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第146話 アップグレード


 クロスが行方不明……?


「……うッ!」


 ふいに、治ったはずの腹の傷が痛む。


 たしかにあの時のアイツの様子はフツーじゃなかった。


 もちろん勇者パーティ時代に俺がティアナと付き合っていたのを恥ずかしがって話していなかったのが悪かったんだ。


 隠し事のようになってしまって、それを責められたんなら仕方がない。


 でもだからといってパーティを放ってどこかへ消えてしまうだなんて、責任感の強いクロスの性格上考えられなかった。


 もしかして……


 何者かに操られていたのか?


 いや、クロスは並の男ではない。


 この俺が育成した完全なる勇者なのだ。


 そんな勇者クロスを、まったくその意思に反して人形のように操るなんてできるだろうか?


 できやしない。


 どんな賢者の魔法でも、魔王の呪いでも、そんなことは到底無理。


 じゃあ一連の行動がクロス一人の心で行われたのかといえば、それもやはり考えづらい。


 ……こうなると考えられるのはひとつ。


 誘導者の存在。


 そう。


 もともとクロスが持っていた意思や心の向きを、巧みにいざなっているヤツがいるってことになる。


 例えば、川の圧倒的パワーを止めることはできないが、土木工事によってその流れる向きを変えることは可能だ。


 同じように勇者の強烈な意志を無にして操ることはできなくても、心の向く方向を誘導することは理論上可能である。


 誘導は育成でもモチベーションの喚起とかを狙ってすることはあるが、逆に悪意を持った誘導もありうるワケだ。


 これには強烈な魔法や呪いも必要ない。


 言葉の力によって、そいつの都合のよいようにクロスの心を誘導するのだ。


 そんなヤツがいる。


 ……そう思い至ると猛烈に腹が立ってきた。


 もちろんこれは推測に過ぎないが、逆算すればそうとしか考えられないという意味で確信できることだった。


 問題はその誘導を施しているヤツが誰か、見当もつかないってところだ。


 本当ならば今すぐにでもクロスを探しに行きたい。


 でも、アイツが今どこで何をしているのか……それもまったく手がかりがなく、見当もつかなかった。



 ◇



「そりゃむちゃくちゃッスよ!」


 やかたへ帰るとガルシアがぷんすか怒り始めた。


「魔王級クエストの連戦なんて聞いたことないッス!」


「しょうがないだろ。魔王級クエストに当たれるパーティが不足してるんだっていうんだから」


「それ……本当ッスか?」


 ガルシアはふいにジト目になる。


「どういう意味だ?」


「旦那、あの大賢者とかいうのにいいようにコキ使われているだけじゃないッスか?」


「なっ。お前、あんないい人をそんなふうに疑って……バチが当たるぞ?」


「でも……」


「とにかく。クロスたちが活動休止である以上、今世界の平和は俺たちにかかっているんだ。やるしかねーだろ」


 翌日。


 ザハルベルトからクエストの詳細が届いた。


「第四魔王、黒龍ナルシスか……」


 黒龍ナルシスは四天王のトップと言われている強者だ。


 もうちょっと弱めのヤツだったらありがたかったとは思ったけど、そもそも魔王級に弱めのヤツなんざいないよな。


 腹をくくるしかない。


 幸い出現予言地域はアラビラ地方のアカバン湾だ。


 艦による艦砲射撃が可能だろう。


 さらに俺にとっての朗報がもうひとつ。


 ……カンカンカン!


 鍛冶工房から鉄を叩く音が聞こえてきたのである。


「リヴ!」


「おや、エイガ」


 扉を開くと、炉の前で女鍛冶がひらりと振り返った。


「おめでとう! あんたとうとう魔王を倒したんだってねえ!」


「あ、ああ……」


 待ちわびていたリヴの祝福を聞けたのは嬉しかったけれど、もう次の魔王戦が決まってしまった今となってはちょっと複雑だ。


「それはそうと、伊達に引きこもっていたワケじゃねえんだろ?」


「うふふ……」


 リヴは腰に手を当ていたずらっぽく微笑むと、俺の腕にひしっと抱き着き、そのまま走った。


「お、おい!」


 俺の腕は、彼女の腕とタンクトップの乳房の圧にはさまれて引きずられるように二階へとあがる。


「こちらをご覧!!」


「こ、これは……」


 部屋へ入ると、リヴは机に広がる大きな図面へ手招きした。


「これなあに?」


「見りゃわかるだろ? 図面さ」


 それはわかるんだけど……(汗)


「何の図面かがわからないんだよ」


「これは艦のグレードアップのための図面だよ。こいつが完成すれば艦の弱点が一気になくなる。つまり最強の武器になるってワケさ」


 タンクトップの胸をぷりん♡っと張って威張るリヴだが、俺にはいまいちピンと来なかった。


「艦は今だって十分強いじゃん。弱点はむしろ艦が使えない状況の時にあると思うんだけど」


「うふふ……まあ聞きなよ」


 そう言って図面に記された艦の新システムをひとつずつ説明してくれた。


 身を乗り出し、図面の上に胸元のネックレスが揺れる。


「……たしかに、こりゃスゴイ」


「えへへ♪ だろう?」


「このグレードアップって、時間的にはどれくらいで完成しそうかな?」


「弟子たちも成長しているし、あたしも最近すごく調子がイイんだ。三か月もあれば完成してみせるよ!」


 この改良を三か月で……


 さすが【覚醒】しただけある。


 でも、魔王戦は年明けすぐ。


 半月後には黒龍ナルシス討伐へ出発しなければならない。


 俺はそんな事情をリヴに説明する。


「そ、そうかい。そんなことが……」


「本来なら三か月もあれば余裕なはずなんだけどなぁ。とりあえず次の戦いに間に合う範囲でアップグレードしてほしい」


「わかったよ。取り急ぎ導入したいシステムはどれだい?」


 俺は詳細に書かれた黒龍ナルシスの出現ポイントなどを考慮に入れながらリヴと導入システムを決めていった。


次回もお楽しみに!

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