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第135話 特異点


 俺が宝箱を開けると、そこには二つの宝が納められていた。


 ひとつはお盆みたいな平べったい円形のアイテム。


 もうひとつは“9”の形をした石のアイテムだ。


「おそらく円形の方が『八百ヤーの鏡』で、石の方が『古王の勾玉まがたま』ッスね」


「石の方はわかるけど、こっちは鏡なのか? 全然映らないけど」


 俺は円形のアイテムを掲げながらガルシアに尋ねる。


「劣化しているからっスよ。こういうのは磨けばピカピカになるんス。きっと高値で売れるッスよー!」


 ガルシアが上機嫌にそう言った時、俺の服のすそがツイツイと引っ張られるのを感じる。


 振り返ると五十嵐さんが首を横に振り『それを売るなんてとんでもない』というような目をしていた。


「こりゃ、どうもすいませんッス。てへへ」


「でもまあ、鏡を研磨しなきゃいけないのは確かだ。帰ったらリヴに頼んでみようぜ」


「エイガさま。こちらを……」


 続いて五十嵐さんが何かに気付いたように宝箱の内側をさす。


 見てみると、そこには扉のところにあったような文字がズラリと並んでいた。


 指摘されなければ模様だと思って見過ごしてしまったかもしれん。


「何が書いてあるんだろ?」


「アイテムの歴史とかじゃないッスか?」


「……また解読してもらいましょう」


 そう言って女秘書は宝箱の文字を写し始めた。


 そんな時である。


≪ピピー、ガガ……王ヨ。ボクハドウスレバ?≫


 再び魔造人形が脳へ直接言葉を送ってきたのだ。


 そっか、宝が宝物庫からなくなればコイツの役割はなくなっちまうもんな。


「うーん。何百年か何千年か知らないけどさ。ずーっと宝を守って来たんだよな」


 俺はヤツのメタリックなボディをなでながら続ける。


「お前はよくやった。もう休むがいいさ」


≪王……ガー、ガー≫


「エイガさま。写しが終わりました」


「……そうか。じゃあ地上へ帰ろう」


 そう言うとみんなぞろぞろと宝物庫を退出する。


 後に残るのはからっぽの宝箱と、役目を終えた魔造人形がぽつんとひとつ……


≪ピーピー、ガー……ガガガ……≫


「旦那ぁ。もしかしてアイツ、さみしいんじゃないんスか?」


「バカ言うな。なわけねーだろ」


 さみしいっていうのは人間の感情だ。


 魔法システムで造られた人形に、そんな感情があるはずがない。


「わかってないッスねー。こういうのは時をてあるはずのない感情が芽生えるってのが相場ッスよ。ねえ?」


≪……ピピー、ガガ……カ、勘違イシナイデヨネ! さびシクナンカナインダカラ!≫


「ほら、さびしくないって言ってるじゃねーか」


「エイガさま……」


 何故か女秘書がジト目で俺を見る。


「でもよー、領主さま。アイツめちゃくちゃ強かったですぜ」


「そうよねー。スゴく硬かったもん」


「一緒に戦ってくれたら頼もしいですよ」


 そこで戦闘部隊の連中からそんな声があがった。


 確かに、それはそうかもしれんけど……


「お前、上までついて来れるの?」


≪王ノ命トアラバ……ピピー、ガガ≫


 というわけで魔造人形が仲間になった。



 ◇



「よし、じゃあお前の名前は『ぴゅう太』だ!」


≪認識デキマセンデシタ……ピピー、ガガ≫


 地上へ帰ると魔造人形に名前を付けてやろうという話になったのだが……


「ほら、やっぱり名前なんて概念を理解するのは無理なんだよ」


「……名前そのものが問題なんじゃねーッスか?? 高度な魔法システムを搭載してんスから、もっとスタイリッシュなネーミングが求められているんスよ」


 ガルシアがまたワケのわかんねーことを言っていると、そこへ女鍛冶リヴがやってきた。


「やあ、あいかわらず楽しそうだねえ」


「そう見えるか?」


「うふふ、それで用ってなんだい?」


 そこで俺は『八百ヤーの鏡』の研磨をリヴに頼んだ。


「うーん、こりゃまた難しそうだねえ」


「無理そうか?」


「うん、研磨だけならすぐだけどね。おそらく、この鏡が曇っているのはヒヒイロカネのコーティングが劣化しているからなのさ」


 リヴは炎のような髪をガシガシとかいてタンクトップの乳房を無造作にゆらす。


「このアイテムを古代の状態まで復帰させるには、ちょっと時間がかかりそうだね」


「そうか……」


 リヴにはヒヒイロカネ装備の開発も任せているからな。


 一方で八百ヤーの鏡の「真実を映す」ってのは抽象的で、まだ使い道もよくわからない。


 今日明日で必要となるようなモノでもなさそうだ。


「とりあえず鏡の方は急ぎじゃないからゆっくりでイイよ。魔王戦も近いからな。とりあえず装備の方を優先して進めてくれ」


「よしきた!」


 こうして八百ヤーの鏡はリヴへ託したのだった。


「よし、お前の名前は『ぴゅう太Jr.』ッス」


≪……認識デキマセンデシタ≫


 一方で、ガルシアたちはまだ魔造人形へ名前をつけようとしている。


 りねえなあ。


「……」


 そこへ鋭い目付きの女秘書が膝をそろえてしゃがみこみ、タイトスカートの尻をミチっとさせながらつぶやき始めた。


「……ぴー、ぴー……ピー助?」


≪ピー♡……ID『ピー助』デ登録シマシタ……ピー、ガガ♡♡≫


 特異点シンギュラリティはあった。


 なんかデジャヴだけどな。


お読みくださり感謝です。

次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
エロボット…
[良い点] 良かったな宝富ーを敵に回さず済んだ
[一言] オケラかよ
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