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第148話 魔王城レベル1


 アカバンの港へ着くと、すでに魔王城があらわれていた。


 要塞化された湾口。


 港の建物は黒鉄の城壁に呑み込まれている。


「みんな、聞け!」


 俺は振り返り、甲板の150人部隊を見渡した。


「魔王級の出現には二パターンある。一つはデストラーデのように軍勢を率いてくるパターン。もう一つは現世に魔王城を出現させるパターンだ」


「そっか、じゃああのお城を壊しちゃえばいいんだね!」


 チヨがふんどしのお尻をぷりっとさせて立ち上がる。


「それはそうなんだけどさ……でもあの城はまだレベル1。あれを滅ぼしても第二、第三の城が出現してくるんだ」


「ええ……!?」


 ざわめく甲板。


「第四魔王ナルシスはレベル10の城に登場する。これを叩いて初めてクエスト成功だ」


「それでは長期戦になりますかいの?」


 攻撃的魔法使いのじいさんが腰を叩いて質問する。


「うん。それにレベルによって城を守るモンスターはどんどん強くなっていくぞ」


「ひえええ……!」


 仕方ない。


 だからこその魔王級クエスト。


 パーティの耐久力も問われる難関ってワケだ。


「まあ……普通なら、だけどな」


「え?」


 俺は首をクイと向けて、それに目線をやった。


 そう。


 主砲ペンタグラムである。


 デストラーデ戦では内陸へ逃げられてしまったからあまり活躍しなかったけど、今回はわざわざ湾岸の要塞に立てこもってくれているわけだから、格好の的である。


「装填準備だ!」


「「「やー!!!」」」


 命じると、艦上の魔法使いたちが陣形に着く。


 攻撃的魔法使い25名。


 一人ずつの才能は平凡なものでそれぞれ中級魔法までしか扱えない。


「キラドンでいい。寒いからね」


 そう言うと、魔法使いたちが次々と炎魔法を生成していった。


 主砲の下に設置されている円形の石板。


 こいつには融合石が嵌めこまれていていて、ここで魔法が5つ融合される。


 そして……その石板がまた5つ。


 5つの魔法が融合されたパワーが、さらにまた5つ融合されるのだ。


「中級魔法ドキラドン×5の5乗……」


 風のスカートをなびかせた杏子が石板に表示される威力を確認する。


 改めて聞くとおそろしい言葉だが、相手は魔王。


 容赦はいらない。


 やがて艦上に展開された魔法陣が低く唸りを上げた。


 炎属性の魔力が融合石を通じて集束し、円形の石板の中心に凝縮されていくおそろしい音だ。


「照準、固定!」


「魔力安定、問題なし!」


 よし。


 俺は魔王城を見据えたまま命じた。


「薙ぎ払えー!!!!」


 主砲ペンタグラムが白光を放つ。


 周波数の高い音。


 空気が切り裂かれ、高密度の魔力エネルギーが一筋まっすぐ砦へ向かっていく。


 ……ちゅどーん!!!!!


 大地の存立を脅かすがごとき轟音。


 直後、衝撃波が港全体を揺らし、海面が大きく波打った。


「やったか……?」


 土煙が晴れると、瓦礫と化した廃墟がかいまみえる。


「やったー!」


「ひゃっほー!!」


 部隊のみんなが歓喜の声をあげた。


 が、その時。


 ――ゴゴゴゴ……。


 地鳴りが響く。


 なんと。


 散乱した瓦礫の下から、妖しげな建造物がせり上がってくるではないか!?


 城だ。


「そんな……」


「……大命中だと思ったのに」


「いや。確かにやった」


 俺は艦上の風を受けながら続ける。


「あれが魔王城レベル2だ」


「なるほど……」


 理解の早いナオがうなづく。


「それではもう一発?」


「ああ。なんど復活してこようが、これを繰り返していけばいい」


 自然と笑みがこぼれる。


 クックック……


 本来最上難易度であるはずの魔王級クエストが、これほど簡単に済むとはな。


 難攻不落の地下迷宮ダンジョンで裏道を発見したかのような愉悦だ。


「……ってなワケで、主砲、再装填!」


「「「やー!!!」」」


 魔法使いたちが再び陣形に入る。


 が、その瞬間。


 視界の端で、魔王城の側面が光った。


 そんな些細な情報が、俺の背筋へ悪寒を覚えさす。


 おかしい? 何かヤバい?


 ドンッ――!


 これは……砲声、か!?


 俺は咄嗟に【古王の勾玉】を握り、遠く離れた遠雲の土地と領民たち2500人ぶんの活力を少しずつ集め始めた。


 チュイイイイイーーーン……


 領地、領民の力が俺の身体ひとつに集約される。


「ッ……!」


 目を開けると、魔王城から黒い砲弾が飛んでくるのが見えた。


 反射的に跳躍する。


 古王の勾玉によって国家全体の力を身一つに集約しているこの状態では、脳が高速回転(ドライブ)していて、すべてがスローモーションに捉えられる。


 向かってくる砲弾の軌道と、身体の跳躍の軌道の結節点が高速で演算され、そこへ向かって身をひるがえしつつ銅のつるぎ(+121)を鞘から抜く。


 ピンポイント……!


 そのまま剣を振り抜いた。


「らぁっ!」


 砲弾と銅のつるぎ(+121)が空中で衝突!


 火花を放ちつつ、弾は起動を変えた。


 どどーん……!


 直後に上空で凄まじい爆発。


「伏せろ!」


 直撃は避けたが、衝撃波が艦を揺らす。


 ふう、危ないところだった……


 通常状態だったら到底反応できなかったぞ。


「領主さまっ、また来るよ!!」


 チヨの声。


 すぐに魔王城の一画がキラっと瞬いて、大砲の音が空に響く。


 ドンッ……!


 俺は再び跳躍し、銅のつるぎで砲弾を弾き返す。


 被弾はゼロだが、反撃しないと埒があかない。


「主砲、装填はまだか……!?」


「ダメです。揺れが大きすぎて魔法融合できません!」


 ま、マジかぁ……(汗)


「ひ……退け! 一時撤退だ!!」


 俺は敵の砲弾をひとつずつ剣で弾き返しながらそう命じた。



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