第130話 魔動トロッコ
ザハルベルトの予言によれば第7魔王デストラーデがあらわれるのは三か月後。
俺たちはギルド本部からその討伐クエストを任されたのだ。
極東内の情勢は気になるものの、今はとにかく領地の強化を続行しなけりゃならん。
S級に上がったばかりの俺たちが魔王級クエストを成功させるには、もう何段階も実力アップが必要なはずだから。
「これが魔動トロッコの機関部か……」
さて、俺は領地の西側の採掘現場でそうつぶやいた。
地上には巨大な球体の魔法マシンが設置されており、そこから伸びるチューブが坑道の方へ繋がっている。
ザハルベルトへ行っている間にスゲーもんが完成したもんだな。
「でも、掘削者を乗せて走らせるだけでこんなに大がかりなシステムが必要なのか?」
「やれやれ、わかってないねえ」
リヴがため息をついて無自覚な乳をぷりんッとゆらす。
「鉱山に魔法動力が必要なのは人を運ぶってだけじゃない。もっと重要な役割があるのさ」
「重要な役割?」
「ああ。それは排土……つまり、掘り進んだ土や岩を地上へ運搬するって役割さ」
なるほど。
例えばここに一つ穴を掘るとしよう。
最初のうちは掘った土も簡単に外へ運ぶことができるだろう。
しかし、その穴が奥深くなっていくにつれて、地上は遠くなっていく。
鉱物を求めて奥へ進めば進むほど、掘った土を外へ運ぶ労力は途方もないものとなるはずだ。
そう。
この掘った土を地上へ運搬するという仕事を『魔力』によって行えば、掘削者たちは鉱物の掘削に集中することができるというワケ。
「じゃあ人間はやっぱり歩いて行かなきゃいけないのか?」
「安心しなよ。ちゃんと人が乗れる車両も作ってあるさ」
リヴはそう言って起動部らしき小さな車体へ親指をさした。
それは車輪がついており、よく見ると線路に乗っている。
女鍛冶はこの起動部の方へトロッコの乗車部を引いて来ると、ジーンズの尻をぷりっと突き出しつつ連結作業を行っていく。
ガタガタ……ガチン!
青空の下でぴっちりとしたデニムからかいま見える白いパンティには日々の活力を象徴するかのごとくほつれはなく、Z型の縫い目が規律正しく尻にぴったり張り付き、健康的な尾てい骨のへこみの上には小さなブルーのリボンさえゆれていた。
「これは前に試作してくれたミニ鉄道と同じ作りか?」
「いいや。あれは地上用で造りは別さ。地中で魔力放出が起こるとエネルギーが溜まっちまうからね。ほら、乗りな」
リヴが起動部のレバーを引くと、トロッコはゆっくりと走り出した。
キュイイイン☆……ガッタン、ゴットン……タン、タン、タタタタ……
トロッコが坑道へ入っていく。
魔動音は響くが、たしかに魔力放出はないようだ。
どういう仕組みだ?
「地上の球体マシンがあっただろ? 魔鉱石による魔力はあちらで起こして、チューブを伝ってエネルギーを送っているのさ」
よく見ると、トロッコの起動部には骨だけの傘のような部品が付いていて、常にチューブと接触している。
そこから魔力エネルギーを受け取り、動力としているってワケか。
「へー、スゲーよ、リヴ! 天才じゃん」
「な、なにさ急に……(照)」
俺が女友達のタンクトップの肩をガシっと組んで褒めると、彼女は少しだけ照れたようにするが、すぐに俺の肩を組み返してくれる。
そして顔を見合わせて「ニシシシ」っとお互い笑い合うのだった。
さて、そうこうしているとトロッコは目的地に到着する。
地下深くの採掘現場である。
ここは魔鉱石が眠るポイントらしく、船のドックのように広い空間の坑道が一本通されており、そこから枝が生えるように掘削者たちが掘り進めているのであった。
空間は高さもあり、壁沿いに沿って階段を作り、二階、三階の坑道もできている。
カンカンカン!
カーン、カーン……!
あちこちで響くつるはしの音。
これぞ俺の領地の地盤……強さの基盤だ。
マジ恵まれてるよな。
ただし、今日の用事はこの掘削現場ではない。
「これは領主様! よくぞいらっしゃいました!」
掘削者の一人に声をかけられると、今度は彼が俺を案内してくれた。
彼は大きな坑道をしばらく行くと、その場には何百とあるような何の変哲もない枝の坑道の一つを指さした。
「ここか? 地下迷宮があったってのは」
そう尋ねると、掘削者がうなずく。
さらに進むと、やがて注連縄飾りと簡易的な祭壇が見えてきて、その御前に烏帽子をかぶった吉岡将平の姿を認める。
「お疲れ将平。だいじょうぶそうか?」
「ああ。今のところは抑え込めています」
そう言う将平の後ろには、サークル状の下穴がひとつ。
見るからにまがまがしい空気を醸している。
「ちょっと見るぜ」
俺はライトの魔法を使って穴を照らした。
うーん、かなり深そうだ。
「誰がここを降りたんだ?」
「お……おでだ」
そこにアキラが現れる。
アキラが言うには、そもそも坑道を掘っていると空洞にぶち当たることなんて普通にあるらしい。
そういう場合は最も技術のあるアキラがキャリーして調査を行うんだってさ。
この穴もいつも見て来た空洞と同じようなものと思っていたらしいんだが……
「あ、あんなのはこれまで見だごとねがった」
そう。
アキラがこの穴をロープで下ると、そこにはすでに誰かの手によって掘られた坑道があったと言うのだ。
「坑道が?」
それだけではない。
アキラが鉱物状況などを調べつつ進んでいくと、坑道は整然とした石畳の道へとつながり、縦横無尽の迷宮となっていたのがわかったのだ。
いくつか扉も目撃したらしい。
「それから?」
と尋ねるが、アキラは首を横に振った。
「す、進めながった。強え魔物が出たんど」
「そうか……」
それで俺を呼んだってわけか。
しかし、よく生きて帰って来てくれたなあ。
よかった。
「おいアキラ。領主さまにあの石を見せてみたらどうだ?」
「お、おお……そだっだ」
将平に言われて何かを思い出したアキラは懐から一つの石を取り出した。
ルルルルル……☆
原石の状態だが、ただならぬ色合いをしている。
赤みがかった黄金って言えばいいのかな。
見たことも聞いたこともねーや。
「ちょ、ちょっと見せておくれ!」
そこに、背後にいたリヴが俺の二の腕にぷるんっとタンクトップの乳房をぶつけつつ割って入る。
「どうしたんだよ、リヴ」
「まさかコレは……」
リヴが言いよどんでいると、祭壇の神官が目を閉じて告げた。
「そうだ。これぞヒヒイロカネだ」
更新再開してまいります!





