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第27話 発見


 翌日。


 朝早くに目が覚めて居間へ出ると、三つ編みの後ろ姿が目にとまってビクっと足を止めた。


 そうだ。


 ティアナのヤツ、モリエを迎えに来ていたんだっけ。


 他はまだ誰も起きて来ていない。


「……」


 彼女、俺に気づいていない様子なのでこのまま寝室へ引き返そうか……と迷っていると、


「ぁ……」


 と、気配に気づかれてしまう。


 チェアに姿勢良く座っていたティアナは上身体を軽くねじってこちらへ向き直り、


「おはよ」


 と、かすかに微笑ほほえむ。


「……っす」


 俺はそう自然に応えて、向かい側のソファに座った。


「うーん。よっこいしょ……っと」


 が、すぐに立って、台所へお茶を淹れに行く俺。


 別に何がどうというわけではないのだけれど、アイツと二人っきりというのが妙にはばかられて、お茶をれている間に誰か起きてくることを期待したのである。



 カチャカチャカチャ……



 だが、戻ってきても誰も起きて来ない。


 俺はため息をついてトレーをテーブルへ置く。


「ミルク、このくらいでよかったっけ?」


「ええ」


 と言って紅茶をティアナへ差し出す。


 カチャ……


「っ……」


 女の唇がカップへ付くと赤いメガネがふわっと曇った。


 それでハンカチを取り出し少しうつむきつつメガネを外すと、その柄に引きつられて黄金ブロンドびんが白いほほへそよぎ張り付く。


 俺は思わずそのほほの髪を耳へかけて直してやろうと指が出かけたけれど、ハッとして手を引いた。


「今回のことはごめんなさい」


 ティアナはティーカップを置いて唐突に言う。


「あ?……ああ。いいや、仕方ないって」


 モリエのことを言っているのだ。


 俺は迷惑とも思っていなかったので、たいした感慨もなくそう答える。



「……冒険王を」


「は?」


「冒険王の記事を読んだわ」


「そっか」


「あなた、やっぱり冒険がヤメられないのね」


「……ごめん。お前が考えていた【退職金】とは違うよな」


「んーん。これも仕方ないのね。きっと」


 とだけ言って、またカップへ口をつける。


「クロスも……」


 俺はこのとき、『クロスもアクアの記事を読んだのか』と尋ねようとしたのだけれど、そんなことを気にしているのがバレるのはとても恥ずかしいと気づいて止めた。


「?」


 でも、ティアナが続きを促すように首をかしげるので、咄嗟とっさに内容を変えて続ける。


「……いや、クロスもお前も大変だよなと思ってさ」


「大変って?」


「新聞、読んだぜ」


「……私、今は新聞を読まないことにしているの」


「そうか……」




 ガヤガヤ……


 その後。みんなが起き出して、朝ご飯を食べると、もう船が来るというので送っていくことになった。


 グリコも今日帰るらしいのだけれど船には乗らないので、彼女も見送る側だ。


 女の子だと知ってショックだったようだけど、モリエのことを可愛いと思うのはヤメられないらしく、あいかわらずぎゅ♡っと抱きつきなどしている。


 ティアナがそんなグリコの様子にマジでビビっているようだったのが、ちょっと面白かった。



 わいわい♪わいわい♪……



 あの遠雲とくもの荒れた港も、この面々で行くと大変賑やかな様子になる。


 ふと、いつまでも船が来なければイイのにと思いもしたけれど、それはかっちり定刻に来た。


「じゃあね……」


「さよなら」


 モリエとティアナは別れを告げて船へ向かう。



 キイ……キイ……



 しかし、ティアナの足が桟橋にかかる時。


「ティアナ!」


 俺はたまらなくなって叫んだ。


「!……」


 振り向きざまの女の青い瞳は、南の海のようにキラキラ輝く。


「……エイガ!」


「ティアナ。クロスに伝えてくれ。俺は俺のやり方でザハルベルトへ行くって!待ってろって!」


「な……」


 そう言うと、なぜか横顔はうつむき、彼岸花のようなまつ毛が悲しげに降りる。


「ど、どうした?」


「……結局あなたが一番気にしているのって、クロスのことなのね」


 俺が何か言い返す間もなく、ティアナは再び背中を向けて行ってしまった。




 ◇




「なんか寂しくなっちゃったっスねー」


 と、ガルシアがぽつりと言う。


 あれからグリコも飛び立って、客の去ったやかたは、確かにとても静かだった。


「そう言うなって。これからやかたも賑やかになっていくさ」


「だといいっスねー。ところで旦那。奥賀おうがの船っスけど、いよいよ手配ができたらしいっス。来週には50人乗りの船3隻を遠雲とくもにリースしてくれるとのことっスよ」


「マジか!これでいよいよ海外遠征だな!!」


「はいっス!」


 そう俺とガルシアが肩を叩きあっているとき。


「エイガ様」


 五十嵐さんの声がして振り返ると、ちょうど俺の唇に彼女の鼻先が触れてしまってマジびびる。


「な、なに?」


「……お客様です」


「そうか。領地の人?」


「ええ」


 彼女はそう答えててのひらを上へ向けるので、そちらを見る。


 すると、ドアのところにすすで顔を真っ黒にしたアキラが背中を丸めて立っていた。


「りょ……りょうしゅ!……と、とと……ったどぉぉぉ!!」


 そう叫んで岩石を両手に掲げる掘削者マインナー


 その凸凹でこぼことした岩石には、魔性を帯びたクリスタルが斜めに埋まっていた。



 そう。


 俺の領地から魔鉱石しげんが出たのである!


お読みくださりありがとうございます!

次回もお楽しみに!


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