俺はフフっ……と見せるように笑って、


「見ろ。あれは【グリーン・オーク】というんだ。数も4匹。大丈夫、ちゃんと練習した通りやれば倒せるさ」


 と言った。



 すると、「よぉし!やるぞい」と谷村で大根を作っていたジイさんが勇んで攻撃魔法を使おうとするので、


「待て。まだ距離が遠いだろう。【キラ】の射程じゃない。まずは弓で体力を削るんだ」


 と命ずる。



 ヒュンヒュン、ヒュンヒュン……




 射手は4名。


 しかし、彼らは最も最後に招集した射手で、戦闘力も1000に届くか届かないかという者たちである。


 まだ木々の合間を縫って矢を命中させるほどの能力を持ち合わせていない。


 ヒュン、ヒュン……ヒュン……


 それでも数を打ったので、こちらへ向かってくるグリーン・オークたちの身体にはそのうちの数本が刺さっていた。



 ガウウ……グルル!!



 ぐんぐん近寄ってくるグリーン・オーク。


 やがてサーチの光ではなく、篝火かがりびが直接その気色の悪い黄緑きみどり色を照らし、唾液のしたたる牙をきらめかせる距離へと達する。



「よし!今だ!」



 そう号令すると、10名の攻撃的魔法使いがいっせいに【キラ】と【キラド】を唱えた。



 ボ!ボボ!ボ!ボボ!ボ!ボ!……



 村人たちによる、初級キラ系魔法の乱れ射ち。


 それはまるで炎の壁のような火炎魔法となって、4匹のグリーン・オークたちへ襲いかかる。



 オオ!グオオオ……



 これが相当効いて、1匹は倒れ、ダメージを受けたのがあと3匹。



 ここまでくればあとは7名の前衛剣士の出番である。



 荷と篝火かがりびを射手に預け、各々剣を取り、槍をかかげ、残り3匹のモンスターへ躍りかかった。



 キーン! ドス……!



 モンスターたちの硬い皮膚を突き破る音。



 4匹のグリーン・オークは光の玉となって、魔の森の奥へと消えていった……。



「おお!」


「やったぞ!!」


「これなら倒せるな!!」


 勝利した領民たちは手を挙げて喜んだ。



「うん。なかなか良くやったぜ!」


 実際、ちょっと前までくわを振り、あみを引いていた村人たちとは思えない戦いぶりだった。



 シュルシュルシュル……キラキラ☆



 そして、グリーン・オークが消滅した場所にはアイテムがドロップされていた。


 ドロップ・アイテムは


【銀の矢×10】


 である。



「ふふ、幸先がいいな」


 そう言って、俺は銀の矢×10を拾った。




 やっぱりル・モンドの森はアイテム・ドロップ率が良い。



 モンスターがアイテムをドロップするのはヤツらが『人工物』を食べることがあるからだけど、どのような人工物を食べるかはそのモンスターが住んでいる魔性環境による。


 たとえば、このル・モンドの森は、モンスターに『金属で作られたアイテム』を食べたくさせるような魔性を帯びているのだ。



 だからモンスターは、住んでいる場所の魔性により『木造物』を食べたくなったり『回復薬』を食べたくなったりもする。


 でも、魔性にあたっても別に人工物を食べたくならない個体の方が多いし、モンスターに人工物を食べたくさせるような魔性ばかりでもない。


 世の中のモンスターすべてがアイテムをドロップするワケではないのは、このためである。



 それから、このAグループは3回の戦闘を行った。



 対戦相手は、


2匹の【レッド・ゴブリン】


1匹の【森のシャドー


6匹の【バッド・ビー】


 である。



 最後のバッド・ビー6匹というのに苦戦して魔力も尽きる者も出てきたので、Aグループはここまで。


 離脱魔法で森の外へと帰った。



 入手アイテムは、『銀の矢×10』と『金のブレス』『チタンの金具×5』であった。




 ◇




 続いて、Bグループである。


 Aグループ同様、この6分の1部隊には、それぞれ前衛7名、攻撃系魔法使い10名、支援系2名、回復系2名、射手4名が割り振られている。


 しかし、配分が同じだからと言って戦い方も同じでよいかと言えばそういうワケにもいかない。



 たとえばAグループは、支援系魔導士のナオが索敵魔法『サーチ』を使えた。


 ナオは『最初の選抜25名』であり、育成スキル【憑依】も駆使して育ててきたから戦闘力もすでに2156ある『支援系のエース』なのである。


 だからAグループは敵を早期発見し、弓、攻撃魔法、打撃……という距離ごとの攻撃を波状に仕かけることができた。



 けれども、Bグループの支援系2名は『サーチ』を使えない。


 そういう個々の差があることは仕方ないことだから、その代わりにBグループには『前衛剣士のエース』である磯村の未亡人エリコさんを配属させている。


 エリコさんは、最初こそ『お尻が重たそうで少しどんくさい感じ』に見えたが、【憑依】で槍を教えるとこれが見事ガッチリハマった。


 今や、まるで物干し竿を扱うようにクルクルとやりを扱う。


 その勇しい姿はとても34歳の女性には見えない。


 戦闘力も、現状チヨに次いで2位の2560あった。



 よってBグループの戦い方は、篝火かがりびに近寄って来た敵に対し、エリコさんを先頭とした前衛7名が立ち向かい、弓、魔法、支援魔法、回復魔法が後ろから援護するというものになる。


 彼らは【バター・ウルフ6匹】【グリーン・オーク3匹】【荒ぶる岩石2匹】と3戦したが、回復薬と回復系の魔力が尽きたところで引き返すように指導した。


 獲得アイテムは、『銅のランプ』『鉄のくぎ×50』である。




 さて。


 これでAグループとBグループで7戦した。


 レベルがあがった者がいるだろうか?


 そう思いEグループで前衛剣士をしている、漁師の少年を見た。


 彼は150人の中で一番戦闘力が低く、たしか781だったはずだが……


 今は817まで伸びている。


「よし!」


 とガッツポーズしたのは、これで俺の育成スキル【祝福の奏】の『影響域』が成長していることを確かめられたからである。


 つまり、森の中の戦闘による2倍の獲得経験値が、外で待っていたEグループの彼まで及んでいたのが確かめられたのである。


 最近、魔導書『育成の理論と実際』なんかで俺自身の育成スキルを鍛えていたのは、この影響域を広げる目的もあった。




 そもそも……勇者パーティにいたころは、クエスト区域でもパーティ6名がバラバラに行動することはまれだったのでそこまで『影響域』を広げる必要性は生じなかった。


 だからその点、特に修行してこなかったのだけれど、今は違う。


 こうして150名が分かれて戦っていく場合、『影響域』を広げることはとてつもなく意味あることなのだ。


 2倍という以前に、各々すべての戦闘での獲得経験値を150名全体へ影響させ合っていけるからである。


 あまり才能にあふれているわけではない俺たちにとって、獲得経験値をみんなでシェアしていくことは必須条件とも言えるのだ。



「よし、じゃあ今度はCグループ行こうぜ!」



 俺自身の成長も確かめられたところで、今度はCグループを森へつれていった。



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