第128話 右京と左京
ザハルベルトを去った俺は、ガルシア、五十嵐さん、そして150人部隊と共に艦に乗って極東の海へと帰ってきた。
ゴゴゴゴゴゴ……
自前の艦なのでこのまま領地の新港へ戻ればいいのだけれど、ただザハルベルトでの成果を大王にご報告申し上げなければならない。
でも、それは何も全員で行くこともなかった。
最低限知行されている領主の俺だけが行けばいい。
ので、みんなには先に艦で遠雲へ帰ってもらい、俺だけで艦上から黒王丸で飛び立ちひとり帝都へと向かった。
ヒヒーン……
大内裏に着くと馬を降り、蔵人の事務次官の案内で大王のおわす清涼殿へと向かっていたが、そんな宮中の渡り廊下で大臣に声をかけられる。
「おお。これはエイガ殿」
「あ、大臣。お世話になってます」
「よいよい。そんなことより聞いたぞ。もう魔王級クエストを任されるとはさすが。麻呂の見込んだ男よの」
え、どうしてそれを?
これから報告申し上げようとしていた内容なのに。
そう思った時だ。
「ふん……誰のおかげでS級に昇格できたと思っているのだ」
と、ふいに若い男の声が聞こえる。
すると、いつの間にか大臣の後ろに黒装束の青年が二人ばかり控えているではないか。
「い、いつの間に!?」
それまでまったく気配を感じなかった……
「ふふ、キサマなどお嬢様がおられなければ単なる木偶の坊よ」
「そう。言わばコマに過ぎぬのだ。勘違いするでないぞ!」
そう吐き捨てるように言う二人の青年は分身でもしたかのようにまったく同じ顔をしている。
双子だろうか。
言っている内容はちょっと意味わかんないけど、どちらも俺のことをよく思っていないことだけはわかった。
「よさないか! 右京、左京。エイガ殿は麻呂の友人でもある。侮辱は許さん」
「「はッ……」」
大臣が一括するとふたりは膝をついて控えた。
「エイガ殿、かたじけない」
「ぁ……いえ」
俺はちょっと呑まれ気味に相槌だけは打つ。
「いずれにせよ。この極東全体のためにもエイガ殿には必ず魔王を倒してもらわねば困る」
「そ、それはもう」
「ふふふ。そのためには帝国も貴殿への支援を惜しまぬでな。ワハハハハ……」
そう高笑いして大臣は渡り廊下を去っていった。
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